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77・王子少女は面会したい!

中央の城下街から少し離れた林の中に、王立中央刑務所がある

犯罪者の更生を促すために、ここでは材木を使った日用品、土産物などが作られている

私はミソラさん、執事さんと共に、その刑務所を訪れていた


「こちらです」

看守さんに案内され、面会室へ

そこは、中央がガラスで仕切られていて、奥が囚人、手前が面会人と分けられている

…私たちが何でここに来たかというと……


「久しぶりだな…元気だったか、身体は大丈夫か?」

「…先週も来ただろ?大丈夫だって、オヤジ」

『風』の領主がこっちに来て、息子と面会していると聞いたからだった


コガラシくんは縞模様の服を着た、いかにもな囚人スタイル

『風』の領主様の方は、高級ではあるものの、地味で落ち着いた服装をしている

彼らは、入ってきた私たちの気配に気づき、顔をこちらに向ける


「…おお!これは王子殿と補佐官殿…!いつの間にいらしてたのですか?」

『領主たちに集まってもらおうと思ってたんだけど

『風』の領主は、毎週ここに面会に来てるって聞いたから…

 使いを出すよりここに来る方が早いか、と思ってね』

「それはそれは…なんともお恥ずかしい」

息子が心配なのはわかるけど、執務は大丈夫なのか心配になる頻度だ


「すっかり毒が抜け落ちてる顔ね」

ミソラさんが、コガラシくんの顔を見て、そんな感想を漏らす

確かに、なんだか落ち着いたような雰囲気がする


「規則正しい生活をしてるからかな…なんだかすっきりしたよ」

「今のコガラシ殿は、囚人たちの模範生ですね

 このまま続くようなら、刑期を早めてもよいかもしれません」

看守さんが、彼の普段の態度を教えてくれる

しっかり反省してくれているなら、それが何より


「コガラシ殿!またお弁当を持って参りました!」

…ん?

廊下からするこの声は……


「…あ、みなさんいらしてたんでありますか?!」

ドアから中に入ってきたのは、ピンクの包みを持った、緑髪の女性…

コガラシくんのお付きのナギさんだった

私たちがいる事に気づき、照れくさそうにしている


「いつもすまないな、ナギ」

落ち着いた顔で、彼女に礼を言うコガラシくん

…いや、本当に変わったね君……


「今日はコガラシ殿の好きなハンバーグでありますよ!」

「本当か?それはありがたい」

「……」

まるで恋人のような会話に、私たちは何とも言えない表情になる


「……な、なんだ?ジロジロ見て」

「あなたたち、いつから付き合い始めたの?!」

ジト目でにやりと笑いながら質問するミソラさん


「ば、ばか!まだそんな…」

「『まだ』?!」

「あ、う、えとその…」

追及されたナギさんたちは、赤くなっておろおろしている

…そっかー、愛情芽生えちゃったかー……


「とりあえず、彼がここに入れられてから

 彼女毎日のように来てますね…弁当を差し入れしに」

「か、看守さん~、そこは内緒にして欲しかったであります!」

ナギさんは、しーっ、と指で口を押えるポーズをする

…彼女、こんなにかわいかったっけ?


「とりあえず、また中身確認しますよ」

「あ、ちょ、皆さんの前で…?!」

「危険物が入ってないか、チェックしないといけない決まりなので」

看守さんがピンクの包みを開き、弁当箱の中身を確認する


「うわ、めちゃめちゃかわいい弁当ね……」

『愛妻弁当かな?』

「あ、あああっ…」

てりのついたハンバーグにソーセージ、キャベツとライス

ライスの上には、ハートマークの形をしたにんじんが乗せられている

普段にしても看守さんが見るだろうに、よくやるなぁ…

見られたナギさんは目をぐるぐるに、顔を真っ赤にしている


「…こうなってみて、ようやく、本当に大事なものが何なのか、わかった気がするんだ

 許されることじゃないが…本当にすまなかった、王子」

コガラシくんは深々と頭を下げる

…彼がもっと早く気づけていれば、王子も…

今さら戻らない事だけれど、もしもの事を考えてしまう


「領主様…いよいよ、時期がやってまいりましたぞ」

執事さんが、『風』の領主様に語りかける


『領主たちと王子の承認の元、『雪』の新たな領主を決め、元領主を追放する…』

「…いよいよですか……

 わかりました、自分も覚悟を決めましょう」

ミソラさんが事前に大体は話していたらしく、後は日程を調整し出席してもらうだけ


「息子のフレーダは、何をやってくるかわからないぞ…気を付けた方がいい」

ガラスの向こうから、コガラシくんが真剣な顔で忠告してくる


「意気投合していた時期に、『風』にも何度かあいつがやってきてたんだが…

 どこにいても底を見せない、不気味な奴だった」

『…ああ、忠告ありがとう』



そうして、刑務所での面会は終わり、『風』の領主もしばらく中央に留まることになった


あの日逃した彼と、もうすぐ決着をつける時がやってくる

この国の平和をかけて…!

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