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86/108

86・王子少女は逃げ出したい!!

すっかり夜になり、星が見え始めた時間

お城に戻って来た私たちは、残っていた隕石焼きを食べながら

テラスから街を見下ろしている

お祭りの締めに、ダンスを踊っている人たちが見えた

彼らは、楽団の演奏に合わせて手拍子を打ち、踊り続けている

その服装も華やかで、楽し気な雰囲気が伝わってくる

願わくば、来年も笑顔でこの光景を迎えられますように


「駆け抜けるような数か月だったわ」

思い出にふけるように、ミソラさんが、ぽつりぽつりと語りだす


「ありえない、奇跡だったと思う

 …あの時、あなたに出会えたことが」

私を見て、おだやかに笑う

彼女が月明かりに照らされ、幻想的な存在のように見える

長く豊かな彼女の金の髪は、月の光を浴びて輝きを増していた


「見ず知らずの誰かを心配し、見ず知らずの誰かを助けようとする

 そんな、誰もがそうありたいと心で思う事を、実際にできる人」

そう話しかける彼女の瞳は真剣でありつつ、星のような輝きを放っていて…

美人さんだなぁ…とつい考えてしまう


「カナタ王子様は力があったわ、だから余裕があった…人助けをする余裕もあった」

「……」

「けれど、あなたは違う」

ミソラさんが近づき、私の顔をじっと見つめる


「怖くても、何も力が無くても…

 それでも、誰かの手を借りながら、みんなを助け続けた」

「でもそれは、王子様の影武者として、できることをやっただけで…」

「もっと楽にできる方法はあったと思うわよ

 …けどあなたは、それよりも皆が幸せになれるように頑張った」

「……」

「あの時は、父さんと仲直りまでできるなんて、思ってなかったわ」

ただ見過ごせなかった、それだけなんだけども…


「それは、力を持ってるから優しくできる人よりも、もしかしたらずっと…」

ミソラさんは私を過大評価してるように思える

…なんだかとってもむず痒い気持ちになる


「『みんなを幸せに導ける』のが理想の王様…物語ではそう言うけれど

 なら、『みんなの幸せを願える』人が、理想の王子様じゃないかって、そう思うの」

みんなの幸せを、願える人…


「そんなあなたが、王子様とそっくりの顔をして、追い込まれていたあたしと出会うなんて

 ……ありえない幸運で、奇跡だったわ」

ミソラさんがさらに身体を近づける

いつもの黒水着から着替えていないので、近づかれるとどうしてもそちらに目が行く

その乳白色の肌は、月の光で瑞々しさを漂わせている

彼女の繊細な肌と、色づいた唇に、思わずどきりとさせられた


「あの時出会えた奇跡…誰かを心配し、誰かを助け、誰かと喜べる人…」

ミソラさんの顔が、ほのかな体温を感じるほど近づいてくる

そのまま、ゆっくりと顔を寄せ…


「…あたしの王子様」


ミソラさんの唇が、私の唇に優しく触れる

初めてのキスは、私を包み込むかのような…甘い感じがした



「あ、あの…」

ど、どうしよう…

何て言っていいのかわからない


「え、えと…その……あの……ね」

ミソラさんもミソラさんで、自分からしたのにテンパってしまっていた


「きょ、今日はありがとう!楽しかったわ!」


パタパタパタっ


いたたまれなくなったミソラさんは、真っ赤な顔でテラスから逃げ出していった


…い、いや……

逃げ出したいのはこっちでしたよ?!

な、なんなんですか…急に褒め殺しなんてされても…

もー…ミソラさんってば本当にもー……


夜は闇に包まれ、空には輝く星々が煌めいている

まるで、ダイヤモンドが天空に散りばめられたかのように


静かな夜風がそよぐ中、唇に残るほのかな感触を思い出す

私の心臓はまだドキドキし続けていた

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