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48・王子少女の幻影隕石(ファントムメテオ)

沢山の風車からのケーブルが、一斉に集まってくる、発電所内部

ここは、壁にも床にも、様々なところに、ケーブルが通っている

とても歩きにくく、あまり人が住みたい場所ではないだろう

ここから、街へとつながるケーブルを伝って、電気が流れていくのだが…


今、この発電所は、蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた


「ば、ばかな…!ばかなばかなばかなばかな!!」

眼鏡の青年が驚愕の顔をして、ばかなを繰り返し叫んでいる


「あ、ありえんだろう?!王子が生きているわけが……!」

「しかし団長…これは間違いなく『隕石落とし』!やつにしかできない魔法です!」

団員の一人が、爆音と共に崩れ落ちた防壁を指さす

何をどう言おうと、この事実だけは否定のしようが無かった


「ほ、他にいたんだろ?!ユニークスキル持ちのやつが!」

「そんな都合のいい話があるか!」

ユニークスキルは名前の通り、個人によって違うものだ

誰がどんなスキルを持っていてもおかしくない

しかし、隕石を降らせる程の強力なスキル持ちは、ほとんどいない

一度でも使えば、それは大きく人々に知れ渡り、噂にもなる

正確には、王子の使っていたのは隕石『魔法』なので

その魔法を極めれば、誰にでも使用可能ではあるのだが…

魔法を極められる人間など、強力なユニークスキル持ちよりももっと少ないし

彼らがそんなことを知る由もなかった


「俺たちを騙したんだな!行方不明の王子が帰って来たって

 話が出たときから、おかしいと思ったんだ!」

コガラシに批難を浴びせる団員たち

それに腹を立てた、お付きのナギが彼らを叱り飛ばす


「笑止です!コガラシ様を信頼してないから、そのように慌てふためくのです!」

「信頼なんてしてるわけないだろう!?

 そもそも勝手に王子を殺しておいて、オレに従えとか虫が良すぎるんだよ!」

「なっ…」

コガラシを敬愛しているナギは、周りがそうではなかった事を、この時になって知った


「『風』のためにしぶしぶ手伝ってたのに、なんて言い草だ!」

「やはり領主様の方が正しかった!」

「俺は抜けるぞ!もうこんな奴らとやってられるか!」

「王子様が慈悲を持って手加減してくれている今のうちだ!」

団は二つの派閥に分かれようとしていた

一つは、王子を殺害したコガラシ含む五人とお付きのナギ

もう一つは、元々中央とも仲が良かった、昔からの諜報団員たち

人数の差はおよそ四十人

争えば、どちらが勝つかは明らかである


「おい、手紙が入ってたぞ!」

「なんだ?!」

「クロカゼ殿からだ!」

拡声器の声が届いていなかった場合のために、手紙も用意されている


「なに?!お前らそれを寄越せ!」

「誰が渡すかよ!おい、読んでくれ!」

手紙を奪おうとするコガラシと手紙を守ろうとする団員で、衝突が発生する

コガラシの仲間は、どうすればいいのかオロオロするだけ

手紙を持ってきた団員が、そのまま手紙を広げ、中身を読み上げる


「…

『団がこのような危機に迫っているとは知らず、助けに行けなかった事、大変申し訳ない』

『責任の一端は私にもある』

『今、私クロカゼは、王子の執事をやっている』

『王子は隕石魔法で、団の立てこもっている発電所ごと、破壊するつもりだ』

『その前に、皆、そこから逃げ出してほしい』

『私から王子に、団員は悪くない、どうか寛大なご処置を…と進言し

 今、領主様の元に戻れば、首謀者以外の罪は問わないと、お約束頂けた』

『もし、王子が約束を違えれば、私は団の皆に首を差し出す覚悟だ』

『どうか、命を大事にしてほしい…元団長からの、最後の頼みだ』

 …」


「クロカゼ殿…!」

「退いたとはいえ、やはり我らの団長だ…!」

「こんな、俺たちの事をなんとも思ってないような奴に、ついてけるはずがねえ!」

普段の行いが、露骨に現れる

もし、彼が団員を普段から重んじていれば、もう少し受け取られ方は変わったかもしれない


「あんのクソロートル…!よくもまあ、いけしゃあしゃあと…!」

王子が偽物だと思っているコガラシには、憤慨ものの文章

だが、団員には響く言葉だった

形勢はどんどんと不利になっていく


「待て!オレたちが王子を殺した、それは間違いない!間違いないんだ!」

「嘘も大概にしやがれ!」

「じゃあ、この隕石は何なんだよ?!

 五日後にはコレを巨大にしたやつが降ってくるんだろう?!」

「そ、それは…」

答えられるはずがない

つい最近まで、世に全く出てこなかった『花』の娘の、ユニークスキルを使ったトリック

名探偵が匙を投げるレベルの、超難問だった


「み…三日だ!本物の王子かどうか、三日で調べて戻ってくる!それまで大人しくしてろ!」

「証拠がなけりゃ、どうとでも言えるだろそんなもん!」

「証拠も持ってくる!それで納得できなきゃ四日目で去れ!ただそれまでは待て!」

「……」

黙る団員達

コガラシの提案に乗るかどうか、少しの間考えたが


「……日数的に、乗らない意味は特に無いな…

 よし、隕石を超える証拠を、出せるなら出してみろ」

「ああ」

ふぅ、とため息をつくコガラシ

なんとか押しとどめる事は成功したが、三日で証拠を出さなくてはいけなくなった

一気に詰みに近い状況…ここからどうするか

彼の真の実力が試される時だった

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