57・王子少女は隠したい!
「…やっぱりカグヤわかんないー、どーいうこと?」
長い説明でパンクしそうなカグヤちゃん
「とりあえず三つ!」
店長さんは指で三を作ってまとめに入る
「いち!ユニークスキルを持ってない人は、無色魔力を持ってるよ」
「に!無色魔力が数十人分あれば、隕石魔法が使えるよ」
「さん!王子はユニークスキル無しで苦労したけど
偶然条件が全部揃ってて、隕石魔法が使えるようになったよ」
おお、これはわかりやすい
本のあらすじを書いて店頭に並べる技術が、役に立ってる感じ
「どう、かな…?」
「んー……なんとなくわかった、かな?」
「なるほど、そういう事でしたか」
カグヤちゃんだけでなく、執事さんもうんうんとうなづいている
「ふぅ…教員資格、取っておけばよかったなぁ」
人生、何が起こるかわからないものですね
…それはそうと
「あ、あの…私もユニークスキル無いんですけど…
その、隕石魔法使えちゃったり、とか…?!」
撃ちたいわけではないけれど、ユニークスキルっぽいものに魅力を感じる私
「それだけの無色魔力が体内にあれば」
「数十人分でしたっけ…さすがに無いですね」
一日一回、私の魔力を外に出して何かに保存しておけば、二三ヵ月で…ダメかなぁ?
「…しかしまあ、使い方はとてもよくまとまってるよ
努力したんだろうね…」
店長さんはページをぺらぺらとめくり、王子の仕事を褒めたたえる
「『最後に、決まったら高笑いを忘れない事!』とも書いてあるけど…」
「お、王子ぃ…」
そして、ちょっとお茶目なところもある
「…ん?何やってるんです?」
店長さんの話もそこそこに、金庫の中をごそごそしだすメイドさんたち
「王子は、えっちな本とか持ってなかったんでしょうか
…てっきりこの中にあると思ってたのに」
「ちょっとお二人とも?」
そういうプライベートを見たがるの、よくないと思いますよ?!
そりゃあ、二人からしたら、気になる王子の嗜好は知りたいでしょうけど…!
「それなら、この本棚にあるやつちゃうかな?ほら、一つだけ表紙カバーと中身が違う」
「え…」
覚醒して捜索の技術も手に入れたのか
ホシヅキちゃんがあっさりと、隠されているものを見つけ出す
…いや待って、それ……
「ちょ、ちょっとそれはダメですー!」
「ど、どうしたの?セッカちゃん」
「あ、そのタイトル、ぼくの店で借りてた、ちょっとえっちな小説の続編!」
「バラさないでくださいー?!」
国立図書館、何でもあるなーって、つい借りただけなんです!
………
……
…
最後はドタバタしてしまったけど、他に何も見つからなかったのでとりあえず解散
執事さんとメイドさんたちは、ご飯の準備に
カグヤちゃんは先にミソラさんのお部屋に
店長さんは国立図書館に、それぞれ再び向かうのだった
王子の部屋に残ったのは、私とミソラさん
「…すぐ使えそうなものはなかったわね」
「そ、そんなものですよ…」
王子の努力の結晶は見つけたけれど、それは後世に残すとかそういう類のもの
私の恥ずかしいものも、見つかってしまいましたけどね!
ううう…
「…ここからどうしましょう?
『雪』以外は、味方になってくれましたけど……」
まだ一番の首謀者が残っている
「一地域で逆らえる筈はないわ、油断しなければ押し切れるはずよ
不意打ちとか暗殺には、気をつけなければいけないけど…」
「そこは執事さんやホシヅキちゃんにお願いですね」
私は、一人で来てと誘われても、ついていったりしない…
自分に自信のない小物だから…!
「えげつない事やってるのはわかってきましたし
その罪で『雪』の領主の人は追放ー!とかできませんか?」
「…『雪』の地方は元々、『雪』の領主たちの一族が支配してた小さな国、だったのよね
様々ないざこざを経て、今は私たちトローブ国の一員になったけど
簡単に、よそ者に首を挿げ替える訳にはいかないわ」
「……」
「その地域を支配して、住んでる人が納得するのは、やっぱり昔から支配していた一族なのよ」
「で、でもそれじゃ…」
また悪だくみやりたい放題になってしまう
放置できるレベルじゃないし、ここはやっぱり…
「だから…あの一族の中で、比較的まともな人間をトップに入れ替える」
「…そんな人、いるんですか?」
「『風』との境にある、比較的大きな街、『ユキミ』の町長
『雪』で一番、領民に人気のある人物よ」
おおお、ちゃんと後のことまで考えてる
ミソラさんはやっぱり、(その格好を除けば)優秀だ
「彼女を説得して、こっちについてもらって、『雪』のトップに据える」
「あ、女性の方なんですね…ちょっと珍しいかも?」
「元の領主は、国を乱した罪を追及して、投獄…までいければベストね」
いけそうな気がしてきた…
ミソラさんの青写真は聞かせてもらったし、後は私たちが頑張れば…!
「まあ、そういう訳で……」
こほん、とミソラさんは一つ咳をする
そして……
「とりあえず、温泉に行くわよ!温泉!」
なぜかいきなり、レジャーの話をしだした
「ええっ…な、なんでですか?!」
「『ユキミ』は温泉街だからね!
なんか最近、肩こりがひどかったし、ちょっとゆったりさせてもらうわ!」
「その格好で身体冷やしてるのが、肩こりの原因じゃないですか?!」
黒水着の長時間着用は、お身体によろしくありませんよ!……たぶん!
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