53・王子少女は試したい!
「何のつもりだ…」
数日後コガラシは、ついこの間決戦を繰り広げた、頂上の広い空間へと運ばれる
青空の下、そこには大勢の者たちが集められていた
「…オヤジ!」
彼の父親がいたり
「ナギ!…お前たちみんな捕まったのか…」
「不覚です!コガラシ様が出ていった直後に襲われました…」
コガラシと一緒に王子殺害を企てた者たち
彼のお付きのナギ
そして、諜報団員が全員集められている
王子殺害犯とコガラシ、そしてナギさんは縄で縛られていて
大勢の兵士が、団員たちを取り囲むように並んでいる
『はーっはっはっはっはっ!』
私は全員が揃った事を確認すると、彼らの前に出ていく
『諜報団の諸君!集まってもらえたようだね!』
極めて明るく話しかける
一箇所に集められたのが不安になったのか、一人の団員がボクに向かって問いかける
「しゅ、首謀者以外は罪を問わないはずでは…?!」
『もちろん、その約束は守るよ!…ただ、ちょっとだけ訂正させてくれ』
「て、訂正…?」
『詳しく調べると、ボクを殺害しようとした者は、この五人だったそうだね
…首謀者はコガラシくんだけかと思ったら、複数人いた訳だ
流石にこの五人を許すわけにはいかない』
「ああ、そういう…」
私のミスで『首謀者のコガラシくん以外は不問に処す』
と約束してしまっていたので、そこは改め直さないと
「そんな!王子、約束が違うじゃないか!」
捕まった王子殺害犯の一人が、オーバーに悲鳴を上げる
「うっせえ!約束も何も、お前たちは俺たちに取っ捕まったんだ!
投降してねえじゃねえか!」
「自首もせずに、上げ足だけ取って罪から逃げようとするな!」
「ぐううっ…」
団員たちにボロクソに言われて、殺害犯たちは引っ込まざるを得なくなった
『首謀者五人のうち四人は二十年の服役
そして、首謀者の中心人物、コガラシには死罪を言い渡す!』
周りがざわつく
ここで直接、沙汰を言い渡すとは思ってなかったのだろう
「はっ!そうだろうそうだろう!オレが邪魔だから消すんだな!
才能ある、オレがお前らを脅かすのが怖いんだろう!」
コガラシは精いっぱいの虚勢を張って、私に抗議をする
「………」
そんな彼は、白々とした目で周りから見つめられている
お付きのナギだけは『それはわかるけど、今言っても、もうどうしようもない』
という感じで、押し黙って彼を見ている
『キミは常日頃から思ってるんだね、トップには才能あるオレが相応しい、と』
「そうだ!上の奴らは皆、オレを妬んで陥れようとする!」
『…ならば!』
私は腰に下げたナイフを取り出す
そして、首謀者五人と普通の団員たちとの間の空間に、そのナイフを投げ入れた
カラン
乾いた音が響き、皆の注目がその一本に集まる
「…何だこれは……?」
『我こそはと思う者は、そのナイフで自らの腹を刺し、自害する気概を見せよ!
さすれば、首謀者コガラシの死罪を取り消し、四人と同じ服役に変えよう!』
周囲が一気にざわめきはじめた
「な…何のつもりだ?!」
『今まで、キミは団のトップだったんだ、キミが真に人の上に立つ才能があるなら
名乗り出てくれる人も、いるんじゃないのかい?』
…自分で言っておきながら、暴言もいいところである
残りの人生を懸けてもいいほど、彼に心酔してる人間を出せと言っている
「ば、バカヤロウ!下は下で、才能ある俺を妬んでる!こんな申し出を受ける訳が無い!」
『呆れ果てるね…上にも下にも妬まれてるのに、上に立つ才能があるとか、論理が破綻しているよ』
「ぐぐっ……」
能力は確かに大事だけれど、それだけで皆がついてくる訳じゃない
皆を惹きつけるのは、もっと別の何かだ
…その別の何かを、私は王子様から借りている身だ
だからこそ、それの大切さがよくわかる
「お、おい!誰かいないか!このオレを救おうってやつは?!
お前たちのゴミ人生より、オレが生き残るほうがこの世のためになるぞ!」
うろたえ、暴言を吐くコガラシ
「ふざけんな!」
「お前の下につきたいなどと思った事など一度たりともない!」
「吐き気を催す!さっさと死ね!」
そんな彼に団の人間は、誰も命を賭けようとはしない
「お、お前らはどうだ…?!
二十年の服役よりは、死んでオレの役に立った方がいいだろう?!」
「舐めるな!自分の人生に有意義だと思ったから付き合ってやってただけだ!
何を勘違いしてるんだ?!いざとなれば自分が優先に決まってるだろう!」
殺害犯の仲間も、付き合ってられないと彼をののしり始める
そんな中……
「…こ…コガラシ様のため…なら……」
「ナギ?!」
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