56・隕石王子は語りたい!
そんなこんながあって、私たちは中央まで帰ってきた
カグヤちゃんと店長さんは、解散して『花』に帰るか迷ったけど
店長さんは協力のお礼で『国立図書館に入る』ため
カグヤちゃんは久しぶりにお姉ちゃんと過ごすため
それぞれ中央に来ることになった
久しぶりに帰ってきたお城、その荘厳な佇まいは、なんだか懐かしささえ感じた
…私、まだ二、三ヵ月しか住んでないはずなんだけど…思い出が濃いせいかな
「じゃあ、ぼくは図書館に行ってくるよ!」
「ウキウキね、店長さん」
「そりゃあもう!普段は目にできない、新しい知識との出会い!楽しみだよ!」
お城に入る直前で店長さんは別れる
彼はお城よりも、その隣の図書館が気になって仕方ないようだ
「…さっき渡した木札、無くさないでね、特別入場者の印だから
無くすとコガラシくんと同じ場所に送られるわよ」
「ひえっ」
浮かれっぷりがすごかったので、ちょっとミソラさんに引き締められる
そんな一コマに苦笑しつつ、私たちはお城の中へ
『はーっはっはっは!みんな、ただいま!』
「おかえりなさいませ、王子!」
「『風』でのご活躍、素晴らしかったです!」
『皆の協力があったからだ、ありがとう!』
お城の兵士たちと握手をして回る
出張してもらったのはもちろん、コガラシくん捕縛の仕掛け作るのも、手伝ってもらったし
ホント、みなさんのおかげです
一通り挨拶を済ませた後、大勢でぞろぞろと、王子の部屋まで移動する
すっかり見慣れた豪華な扉を開け、部屋の中へ
件の金庫は、部屋に入ってすぐ右の壁際、机の横に置いてある
「これなんかな?」
「そうそう」
それは金の装飾が施された、これまた豪華な金庫だった
村の集会所にある金庫は、不愛想な鉄の塊だったのになぁ…
「さて、開けましょうか…」
「ごくりっ」
ミソラさんが例のカギを取り出し、カグヤちゃんがまた口で「ごくり」と言った
鍵を差し込み、回すと…ばちんっ!という音がして、金属の何かが動いた音がする
これで開いた…のかな?たぶん
金庫の扉を触ると、普通に動かせた
中には何が…
「日記帳…?」
「お、王子の日記?!はわわわわ…」
「落ち着きなさい?!」
なぜか日記帳で顔を赤くするメイドさん三人
「いや、日記じゃないわねコレ…日記帳を使って別の事を書いてる」
「え…?」
「タイトルは…『隕石魔法の研究記録』……?」
「…そ、それは……」
急激にヤバイ雰囲気が漂ってきた
「ホシヅキちゃん!今すぐ店主さん呼んできて!」
「は、はいやで!」
図書館に行っている店長さんを呼びに行くホシヅキちゃん
「………」
五分ほどして、店長さんが連れられてくる
「ちょ、ちょっと待って!これこそガチの国家機密じゃない?!
ぼくが読んでいいものじゃ…!」
内容を聞かされ、焦る店長さん
それはそうだろう…この魔法の取り扱い次第で、国が傾く
「お願い!事情を知ってる魔法学校卒業者はあなたしかいないわ!」
「店長さん、お願いします!」
「カグヤもおねがいします」
「わ、わかったよ…間違ってても怒らないでね」
三人にお願いをされて、しぶしぶ了承する店長さん
すみません…私たちも危険物には、できるだけの対処をして臨みたいのです
店長さんが、日記風研究記録の一ページ目をめくる
「…読み上げるね」
『まず、ボクがこれを書くに至った経緯を話そう』
『…興味が無ければ、ここは飛ばしてくれて構わない』
「てんちょーさん、あとでわかりやすくせつめーしてくれる?」
さすがカグヤちゃん
すでにもう、自分は理解できないだろう事を察している
「読んでみて、ぼくが理解できたらね」
店長さんは大丈夫…だと思いたい
『ボクはユニークスキルを持たない、珍しい子供だった』
え…?
