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70/108

70・アジサイちゃんは数えたくない!

私は、彼女の自己犠牲に、言い様の無い衝撃を受けていた


『…そんな……』

子供が、自分の成長という、未来への希望を捨てる

彼女はそれほどの覚悟でもって、聖女を続けたのだ


「…そういうことだったのですね

 わたくし、大変失礼なことを申してしまいましたわ…」

深く深く、頭を下げて謝るアワユキさん


成長しないという事は、老化もしないのかもしれない

…もしかすると、永遠に『雪』で苦しむ人たちを救い続けていたのかもしれない

終わりのない救済…

あの時、彼女がどれだけ落ち込んでいたのか…その一端を垣間見た気がした


「気にしなくていいのですよ

 わたしが無理に力を使わなくても大丈夫な『雪』を、作っていくのですよね?

 たぶん、無理をしなくなったらまた成長できると思うのです」

そう言って、彼女は笑う

辛さも苦しさも、未来があると信じられれば戦える

出会った時とは違う、信念の強さのようなものを、感じた


『そうだね…頑張ろう!』

「わたくしも頑張りますわ!」

「そうね…わたしも気合入れなきゃいけないわね」

「うむ、やりましょうぞ!」

決意を新たにする私たち

彼女を救済のループから救い出し、未来に向かって歩みはじめよう!

私たちの戦いはこれからだ!


「……」



………

……



そうして、初の顔合わせは無事に終了

細かく詰めるところはいっぱいあるけど、大体は上手くいきそうでよかった

私たちは町長の館を出て、カグヤちゃんとヒルヅキさんアカツキさんの待つ旅館に戻る


「わー、セッカお姉ちゃんー♪」

聖女様は、町長の視線が無くなる場所まできたら、また腕に掴まってきた

できるだけベタベタしたいらしい


「あの…ちょっとええかな?」

そこにホシヅキさんがおずおずと話してくる


「なんかいい雰囲気やから、言われへんかったんやけど……」

そういえば、さっき決意表明をしてた時から、ホシヅキさん一人だけ考え事してた

…何かあるのかな?


「力に目覚めたのって、何歳ぐらいの時やったん?」

「えっと…たしか十歳の時なのですよ」

「そこから二十年…って計算すると、聖女様のお歳って…」

「……」

指折り数えて、だんだん青くなっていく聖女様


「…さ、三十歳、なのですね……」

「さん…えええええええええ?!」

こ、この私にしがみついているかわいい幼女が、三十歳……?!


「初対面の少女に抱きしめられて幼児退行して、おっぱいを求めだす三十歳…」

「幼児のフリをしてベタベタに甘えてきて、お姉ちゃん♪とか年下に言っちゃう三十歳…」

「ふああああああああ、やめ、やめるのですよ!事実を指摘するのは!」

ミソラさんとホシヅキさんに指摘され、赤くなった顔を手で覆いながら

聖女様は地面をのたうち回る


「なのですよ、とか言っちゃうのも子供っぽくない?」

「ううううう…だ、だってずっと『雪』の奥地で癒し続けてたのです…!

 何年経ってるかも、さっきまでわかってなかったのです!」

叫びながらなおも地面に転がり、じたばた暴れる聖女様

この子が三十歳かぁ……


…でもまあ、彼女に三十歳の振る舞いをそのまま求めるのも、違う気はする


「ま、まあ…ちょっとくらい甘えさせてあげても、いいんじゃないでしょうか」

子供でいられなかった彼女に、与えられなかった時間が、少しでも戻るなら


「それはいいけどー…三十歳と分かったら、遠慮はしないわ♪」

ミソラさんがまた、私の腕に抱きついてくる

今まで一応、聖女様…アジサイちゃんに遠慮していたけど

三十歳にそれはしないらしい


「ひゃっ…も、もう、ミソラさんー…」

「うちもベタベタするーっ」

「ホシヅキさんまでー?!」

「はうっ、ずるいのです!わたしも混ぜるのですよ!」

また揉みくちゃにされる私

私にも、ちょっと遠慮してくれてもいいんじゃないかな?!


湯煙の漂う帰り道、赤くなりながらそんな事を思うのだった

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