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71・カグヤちゃんはともだちになりたい!

しばらく歩き、私たちは旅館に戻って来た

結局、最初に泊まっていた旅館を、聖女様を探すまで拠点として使わせてもらっていた

この宿をずっと貸し切りで…

いくらかかってるのか、考えたくないなぁ……


まず玄関で、女将さんに出会う

彼女はアジサイちゃんを見ると、一言


「聖女様…なのですね」

「はい、名前はアジサイと言うのです

 わたしの作物を高く買い取ってもらって、ありがとうなのですよ

 …きっと村の助けになってると思うのです」

ぺこりとおじぎをするアジサイちゃん

アジサイちゃんは…『ちゃん』でいいよね?

三十歳だとはいえ、なんかさんづけは似合わない気がする


「お会いできる日が来るなんて…」

感激して、ちょっと泣きそうになってる女将さん


「おかえりなさい!」

「おかえりなさいませ」

「…おかえりなさいです」

そこにカグヤちゃん、ヒルヅキさんアカツキさんもやってくる

お風呂に入るところだったのか、彼女たちは着替えとタオルを持っている


「聖女様、見つかったのですね」

「んー…とりあえず、みんなでお風呂入ろ!お風呂っ」

聖女様の汚れを見て思ったのか、それとも自分が入るところだったからか

お風呂を提案するカグヤちゃん


「そうね、汗も流したいしね」

「はだかのつきあい、ってやつだよ!」

むん、と両肩を上げたポージングをするカグヤちゃん

見せつけるほど目立った筋肉は、まだついていない


「あの…こちらの方々は?」

女将さんの事は話してたけど、カグヤちゃんたちの事は言ってなかった

彼女とのつながりが特に無いので、後回しにしてそのままだった


「わたしカグヤ!おねーちゃんのいもうとだよ!」

「あ…あたしの妹ね」

「わたしはアジサイなのです」

「中央でお仕えしてるメイドです」

「同じくです」

…アカツキさんは、姉に任せて手を抜く時が結構ある


「そうですね、ここはお風呂お呼ばれするのです」

「じゃあはいろー!」

「ええ、どうぞごゆっくりしていってください」

女将さんの笑顔に見送られ、また温泉へに入る私たちなのだった



………

……



「ほぇー…こんな綺麗な温泉はじめてなのですよ」

アジサイちゃんが感嘆の声を漏らす

田舎の温泉には入った事あるっぽい


「おせなかながそっかー」

早速、手に泡まみれのタオルを持ち

目を輝かせてアジサイちゃんに迫るカグヤちゃん

今日はターゲットにされなさそうでほっとする


「じゃ、じゃあお願いするのです」

断るのも悪いと思い、申し出を受けるアジサイちゃん

椅子に座るアジサイちゃんの幼い背中を、タオルでごしごしとするカグヤちゃん

うんうん、ほほえましくていい光景だなぁ…


ずっと見ていたいけど、そういう訳にもいかない

わたしたちもそれぞれ椅子に座り、自分の身体を洗い始める


「おきゃくさま、かゆいところはございませんかー?」

「それ、なんか違う気がするのですよ?!」

それは確か床屋で言うセリフじゃなかったっけ…?

自分を洗いつつも、気になってついつい彼女たちの方を見てしまう私


「みんなちがってみんないい…だからちがっててもおっけー!」

「?!」

カグヤちゃんの変な理屈に翻弄されるアジサイんちゃん

…うんうん、私もよく混乱するんだよ


「ねえ…わたし、おなじとしのともだちいないんだ

 わたしのともだちになってくれないかな?」

残念息子の元にいたせいで、同い年の人間に会う機会が、そもそも無かったのだろう

彼女は、同年代に会えたと思って喜んでいる


「え、い、いやでもわたしは…」

「…なってくれないなら、だいじなところをやさしくあらっちゃうよ!」

「斬新な脅迫やめてなのですよ?!」

脅迫に…なっているのかいないのか、微妙なところだ


「と、ともだちはいいのですけど、実は同じ年じゃなくて…三十歳なのですよ」

赤くなってうつむくアジサイちゃん

…さっきホシヅキさんに指摘されたことが効いてるみたいだった


「みためはだいじって、おねーちゃんいつもいってるよ!

 だから、さんじゅっさいでもごじゅっさいでも

 みためがわたしとおんなじだから、じゅっさいだよ!」

強引な論法再び

だけど、彼女なりにアジサイちゃんを思っての言葉だと思う


「…ちなみに、ミソラさんそんな事言ってるんですか?」

隣で髪を洗っているミソラさんに聞いてみる


「カグヤってだらしなく服を着てる事が多くて、つい苦言を言いたくなるのよね」

「ミソラさんは、服がうんぬん言える立場では無いのでは…?」

黒水着の着たきりだし…


「そっか…わたし、十歳になってもいいのですよね…!」

「そうだよ!なろう、じゅっさい!」

「…なんか話がおかしな方向に行ってない?」

カグヤちゃんが喋りだすと、その傾向が高い気がする


「セッカおねーちゃん」

なぜか急に、目をぐるぐるにしたアジサイちゃんがこちらにやってくる

長年『雪』の村々を旅していただろう身体は、なのに傷一つもない

回復…成長?魔法を使ってるおかげだろうか


「ど、どうしました…?」

ちょっと身体を見てドキドキしてしまった自分を

恥ずかしく思いながら、彼女と話をする


「おっぱい…」

「それは十歳じゃないですよ!正気に戻って!」

また幼児退行してる?!

行き過ぎですよ!十歳まで戻ってきて!


「うー…」

しかも目がこの前より座ってる…

まずい…今度はアジサイちゃんに襲われちゃう?!

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