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83/108

83・王子少女は観戦したい!

「はっ!」

店長さんがスナップをかけて回転させた輪は、遠くまで飛び

高得点の9の数字を楽々と取った


「えー?!つ、つよいのですよ!」

「ははは、いかに自分のフィールドで勝負するか、それが戦いのコツだよ」

『あの…疲れてるなら、無理せず休もうか?』

「体調を心配されてる?!大丈夫だよ、ぼくは元気だから!」

いやだって、普段とかなり違うから…


「とおー!」

続けて、カグヤちゃんが輪を思いっきり投げる


バン!…ガシャッ


高速の輪が台にぶつかり、台そのものが空に浮かびあがり

そしてその台はひっくり返って着地した


「よーし、あの台もらうね、おじちゃん!」

「何で台を倒したのおじょうちゃん?!」

「倒したらもらえるって聞いて!」

「それ隣の射的だよ!」

そういや、輪投げ屋さんが説明してるとき、隣で射的のおじさんも説明してたな

…混ざっちゃったか


「あー、ぼくの輪っか外れちゃったじゃないか」

「元には戻しませんからね」

「え、ちょっと?!」

「アクシデントがあっても返金には応じません、ってスタンスなので」

確かに、いちいち文句を容認してたら、こういう屋台がやってけないのはわかる


「よし!よくやってくれたのですよ、カグヤちゃん!」

「なんかわかんないけど、褒められた!」

子供たちはリセットかかって盛り上がってる


『あ、あの…これ大丈夫かい?』

屋台はユニーク禁止のところが多いって話だったような…


「まあ、うち的には得してるのでいいよ」

いいのか…まあ、それもそうか

ユニークで荒稼ぎされなければ、屋台の人は何でもいいんだ

店長さんは残念だけど…


「じゃあ、最後にわたしが行くのですよ!……へやー!」

「フォームがへろへろだ?!」

輪っかは右にぶれながらも、なんとか端っこの『3』に着地する


「やった!はいったのですよ!」

『これはこれで心配になるね…』



そうして、熱戦(?)を繰り返していき…


「ああ、またリセットされた?!」

「い、いまのはわざとじゃないよ?!」

遠くに入れようと、力を込めた結果らしい

予想以上の低得点…というか0点で

最後のアジサイちゃんの一投を残すのみとなった


「よし、ここで入れたら勝利なのですよ!」

「むむむ…負けたくない……!」

『子供かな?!』

童心に帰りすぎている…


「いやはや、よく戦ったよ、素晴らしい」

店長さんは、なぜか急に拍手をしながら健闘を称えだす

よく戦ったも何も、二回リセットされてるってのは置いておく


「その実力に免じて、仮にこの一投が入らなかったとしても、おごってあげようじゃないか」

「…い、いいのですか?!」

聖女様、よだれ出てますよよだれ!


『…何でいきなりそんな事言い出すんだい?』

「ふふ、輪投げは集中力のゲーム…今の発言に気を取られ、集中力は大きく下がった」

「…はっ?!た、たしかにちょっと気が緩んだのですよ…!」

かかるものの大きさによって、集中力は変わる事がある…それはわかるけど


『でもそれ、勝ったとしても奢ることにはなるよね…?』

「勝つためにあらゆる手を尽くす!お金よりも勝利の気持ちよさだよ、王子!」  

『ホントに大人げないね、キミ?!』

そして小賢しい!


「てやー!」

アジサイちゃんの投げた輪っかは、へろへろと宙を舞い、そして……


「やった、入ったのですよ!」

「う、うそんっ?!」

「緩んで失敗するのは、三流のすることなのですよ!」

「く、くそお…」

よほど嬉しかったのか、ウインクとVサインまでするアジサイちゃん


「私の実力と、あと、カグヤちゃんのおかげなのです」

「わー、よかったねー」

二人は笑顔で手と手をつなぎ、ひたすらブンブンと上下させている

テンション上がってるなぁ


「じゃあ、さっそく…あそこのくじ引き屋台で、クジを引きつくすのですよ!」

「それはおごらないよ?!お腹が膨れる食べ物だけね、食べ物だけ!」

「ちぇー」

裏技を使おうとするアジサイちゃんと、止める店長さん


「じゃあじゃあ、あの鶏肉の串焼きから!」

「あ、待ってよアジサイちゃんー!」


興奮が止まらないのだろう、子供二人は駆けだして行ってしまう

後に残るのは、私と店長さんのみ




「…うんうん、やっぱり子供は元気が一番だね

 いかにも元気なさそうな子だったから、ちょっと道化になってみたよ」

『あー…なるほどぉ』

こう、大人に遊んでもらった事が、あまりなかったのだろう

アジサイちゃんは途中から、かなりはしゃいでいた


『いかにも、親戚の集まりでたまに会う、遊びに妙に詳しい

 負けず嫌いの変なお兄さんっぽい感じだね!』

「表現が具体的だね?!ま、まあ、そういうことだよ」

親戚に一人はいるものだと思ってた


「決して本気で子供と戦った訳ではなくてだね…」

『その言い訳はじめると、ホントに負けず嫌いの変なお兄さんになっちゃうよ』

「そ、そうだね」

あの時の親戚お兄さんも、私たちと遊んでくれてたのかなぁ…


『…ありがとう』

手をブンブン振って、遠くから私たちを呼んでいるアジサイちゃんたちが見える


『アジサイちゃん、ちょっと元気出たみたいだよ』

「…うん」


今日も抜けるような青い空の下で

私たちも、鶏肉の串焼きをいただくために、二人の元へと足を進めるのだった

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