55・王子少女はおつかれしたい!
「ああああああああ、またやってしまいました
私、そんな偉そうに言える立場じゃないのにぃぃ…」
ベッドの上でごろごろと転がる私
「…王子おねえちゃん、いつもこんな感じなの?」
「そうねー…前もギャップに悶えてたわね」
一段落着いたという事で、私たちはカミギワ山山頂の、王子テントに集まっていた
このテントの中には今…私、ミソラさんカグヤちゃん、メイド三姉妹、執事さん店長さん
という内情を知っている全員がいる
「あはは…いつもの、ちょっとえっちな連載小説を借りに来て、顔赤くしてた時のセッカちゃんだ」
「ちょ、ちょっと店長さん?!」
バレないように顔隠してたのに?!
そっかあ…気づいてたのか……
「おっと、つい気が緩んで…ごめんねセッカちゃん」
「店主さん、その本の名前を詳しく」
「ミソラさーん?!」
知ってどうしようと言うんですか?!
「いや、ホントよくやってくれたわ
あの状況から犠牲がゼロ人で、『風』との仲も取り戻すなんて奇跡よ」
「それは…みなさんに手伝ってもらったから……」
実際、私のしたことは、王子の名前を借りてハッタリを効かせただけだ
「うちは、セッカちゃんやから助けたいって思ったんやで!もっと自信持ちや!」
「ちょ、ち、近いですよぉ…」
励ましてくれるホシヅキちゃん
そう言ってくれるのは嬉しいけれど、顔を間近に寄せてくるのは何でですか?!
しかも、またあのユニークな、やたらえっちい紫の服着てるし…!
「ホシヅキ…いつの間にそんなえっちな格好をするように」
「いけない子ね、王子と一緒におしおきしないとぉ」
「ふぇ?!ち、ちがうんやお姉ちゃん!これは…」
姉二人が、ホシヅキちゃんのえっちさに当てられたらしく、興奮して迫ってくる
ふーっ…
「はうっ」
「や、やあんっ…」
私とホシヅキちゃんは、ヒルヅキさんアカツキさんに
久しぶりの真横から耳ふーをされて…って、結局私もされるの?!
「だからやめんかと言ってるだろう?!」
「ああああ、パパ痛い痛いっ!」
そして、久しぶりの執事さんの頭グリグリ
思わず懐かしさがこみ上げてくる流れだった
「いや、セッカ殿、本当によくやってくださいました」
執事さんは私に深々と頭を下げて、お礼を述べる
「…あれで、よかったんでしょうか?」
皆で相談して、コガラシくんはあの方向で行くと決めたけれど…
「もし王子がお怒りになったら、わたくしが謝りに行きます」
「パパ、王子は生きてるって事は…ないかな?」
「捜索はしてみるが…可能性はほぼ無いだろうな」
「そっか……そう、よね…」
毒を盛られ川に落ちた…
生きていてほしいけど、まず生きていない状況だろう
「今はセッカちゃんがいるから、なんとかなってるけど
『雪』との問題が解決して、セッカちゃんも実家に帰ったら…」
後を考え落ち込むヒルヅキさん
私、は…
「…それはまあ、また考えるわ!」
無理に明るく声を上げるミソラさん
やっぱり皆、王子の事はショックなのだろう
でも、未来のために耐えているだけなのだ
「それより今は……」
ミソラさんは、いつもの黒水着の胸の内側から、一本の金色の鍵を出してきた
…え、そこ、小物入るの?!
前の破れた黒水着から、ちょっと進化しているらしい
「鍵…やね」
ホシヅキちゃんが、鍵に興味津々な様子で見つめている
彼女のスキルがざわついているんだろうか
「コガラシくんから、王子が食事していた時、傍に置いていた荷物を渡されて…
その中に、これがあったの」
つまり…王子様の遺品……
「セッカちゃん、いつもは王子の部屋にいるじゃない?」
「まあ、そうですね」
「机のそばに、大きめの金庫あるでしょ?多分あれの鍵よ」
「あー…あれですか!」
位置から考えるに、机で何かを書いて、それを仕舞ってたんだろうな
と予想をしていたけど、それが何なのか今までわからなかった
「たぶんあそこには、王子の大事なものが入っているわ」
「み、見ちゃうって事ですか…?」
プライバシーが…と言ってはいられないのは確かだけども
「ええ、王子には申し訳ないけどね」
これでもし、えっちな本とか出てきたらどうしよう
「何か役立つものとか、この場を切り抜ける手掛かりとかがあるかもしれない
…見せてもらいましょう、王子の秘密を」
真剣な顔でつぶやくミソラさん
それとは対照的に、メイドさん三人はちょっと顔を赤くして、わくわくしていた
…皆さん、秘密と聞いて興奮してますね?!
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