47・王子少女はおとしたい!
空を自由に飛ぶ
それはいつでも人類の夢で、憧れである
店長さんの『飛行』魔法で、薄く輝いた私たち
空を、上へ上へと昇っていく
雲を抜け、その上空へ
「わぁ…」
絶景だった
白い絨毯がどこまでも広がる、青く澄んだ世界
おとぎの国にでも来たかのような感覚だった
(腕にしてあるコンパスを見て、そこから南東よ)
ミソラさんが私たちに『グループチャット』で語りかける
(店長さんの移動速度なら、そこから南東へ一時間ね)
(便利だねぇ、このユニークスキル)
(でしょー?闇の軍師向きだと思うのよね!)
(あはは、それはどうかなぁ?軍師と言いつつ『みーさん』結構脳筋だったし)
(それは…そうかもだけどぉ…)
(大丈夫ですよ!軍師っぽいのはミソラさんの方ですから!)
(そうよね!)
でも正直、闇っぽくはない
(一時間たったら連絡するわ)
(了解)
私たちは、店長さんの動かす通り、ふわふわと浮きながら雲の上を進んでいく
「うーん…うでたてふせなら、できるかな?」
岩の上で手を付けたまま寝そべっているカグヤちゃん
早速飽きてきたらしく、そのままできるトレーニングをしようとしている
「や、やめた方がいいよ?上空は空気が薄いんだ
魔法で保護されてるから、今は薄さがわからないだろうけど
激しい運動したらどうなるかまでは把握してないんだ」
「くうき…うすい……
おもいだした!こうちトレーニングってやつだね!」
トレーニングの知識から状況を把握するカグヤちゃん
「たしかに、しろうとがてをだすものじゃないよね、がまんするよ」
「ふぅ」
「こんどせんもんかのひとと、いっしょにやろうね!」
「僕はやらないからね?!」
そんな会話をしながら時間をかけ、進んでいく私たち
………
……
…
(今が時間よ!)
合図を受け店長さんが移動をストップする
さて、ここで場所はあってるのかどうか…
(セッカちゃん、雲を潜って確認してみて)
(お願いします、店長さん)
(うん)
私だけが、雲の下にすいー、と移動していく
雲を抜けた先、下に見えるのは……
大きな風車がいくつも並ぶ平地、その手前にある砦のような建物
話に聞いていた発電所に違いなかった
そして、ちょうど砦…発電所を囲む防壁の上に、私たちは浮いているようだった
(このあたり…ですね、ばっちりです!)
(よし!計算通りね!)
確認をしたのち、私は雲の上に再び移動させてもらう
偶然にも一発で、目標の上まで来ていた
「セッカちゃんが合図をしたら手を放して
そしたら、カグヤちゃんと大岩にかかってる魔法が
カグヤちゃんだけにかかるようになるから」
「うんうん」
間違ってカグヤちゃんも落ちたら大変だ
ここは慎重に、再度確認をする
「じゃあ、いきますよ……
3・2・1………はいっ!」
「ほいっ!」
私の合図とともに、大岩からカグヤちゃんの手が離される
重力がよみがえった大岩は、雲を突き抜け、スピードを加速度的に上げながら落ちていき…
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
雲の上なのに、信じられないくらい大きな音がした
…これは確実に命中したはず
(北東に戻って!)
コンパスを頼りに、私たちはまた北東へとふわふわ移動する
そして、十分ぐらい移動したところで、私は二人とお別れ
「じゃあ、二人はこのまま森に戻って、アカツキさんと馬車に乗ってください」
「セッカちゃんは?」
「私は…挑発してきます!」
ばさっ!
背負った落下傘を用いて地上へと落ちていく
眼下には、予定通り馬を用意して待機していたホシヅキちゃん
「はー…地上に舞い降りる王子様、かっこええなぁ」
「い、今は恥ずかしい話はやめときましょう!」
「はいな~」
着地した私は、馬に乗ってホシヅキちゃんと共に、発電所が見える位置まで移動する
…ちなみに、私が馬に乗れるようになったのは、去年の事である
練習しておいてよかった…人生、何が功を奏するかわからないなぁ
「うわぁ……」
移動した先で見えたのは…発電所の防壁
その一角が、ものの見事に崩れている様子だった
大砲なら数十発は撃ち込まないと、あんなには崩れないだろう
重力すごい…
「呆けてる場合ちゃうよ、これを」
「そ、そうでした」
三角錐の形の古代マジックアイテムを手渡される
これは『電気拡声器』と言って、小さい方から話しかければ、声を大きくできる代物だ
最初が肝心、私は思いっきり声を張り上げ…
『『『はーっはっはっはっはっはっはっ!』』』
う、うるさっ?!耳がキーンってなる…
私は、声の大きさ調節ダイヤルを下げて、発電所の内部に向けて、次の言葉を喋る
『隕石の威力を調整するのに苦労したよ!
脅しで死んでもらっては困るからね!』
内部の反応はわからないが、多分届いているはず…
私は次々と『王子としての言葉』を、送り続ける
『何やら、ボクを殺したなどと嘯いているようだね!
詐欺師に騙されている諜報団『フウマ』のみなさんが、実に哀れだ!』
『今なら、首謀者のコガラシくん以外は不問に処す!大人しく投降したまえ!』
『カミギワ山にて五日だけ待つ!五日を過ぎれば、発電所とキミたちの命は無いものと思え!』
『よりよい返事を期待してるよ!』
『はーっはっはっはっはっはっはっ!!』
…よし、言うだけ全部言った!
内部から人が出てきたので、私たちは急いで馬を走らせて、その場から離れた
「いうたったなぁ」
「ええ!いうたりました!」
次は相手の出方次第!カミギワ山で様子を見守ります!
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