周囲から驚くような雰囲気が伝わってくる
私たちは、王子のユニークスキルで、隕石魔法を制御していると、思っていたからだ
『王子であるボクは、だからこそ
ユニークスキルの代わりに魔法を身につけようと、幼い頃から魔法学校に通い詰めた』
『ユニークスキルと魔法は、関係が深い』
『特定個人でしか使えないユニークスキルを
別の人間でも使えるようにと研究した結果、編み出されたものが魔法なのだ』
「この内容…あってるの?店主さん」
「うん、学校ではそう言い伝えられてるね」
『魔法を扱うためには体内魔力の『色』が重要だ』
『体内魔力が『風』の人間は、飛行魔法が扱いやすく、『火』の人間は炎の攻撃魔法が得意になる』
『二重属性などという、体内に二種類の魔力を持つ、大変珍しい人間もいるそうだけど』
「飛行魔法の話は、この前しましたね」
「そうそう『風』は結構、便利系魔法が多いんだよ」
『ユニークスキルは、体内魔力の『色』が、さらに重要らしい』
『例えば、『風』の魔力持ちなら
空に浮かんだり、空気にのせて言葉を届けたりするスキルを覚えたりする』
『得意分野が伸びる形で発生するのだ』
「…かなり重要なのね、体内魔力って」
「魔法学校で、結構簡単に調べられるから、気になったらぜひ」
「宣伝になってますよ」
『調べてみた結果…ボクの体内魔力には色が無かった』
『なるほどと納得した』
『得意分野が無いから、ユニークスキルが発生しない…そういう事だ』
「そ、そうなんですか?!魔力の色が無いから、ユニークスキルが無いって…」
「その原因のひとつだと言われてるね
サンプルが少ないんで、残念ながら調査は進んでないんだ」
『幸い、無色ながら体内の魔力量だけは、人の何十倍もあった』
『それに、無色なら逆に、炎と水の魔法を同時に習得、なんて面白いこともできそうだった』
『ボクは魔法にのめりこんでいった』
「…それで、色々な事ができる、完璧王子になったんやな」
「魔力量はともかく、他は努力のたまものだったのね」
『そんな中、魔法学校で見つけた一冊の書』
『理論だけしか書かれていなかったが
それはまさに無色な自分にとって、福音とも呼ぶべき書物だった』
『星に手をかけ、地に落とす』
『隕石を落とす魔法…メテオストライクとの出会いだった』
「きたよ…隕石魔法!ここからが肝だ」
『理屈はこうだ』
『空に浮かぶ星を、魔力で動かし、地面に落ちてくるように調整する』
『ただ、星に魔力が届くまでには、大気に様々な抵抗があり、色のついた魔力は霧散してしまう』
『無色の魔力だけが、抵抗を受けずに星に届きうる』
『しかも、その魔力が届いても、星を動かすまでに至るには、普通の人間数十人分が必要』
『普通なら用意するのは不可能だった』
『しかし、偶然にも…ボクはその条件を満たしていた』
『研究と実験を繰り返し、隕石魔法はボクの代名詞となり
ボクのユニークスキルのようなものになった』
「…あれ?王子が初めて隕石魔法を使ったのって、七歳とかじゃ…?」
「その前…五歳ぐらいから、魔法を勉強していたのかしらね」
「ユニークスキル無しでも、天才じゃないですか?!」
『ボク以外にこの魔法を扱える人間が、いるかどうかはわからない』
『しかし、研究者が理論だけでもと、この世に残してくれたものが、ボクの役に立った』
『ボクもここに記そうと思う…隕石魔法の研究記録、そして使い方を』
「…この後は、具体的な使用方法と、実験結果の詳細の記録、だね」
「は、はえー…」
ただただ、王子がすごいって事しかわからなかった
私、そんな人のマネ続けてて、バチが当たらないだろうか…
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