表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/108

82・王子少女は拝見したい!

とりあえず、店長さんがアジサイちゃんに自己紹介をする


「ぼくは…えーと、魔法学校卒業生で、『花』で貸本屋を営んでて

 セッカちゃんからは『店長さん』なんて呼ばれてるよ

 彼女はぼくのお客さんで、よく本を借りに来てくれたんだ」

「そこから、なんだかんだでちょくちょく、困った時に手伝ってもらうようになって…」

「わたしも、おみせのおかたづけ、てつだったことあるんだよ!」

「なるほど…」

とりあえず、知り合いだって事はわかってもらえたようだ


「わたしの名前は、アジサイ…『雪』で大地を癒す聖女をやってるのです」

ちょっと気だるげな感じで紹介を返す

…初めて会った時は、こんな感じだったっけ…

おっぱいモンスターになってからの印象が強すぎて…


「今日はよろしくね、アジサイちゃん」

「は、はい、よろしくなのですよ」

店長さんがにっこりと、営業スマイルで笑う

あの顔、本借りに行った時よく見たやつだ


「……」

しかし、そのスマイルはあまり通じなかったようで

挨拶をするやいなや、アジサイちゃんは私の後ろに隠れてしまう


「かくれちゃった」

「んー…人見知りなのかな」

「都会人が苦手なんですよ、私にはわかります」

はじめて『花』の街に行った時、私もこんな感じだった

都会の人ってだけで、何考えてるかわからないって思っちゃって、怖くなるんだよね


「まあ、とりあえず行きましょう~」

貴族さんなら、ご飯を食べながらご趣味の話でも…となるんだけど

折角お祭りやってるんだし、遊びに行って交流しようと思う


「じゃあ、四人で行ってらっしゃいね」

「ミソラさんは?」

「ま、まだ原稿が残ってるの…!」

「あー…」

重要じゃないけど、話の流れ的に必要な部分が仕上がってないらしい


「わたくしも、集会の準備がありますゆえ」

執事さんも忙しいのか…まあ、メイドさんが忙しいならそうだよね

…アジサイちゃんの件があるとはいえ、私これでいいのかな…?


「いいのよ」

私の考えを見透かしたかのように、ミソラさんが言う


「それより彼女の事、しっかり頼んだわよ」

「…はい!」

アジサイちゃんはハテナ顔だけど…

まあ、後で話すから、それまで待ってもらおう




賑やかなお祭りの会場に再びやってくる

とはいえ、数日続いたお祭りも明日で終了なので、そろそろみんな落ち着いてきている


「……」

きょろきょろ

会場に着くなり、挙動不審な様子を見せるアジサイちゃん


「お、何を食べようか迷っている…そんな感じだね」

店長さんはそんなアジサイちゃんに、フレンドリーに語りかける


「アワユキさんからもらったおこづかいは有限なのです、しっかり見極めないと…」

彼女の養子に入ると決まったので、おこづかいをもらったらしい

アジサイちゃんの実年齢を三十歳とすると、アワユキさんの方が子供なんだけど…

…まあ、深くは考えないでおこう


「ぼくが『お腹いっぱいになるまで、好きな物おごってあげる』って言ったら、どうする?」

「?!」

『え、店長くん…?』

積極的にアジサイちゃんに絡んでいく店長さん

たしかにちょっとじれったいなとは思うけど…何か考えがあるのだろうか


「ただしおごりは、あのゲームに勝てたらだ!」

店長さんが、並ぶ屋台の一つ向けて指を差す

その指の先にあったのは…屋台定番のゲームの一つ、『輪投げ』のお店だった


『ちょ、ちょっと?!』

「手っ取り早く仲を深めるなら、勝負事が一番だよ、王子!」

『…そんな性格で…だったっけ?!キミ』

危ない…一瞬セッカの口調でツッコミを入れそうになった…

流石に、みんな王子の顔を知ってる城下街で、セッカを出す訳にはいかない


「子供を倒していきりたいおじさんなのです…?」

ずばっと手厳しい事を言うアジサイちゃん


「大丈夫、ハンデはついている」

輪投げのお店のおじさんは、騒いでる私たちに気づいたらしく、呼び込みをかけてくる


「あ、やるのかい?大人は外側の遠めの線から投げてねー」

「…ね?」

『ハンデって言うのかなそれ?!』

単にお店が決めた線引き…

いやでもまあ、それでいいのか


「カグヤもやるー!」

「お、いいね、やろうやろう」

「…と、ともだちがやるのなら、仕方ないのです」

視線を横にずらして、ちょっと照れながら、ともだちと言うアジサイちゃん

それを見て、心がほっこりする私


さて…輪投げの方だけども…


斜めになった木製の台に、1~9までの数字が書いてあって、数字の上にそれぞれ棒が立ってる

その棒に輪を投げて入ったら、棒の下に書かれてある数字分の点数を手に入れる

輪を五つ投げ入れて、点数が多い方が勝ち

点数に応じて、屋台の人がおやつやミニグッズなんかをくれる


…と、まあ、そんなルールのようだ


「王子様、変わったお知り合いですね」

『はは、みんなちょっとはしゃいでいるようだ』

まさかの、輪投げ屋のおじさんにツッコミを入れられる


店長さんはやけに自信ありげだけど、輪投げで仲って深まるものなのかな…?

そんな疑問はあるのだが、とりあえずここは彼のお手並みを見せてもらおうと思う

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ、広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして

評価してもらえると、たいへん嬉しいです!

さらに面白いと思ってくださった方

同じく広告の下にある『ブックマークに追加』も押して頂けると

とてもとても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