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78・王子少女は警戒したい!

昨日、一緒に面会に行ったこともあって、ミソラさんの原稿がなかなか仕上がらず

今度はホシヅキさん、アワユキさんと屋台に繰り出すことに

二人は綿の生地で作られた、花の模様が大きく入った服を着てやってきた

ホシヅキさんは桜、アワユキさんはアジサイ

お祭りの時なんかに着るものらしい


ホシヅキさんはくるっとターンして、服の全身を見せてから私に問いかける


「どう?似合っとる?」

『うんうん、かわいいよ』

「ありがとうや~」

笑顔で頷くホシヅキさん

正直、服よりもその仕草が可愛いと思ってしまう


「わ、わたくしはどうでしょうか?」

『落ち着いた雰囲気、似合ってるんじゃないかな』

「ふふ、素直に受け取っておきますわ♪」

私の手を取って微笑むアワユキさん

…あれ?なんかこれ、デートみたいな雰囲気だな……


「それはそうと、これが中央のお祭り…興味深いですわ」

『ボクも今まで、あまりお祭りに顔出してなかったけど、こうしてみると楽しいね』

趣向を凝らしたカラフルな見た目の屋台たちに感心しつつ、あちこちを練り歩く

周りから「王子…?」「うそ、王子様…何で?!」みたいな声が聞こえてくる


『はっはっはっ!ちょっと皆の楽し気な空気に当てられて、やってきてしまったよ!

 気にせず祭りを楽しんでくれ!』

王子様が言いそうなセリフをチョイスして喋る

…すっかりこの演技も慣れてきたなあ

あ、この前の『隕石焼き』、行列ができてるよ?!


「ちょっと、ホシヅキさん…あの屋台に行って射的やってくださらない?」

「な、なんでや?!」

唐突に変な要求を始めるアワユキさん


「あなたがつよつよユニークスキル持ちなのは、なんとなくわかりますわ

 多分、護衛とか傭兵とかそういう感じのですよね?

 ですので、それを使ってみてほしいのですわ」

…なかなかに勘が鋭い


「…できんことはないけど、あんまり推奨せえへんで」

「なんでですの?」

「ユニークスキル使こうたら、一般人向けでバランスとってるもんが崩れてまうやろ?

 競技性のあるもんには、ユニークスキルは使わないのがマナーちゅうもんや」

へぇぇ…私も知らなかった

確かに、生まれついての才能で無双されたら、商売あがったりだ


「『雪』ではそんなの気にしてませんでしたけれど…使えるものは何でも使え、って」

「その貪欲さが必要な時もあるけどな」

できる事に制限つけるって、都会のマナーな気がする


『あのくまちゃんが欲しかったのかい?』

彼女が指定した射的の的たちの中央に、でっかいくまのぬいぐるみが置いてある

なんとなく彼女が好きそうな気がする

……

言っておきながら何だけど、ユニークスキル使おうが無理じゃない?!


「そ、そう…ではなくて……

 わたくし、ユニークスキルを使われた時の、彼らの対策も知りたかったんですわ」

「なるほどなぁ」

何か新しい商売でも始めようというのか

それとも、ただ貪欲に吸収したいだけなのか…


「まあ、こっちではマナーって言うとるだけで

 ユニーク禁止の競技では、『体内魔力測定器』が使われたりもするで」

「測定器…ですの?」

「ユニークスキルは、ほとんどが魔力を消費するからな

 試合前と比べて体内魔力が減ってたら、ズルしたやろ!って怒られるんや」

なるほど…ホシヅキさんかなり詳しい

…ひょっとして、やろうと考えた事あったのかな?


「へぇ…詳しいんですわね」

「い、いや、うちがやろうとした訳やないで?!

