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80/108

80・王子少女は説得したい!

最大限の警戒を持って、打開策を探ろうとする私



しかし……



「はるか昔、ユニークスキルで隕石を落としたやつ、それが元祖だ

 そいつが、その力を魔法という『学べば使える力』にまで落として

 お前はそれを習得しただけ」

(………………………うん?)


「お前は万能を装っているが、それらは全て

 圧倒的な魔力量と、過去の偉人が残した魔法の習得で成り立っている」

(えーと…)


「お前はユニークスキルを持たない、ただの一個人にすぎない

『本物』を持たない存在なんだ…お前は!」

『…あー…』

これは、あれですか

思わせぶりな態度で慌てたけど、別に私の正体に気づいている訳ではなく

ユニークスキルの無い人間を、『偽物』と呼んでるだけ…?


(ま、まぎらわしいわねー!)

(王子がユニークスキル無しって事には気づいたけど

 そもそも別人だって事はわかってないんやね)

(いや、待ってください

 …そもそも、この領主様が自力で『気づいた』んでしょうか…?)


『…その話、誰から聞いたんだい?』

剣は達者だろうけど、魔法には疎そうな人間だ

誰かから、話を聞いたのでは…?


「『風』の交流使節団…?とかいう団体で、『星』にやってきてたおっさんだよ」

…やっぱり!


『容姿は?』

「黒髪の四十代男、髭を蓄えていて腹が少し出ていて、肩に三つのあざができていた

 物腰柔らかそうに見えるが、目つきは厳しく、筋肉がかなり鍛えられてたな」

 

(…あの人です……!王子を殺害した犯人五人の中にいた…!)

(そうか…!『雪』の手先になって、『星』に離間工作を仕掛けていたのね!)

(でも、中途半端にしか成功せず、領主に疑念の種しか植え付けることができなかった)

(そこまで手を伸ばしてたんやな…!)


殺害に際し、彼らは王子を調べ上げ…王子の隕石魔法の秘密に辿り着いた


そして、殺害に失敗した時の次の策として

その魔法の秘密を使って、わざと王子を悪いように言い

言いくるめた『星』の領主を、王子と争わせようとした…!


…単なる私の予想だけど、たぶんそれに近いことが行われてたと思う


(…執事さん!)

(ミソラ殿…どうしましたか、急に)

ミソラさんは城の外に出払っている執事さんに『グループチャット』で連絡する

やっぱりこれ便利すぎる…


(今、『星』の領主が来てるんだけど…)

(なんですと?!まだ二日あったのでは…)

(詳しい話は後で!

 王子殺害犯五人の一人、『ウインドフォール』拘束しといて!

 そいつが『星』に工作をかけていたようだわ!)

(…はっ!わかりました!)


さて…問題は、この言いくるめられた『星』の領主だ

純粋だからこそ、『偽物』が許せなかったんだろうけど…


『そもそも…ボクは別に、ユニークスキルで隕石を降らせている

 なんて吹聴した覚えはないよ』

「…え?」

周りはなんとなく、ユニークスキルかなと思ってるだけで

王子はそんな事を言ってはいない


『キミの言う『本物』は、上に立つのに必要不可欠なものではないだろう?』

王子は努力して、数多くの魔法を習得している

偽物であっても力を持っている

それは、本物と何が違うのだろう


「い、いや、そうかもしれないが…

 ユニークスキルが無いとなると、みんなちょっとがっかりしないか?」


(『ちょっとがっかり』って…)

(反論されることを想定してなかったのね、ボロが出てるわ)


『…大事なのは、ユニークのあるなしじゃあない

 一番大事なのは、皆が平和で健やかに暮らせる事だ

 ボクは、それを追及する人間こそが、王としての『本物』だと思っている』


…自分の言葉が胸に刺さる

王子はきっと、そのために数々の努力をし、その実力をつけていった

それを、王子のフリをした偽物の私が語っている


けれど、彼がきっとそう思い、頑張ったであろうことは、伝えないと…!


「………」

しばらくの沈黙の後


「…そう、か……そうだよな!」

自分の中で考え、整理がついたようだった

すっきりとした顔で、真っすぐ私を見つめる


「『偽物』って言葉に騙されて、自分を見失うところだった…

 何が偽物で、何が本物かは、見る奴の匙加減でどうとでも変わる」

素直だからこそ、騙されやすくもあるが

だからこそ、あっさりと考え直す事ができる

それは、彼女のいいところだと思った


「お前の言った信念を、俺は偽物と呼びたくねえ…

 なら、それは俺にとっての『本物』だ」

彼女の『本物』を聞き、ほっと胸を撫でおろす

彼女もまた、世の中が平和であるほうがいい、と思ってくれているのだ

それなら…ボタンの掛け違えくらい、いくらでも直せばいい


「…すまなかったな、王子

 俺もまだまだ未熟者って事だ」

彼女は深々と、私に頭を下げて謝る


『いや、まず語り合ってくれた事、素直に嬉しく思うよ

 何もしないまますれ違い、取り返しがつかなくなるのが一番怖い』

私じゃ実力行使って訳にはいかないからなぁ

取り返しがつく期間がものすごく短い


「剣の語り合いなら得意なんだけどなぁ

 バトルしようぜ、王子」

『はは、今は控えてほしいな』

で、できればずーっと控えてて…!


「…ついにアイツとバトるんだよな」

『ああ』

『雪』の領主とその息子、騒動の元凶…!


「アイツらが実権を握ってるのは、正直許せねえと思ってたんだ、協力するぜ」

ファイティングポーズをとる『星』の領主

こう、味方ならすごく頼もしいなぁ


『彼らに戦争を始めさせる訳にはいかない…国の平和のために、頼む』

「了解だ!いっちょやってやるぜ!」

朗らかに笑いながら、私の背中をバシバシ叩く

い、いたっ…いたいんですけど?!


(これやるから、みんなこの『星』の領主苦手なのよ)

(うち、それで吹っ飛んだことあるからな…

 謝ってはくれたけど、あの時の恨みは忘れてへんで)

(あ、あはは…)

ホシヅキさんが、妙に警戒が強かったのって、そういう…


(…でも、よく説得してくれたわ、セッカちゃん)

(別にそんな悪い人ではないですしね、誤解させられてただけで)

私を見つめて、笑顔で微笑むミソラさん


…それはそうと、背中がヒリヒリして痛い


「あ、抵抗してきたら、こいつで切ってしまっても構わねえよな!」

『はは、まあその時はしょうがないよね』

「よし!」


彼女のこのパワーは『雪』の領主にぶつけよう!

…ぶつけてくださいお願いします!

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