51・王子少女は隠してほしい!
キン!キキン!!
月夜に、金属同士がぶつかりあう音が響く
共に飛び道具は投げつくし、ナイフとハーケンの近接戦闘に移っている
右から切るフリをして、左にナイフを持ち換えて一閃
そのフェイントを読んでいたかのように、冷静にハーケンで受け止める
そして、右足で即座に蹴りを加えてくる
「ぐっ?!」
痛みでナイフを落としそうになるが、なんとかこらえる
右手で殴るフリをして、服を掴む
そのまま服を引っ張って、体勢を崩そうとするが、逆に右手をひねられる
「!!」
走る激痛
手を放し、右手を完全に捕まえられる前に抜け出す
コガラシは常に一手先を行かれていた
(なぜだ…?!+5は確かに強いが、元がまだまだ素人のはず)
(総合で考えれば、やつが6レベル、俺が5レベルくらい…!勝てない差じゃない!)
今まで彼は、何かしら相手の優位を取ってから仕掛けている
完全状態の相手と真剣に勝負したことが無い
ありていに言うと『ピンチに弱い』のだ
「どうしたんや?!へばっとるで!」
ハーケンで切りつけられる、後ろへ下がる
下がった隙に、刺さったハーケンを手に取られ、また投げられる
それを避けると、避けた方向に移動され、また切りつけられる
「くそっ!くそくそくそくそっ!!なぜだなぜだなぜだなぜだ?!
俺には才能がある!!なぜ思うようにいかない!なぜ誰も認めないんだ?!」
「……」
ホシヅキは憐れむような瞳で彼を見つめる
まるで、彼が重大な何かを見落としているかのように
「クソ…!対人戦闘ならお前の方が強いようだな…!」
自分の一手に、確実に二手を返される
体力のあるうちは、それでも強引に躱し続けていたが、もう限界だった
「…だが!」
目的はこいつに勝つことじゃない
この位置が欲しかった……!
何度となく切り合った結果、ホシヅキはテントから離れ、コガラシはテントに近くなった
奴さえ殺せば、後は逃げきればいい!
「!!」
テントに再び入り、ベッドで眠っている銀髪王子に飛びかかる
ナイフを大きく振りかぶり、体重を乗せ…
「獲った!」
全力の一撃を、ベッドに差し込んだ
…つもりだった
彼の一撃の衝撃で、ベッドから、銀髪のカツラをかぶった人形の首が、ころりと落ちる
「…は?!」
さっきはきちんと寝ていたはず…顔も見た……!
いつの間にこんな……
思考を巡らせるが、それはすぐに中断される
ベッドとその周りの地面がが沈み込み
その上に乗っていた彼も、もちろん落下していく
「う、うぉああああああああああああああああ??!」
予め、落とし穴トラップを作っておいて、板で穴を覆い、その上に寝る
一旦彼が外に出た隙に、偽物の人形を置いて、板を外してトラップが作動するようにする
王子がトラップの上に寝てるわけがない、さっきと同じ状態で寝てるはず
という意識を利用したトリックだった
「よーしよし、やったった~♪」
小躍りして喜ぶホシヅキさん
私は作戦が成功したことを確信して、隠れていた茂みから表に出る
「うちとセッカちゃんとの、愛の共同作業、成功や!」
私に向かってピースをするホシヅキさん
そんな彼女を、私は正面から抱きしめる
「ふぇっ…?」
「…ありがとうございます
怖かったでしょうに、無理に明るく振る舞って…」
「え?い、いや、そんなことは……」
抱きしめた身体は、小刻みに震えているのがわかる
「かなわんなぁ…うちの王子様には」
笑顔になったホシヅキさんに、頭を撫でられる
ちょっと照れくさい
「…相手の出方に応じて、対応策は考えてたけど…二番目にいい結果だったわね」
隠れていたミソラさんも出てくる
「一、諜報団の反発に押し負けて、コガラシは取っつかまる
二、本物の王子かどうかを確認しに、もしくは始末しに陣まで来る
三、諜報団の反発を抑えることにある程度成功、とりあえず全員で発電所を離れる
四、トリックを見抜いてまだまだ居座る…やったっけ?ミソラさんの予想」
「そうそう、それよ」
おかげで、きちんと対策を立てられた
さすが闇の軍師だった
私は、偽隕石降らせてびっくりさせたらすごい事に…までしか考えてなかった
「そして、被害もなくコガラシを捕まえられたのは、あなたのおかげよ」
「いやー、てれるわぁ」
ぽりぽりと頭をかくホシヅキさん
…今気づいたけど、今のホシヅキさんの格好だと
何か動作するたびに、大きいお胸がほいほい揺れる
なんでか私までドキドキしてしまう
「兵士の皆さんは出番が無かったですけど…無い方がいいですよね」
「そりゃあそうね」
「まあまあ、罠とか魔法陣とか、手伝ってもろたんやし、ええんちゃう?」
「後で、落ちた彼の引き上げもお願いしなきゃね」
今回は『コガラシをできるだけ穏便に捕らえる』という名目の元
兵士さんたちには、罠づくりをいっぱい協力してもらった
しんどい力仕事、本当に感謝
「それはそうと、その…えっちくないですか?その格好」
私はホシヅキさんの、無駄にあちこち出ているセクシー紫衣装について言及した
「これはえっちさに敵が戸惑ってる隙をつくっていう格好やから、正解やで」
「そ、そうなんですね…」
無駄じゃなかった…計算されてるえっちさらしい
コガラシくんも動きが鈍ったりしてたのだろうか…
この格好で迫られたら、私は無理かもしれない
「うっへっへ~、うちも直当てや~」
「ちょ、や、やめてください…」
だから無理だって言ってるのに…!
ドキドキしてる私が面白くなったのか、ミソラさんのように、胸を腕に押し当ててくる
「…あー!」
それを見て怒りだすミソラさん
「直当てはあたしだけの特権だったのに!」
いや、特権って言うか…そもそも半裸で生活してるのが、ミソラさんだけだったんですよ!?
まさか半裸人が増えるとは思ってなかったですよぉ…
「しゃあないやん、これがうちのユニークスキルを、最大限生かす格好らしいし?」
ミソラさんはあまり自覚が無いけど、ホシヅキさんは自覚的にえっちさを振りまくことができる
…これは大きな違いかもしれない
「じゃああたしは背中に行くわ!」
「あ、そっちの方が当たる面積大きいやん!ずるいわぁ」
「や、やめ…だめですーっ!」
あちこち押し当てられて、真っ赤になる私
私はまた当分、迫られてドキドキする生活から、逃げられそうもなかった
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