 あの景品欲しいけどいいのかなー、とか思って調べた訳やあらへんからな?!」

手をブンブン振りながら、答えを言ってしまっているホシヅキさん

ちょっとかわいい


「マナーとか言わずに、屋台でもその測定器を導入すればいいんじゃないですの?」

「測定器はお値段張るからな…

 屋台のおっちゃんが出してくることは、無いんちゃうかな?」

「対策もお金次第ですか…世知辛いですわねぇ」

いずれ『風』の開発部が、安く作ってくれることを願いましょう


「そうそう、王子は三桁までしか測れない魔力測定器で、四桁の魔力値出してな

 数字がバグって『ボク、壊しちゃった?!』って、珍しく困っとったことあったなぁ」

『あ、あはは…そんな事もあったかな』

ま、まずい…

ホシヅキさんが私の知らない王子の昔語りモードに入った…

しかも語っている本人は、私が知らない事に気づいていない…!


「ほうほう…わたくし、興味がありますわ!」

唐突な王子の萌え(?)エピソードに、目を輝かせるアワユキさん


「ええでー、もっと詳しく話そっかぁ」

『そ、その話はやめるんだキミたち』

いやマジで!

私のボロが出るかもしれないし!

ホシヅキさんの袖をこっそり引っ張って、なんとか気づいてもらうように…


「そうそう、懐かしいな」

「…?!」

な、なんかいきなり後ろから、黒髪の長髪美男子が会話に割り込んできた?!

彼は腰に長剣を差しており、私を見てにやりと笑う

…どういう事?!昔の知り合いか何か?!


ホシヅキさんは彼を見るやいなや、サッと青ざめて…


「すんません、また後で!」

アワユキさんに謝り、私をお姫様抱っこし、彼女は屋台の間を全速力で駆け抜けていく


『ひょおわあああああああ?!』

一瞬の出来事に、何が何だかわからず、悲鳴を上げる私




「ミソラさん!『星』の領主が到着しとりました!」

ホシヅキさんは、ミソラさんのお部屋まで、私を抱えたまま一気に駆け抜けた

…お城の人たちに見られたかな…?

誰かに見られてたら、ちょっと恥ずかしいかも…

一応、王子のフリしてるんだし、女の子に抱っこされて帰って来たって話されると…


「『星』の領主が?!まだ到着まで数日かかるって言ってたのに!」

「慌ててたんで、そのまま連れ帰ってもうたけど!」

「いや、よくやってくれたわ!」

「あ、あの…えっと……?」

二人の会話に、何が何やらわからず、混乱する


「えっとね…『星』の領主は、王子とそこそこ付き合いあったのよ

 久しぶりに、あたしがアシストした方がいい人物ね」

「な、なるほど…」

「なかなか勘が鋭い人間でね…ボロが出る前に連れ帰れて良かったわ」

ミソラさんが、ほっと胸をなでおろす

…彼はなかなかの要注意人物らしい


「もう少し詳しく説明しといたほうがいいわね、えっと……」







「あのメイド、特殊なユニークスキル持ちだったのか」

目を細めて、ホシヅキが王子を連れて駆け抜けていった先を見つめる、謎の人物


「別に逃げなくてもいいのに…照れ屋だな」

にやりと笑うその姿に、アワユキはただならぬ気配を感じる


「あ、あの…あなたは王子様のお知り合い、なのかしら…?」

「『星』の領主…と言えばわかるかな」

「あ、領主様なのですの?!」

こんな美形の青年領主だったのか…とアワユキは驚く


「ここで会ったのは単なる偶然だったんだがな、随分驚かれてしまったようだ」

「あ、偶然なんですのね」

「俺だって祭りを楽しみたい気持ちはある」

祭りのために、『星』の領主は予定を数日早めて、こっそり中央にやってきたのだった


「まあ、城まで行くか…流石に城からは逃げないだろう」

アワユキに背を向け、立ち去ろうとする『星』の領主


(…何かわからないけれど、時間を稼いでおいた方がよさそうですわね)

直感が働き、アワユキは領主を留める事にした


「あ、ちょっとお待ちになって」

去ろうとする領主の腕を掴み引き寄せる


「わたくし、『雪』の領主の親戚ですのよ

 よろしければ、ちょっとお祭りにお付き合いくださらない?」

「……俺も門外漢で、そんなに詳しくはないが」

「知らない者同士でも楽しめる、それがお祭りですわ!」


(今のうちに準備を整えてくださいまし、王子様!)

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