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52・王子少女の憤慨

首謀者のコガラシを捕まえた、との一報を、発電所に残る諜報団の方たちに入れる

これで(壁は壊したけど)被害なしに事件を解決できる…と思っていたら

一報を入れた時にはすでに、コガラシ反対派がコガラシ賛成派を制圧していた

彼は証拠を持ってくるなどと言い、発電所を出ていった

その隙を狙って賛成派を抑えたらしい

なかなかにしたたかな諜報団の人たちだった



そして…

夜間の対決から三日ほど過ぎた日、時刻はお昼ごろ

カミギワ山頂上のテントの中には、ガチガチに縛られているコガラシ

その周りを取り囲むように、執事さん、メイドさん三人、ミソラさん、そして私がいる

人払いをしており、今、頂上には他に誰もいない


『…さて』

コガラシに、確認しておかなければならない事がある


『君が陥れた、『彼』について聞いておきたい』

私が『彼』と言っているのは、本当の王子の事だが…そのまま話すわけにはいかない


「なんだ、どういう事だ…?」

「ボクには影武者がいたんだ…君が殺したのはその『彼』だったという訳だ」

自分が本物であると思わせつつ、当時の状況を聞くには、こう言うしかない

…これはもちろん、ミソラさんの台本である


「しかし、あの時はどうして『彼』がいなくなったのかわからなかった

 ボクは一計を案じ、わざと世に出ないことにした

 『彼』の行方不明が、誰かの企みなら、必ず何か仕掛けてくるはずだとね」

「なんだと…?俺が、泳がされていた……?!」

ショックを受けるコガラシ

本当は全然そんな事ないんだけども…ミソラさんの口八丁が上手すぎる


「ボクと長年通じ合った、無二の親友だった…

 どんな最後を迎えたのか、聞かせてくれ」

本当に残念そうに、目を伏せて語る


「どんなも何も、誘い出して殺しただけだ」

「お前が王子として見せていた首、調べたが偽物だとわかったぞ

 少年の首に化粧を加えて、それっぽくしているだけだ」

執事さんが、証拠の不備を指摘する

肉体的に衰えようとも、こういうものは年季の差が出る


「『彼』がもし生きているのなら、ボクはなんとしてもキミからそれを聞き出すだろう

 …それこそ、どんな手段を使おうともだ」

「くっ」

冷たい目で彼を見下ろす

…この演技一つで、彼が喋り始めるかどうかが決まる

極めて冷静に、拷問にかけるなど簡単なんだぞ、といった雰囲気で…


「……オレはフェーダ…『雪』の領主の息子と仲良くなった」

…よし!威圧に押されて話し始めた……!


「上のやつらは、オレたちを見下している、それが許せないと、酒を飲んで語り合った

 上を蹴散らし革命を起こす、そのためにはどうしても邪魔な奴がいる…

 それがオレのオヤジであり、中央の王子だった」

どちらも彼らを見下してなんていないのに…

どうしてそういう方向に曲がってしまったのだろう


「中央と『雪』、仲が良くないのはフェーダからも聞いた」


『『風』が仲を取り持つ秘密の食事会を開こう

 一足飛びには無理かもしれないが、同じ食事をし語り合えば

 わだかまりも徐々に無くなっていくかもしれない』


「そうやって誘い出し、食事に毒を盛った」

全員が息を飲む

平和のために尽力しようとした王子に、なんてことを……!


「失敗したのは、その毒の性質だった

 見た目に分かりにくく毒性は強いが、副作用で強烈に喉が渇くタイプの毒を使ってしまった

 毒を飲んだ奴は、慌てて近くの川に走っていき、そのまま川に飛び込んでしまった

 川の流れは思ったより急で、死体は見つからなかった」

コガラシは淡々と語る

しかし、皆の中では一言一言が、腸が煮えくり返るほどの悪辣さだった


「ただ、あの毒を飲んで生きているはずはない

 墓を荒らして首を手に入れ、それに細工をして王子のように見せた

 流石に証拠が無いと、オヤジも信じないだろうからな」

平然と墓まで荒らしたらしい

…彼の倫理観はどこに行ってしまったのだろうか


「お前が再び世に出てきた時、まさかあの毒をくらっても無事だったのか?!と思ったが

 …そうか、偽物だったのか…そりゃあそうだよな」

自分が騙されたことに対し、自嘲気味に笑う


「警戒心が無さすぎる、こんなチョロくていいのかと思ったからな」




パン!!




私は、彼のあまりな物言いに、思わず平手で顔を叩いてしまった


「……?!」

まさかこんな衝動的な行動に出るとは思わなかったのか、コガラシは茫然としている


『『彼』が誘いに乗ったのは、キミたちを信じたかったからだ!!

 キミだって、父に信頼を裏切られたと思ったから、反抗心が芽生えたのだろう?!

 なぜ自分だけは裏切ってもいい、などと考えることができる?!』

目に涙があふれ、止めることができない

悲しかった

彼の歪んだ反抗心の、犠牲になった王子が

歪んだままでしか生きられなかった彼が

どうして…こうなってしまったのか


「…上に立つべきなのは、真に優秀なオレたちだけだ

 こんな嘘に騙されるような奴は、真に優秀じゃない

 オレたちの踏み台として役に立つべきだ」

そんな下手な言い訳をして、まだ自分が間違っていなかったと主張する


「結局、お前は騙されていないだろう?悔しいが、優秀だったという訳だ」

結論ありきの主張は、もううんざりだった


『…そこまでこじらせているなら仕方ない』

私は涙を手で拭い、彼に向けて宣言する




『キミが真に上に立つべき者かどうか、判断しようじゃないか』

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