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69・王子少女は察したい!

例の「町長執務室」という名の、旧旅館の個室に再びやってくる

ここに来るまでの間、聖女様はせわしなくあちこちを眺め

気になったものに近づいたり触ってみたり、非常に落ち着きがなかった

…私も、王城に来た時はそんな感じのお登りさんでしたから、気持ちはわかりますが


ノックをし、ドアを開けて部屋に入る


「聞きましたわ!聖女様をお連れになったですって?!」

奥の机に座っていたアワユキさんが、すっくと立ち上がり、私たちの前まで駆け寄ってくる

やはり噂の聖女様は気になるらしい


「ど、どちらにいらっしゃいますの?!」

『この子がそうだよ』

私は、アワユキさんの目の前に紫髪の少女、アジサイちゃんをお出しする


「…え?」

「あの…わたし、聖女の…アジサイなのです」

緊張しているのか、もじもじしている

その姿を見て、目を丸くするアワユキさん


「あ、あの…失礼ながら、何かのお間違いでは……」

「聖女らしくないのは認めますけれど、わたしなのです!間違いないのです!」

少し汚れてはいるが、埃などは払ったし

花飾りのある白い修道服は、聖女と言って申し分ない恰好だと思うのだけれど


「だ、だって、聖女様って…

 二十年前から大地を癒し続けたという伝説のお方

 少なくともお歳は二十を超えてるはずでは…?」

『えええええ?!』

そ、それ初耳ですよ?!


「しかし、実際に癒しを受けた方たちから容姿を聞いた限りでは

 この方に間違いなさそうですが…」

「そ、そうなのですか…すみません、わたくしが情報不足だっただけなのですね」

執事さんたちが聞いて回った答えだし、そっちの方が情報としては合ってるはず…


「あ…ひょっとして、二代目聖女様だったりしますの?」

『なるほど…そういう事……?』

代を継いでるかどうかは置いておいて

昔、別に活躍した聖女様がいてもおかしくない


「ち、違うのです…たぶん昔も今も、聖女はわたし一人なのですよ」

『?』

「…えっと、とりあえずこれを見るのですよ」

そう言って、彼女は自分の手のひらに

何かの種のようなものを乗せて、私たちに見せた


「こういう時のために、種を持っているのです

 この種に、わたしが魔力を加えると…」

彼女が目を閉じ力をこめると、手のひらの種が緑色に輝きだし

その殻を破って中から…


「芽が出てきたわ!」

「もう少し加えると花が咲くのですよ」

『すごいね…これが聖女様の力……』

神秘的で不思議な光景だった

回復魔法で怪我が治るのを見た、あの時の感覚に近いかもしれない


「わたしのユニークスキルは『五歳豊穣』(グロースチェンジ)

『成長の力』を魔力に、魔力を『成長の力』に変換できるスキル

 この『成長の力』を大地に埋め込むと、枯れた土地が実りある大地になるのです」

魔力を炎にしたり風にしたりは、魔法使いさんが攻撃魔法でやってるけれど

『成長の力』なんてのにまでできるとは…


「『成長の力』で身体の一部を活性化させて、回復を早める

 回復魔法のような使い方もできるのですけれど…

 まあ、それはおまけなのですよ」

えっへん、と胸を張る聖女様


『間違いなく本物だね、これは』

「じゃあ、やっぱり二代目って事です…?」

混乱しているアワユキさん

本物なのは確かだけれど、年齢の件がわからないようだ


「あ、いや…そ、そうではなくて…

 それは…どう言えばいいのです…?」

かなり迷っている様子の彼女

…なんだろう、彼女は何を伝えたい…?


「…ひょっとして……」

ミソラさんは、その何かに気づいたようだった


「『自分の成長』を、魔力に変換することもできる?」

「…そ、そう!それが言いたかったのですよ」

言葉が出てこなくて悩んでいた彼女をフォローする

やはりミソラさんは頭がいい…ちょっと格好だけはアレだけど



そして、そこからはミソラさんが説明に回ってくれる


「魔力は有限、一人で持てる量には限りがあるわ」

王子様は数十人分という、極端に大きい魔力があったらしいけど、それでも百は超えない

個人の限界がそれくらいなのだろう


「しかし、『雪』には癒すべき土地があまりにも多く

 聖女様は『自分の成長』を魔力に変換、その魔力で多くの『雪』の地を癒し続け

 ……代償として、彼女は子供の姿から成長できなくなった」

「!」

「…という事であってるかしら」

「その通り、なのですよ」

その小さな身体は、文字通り身を捧げた結果…

まさに『聖女』と呼ぶにふさわしい行いだった

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