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46・王子少女は化けて出たい!

一周して、私たちは『風』の領主の館へと戻って来た


『陣を構えたい』

「え?」

私は領主さんに向かい、真剣な顔で告げた

ミソラさんは、テーブルにこのあたりの地図を広げる


「発電所から東北へ向かうと…山があるだろう?そこに兵を集めたい」

「カミギワ山にですか?」

「そうそう、そこよ」

しばらく考えていたが、やがて領主は気づく


「や、やるのですね……!こうなった以上、仕方ありませぬ

 遺産が壊れようとも、息子もろとも……」

隕石王子が本気となれば、それはつまり

隕石魔法でもろともに破壊し、残党を集めた兵で処分するやり方だろう


「責任は取ります、処分はいかようにも」

「ま、まてまて…ボクはそんなに鬼じゃない」

覚悟の決まった領主さんを、私は宥める

そういう殲滅のようなやり方は、できる限り取りたくない


「基本、無傷で取り返すことを前提に、作戦を考えている

『風』の技術は貴重だ…これが失われれば、百年の損失になるだろう」

「で…できるのですか?」

「作戦が最高に上手くいけば、息子さんも引っ張り出せる」

向こうがどう傾くか次第、膠着状態にならなければ…


「最悪の可能性も、もちろんあるが…」

「機会をいただけるだけで十分です」

領主さんは、私に向かって深々とお辞儀をする


「秘密裏に準備を進めるので、怪しいそぶりは見せないように

 こちらの兵だけで準備を進めたいが…大丈夫か?」

「王子は『風』の諜報団の心配をしてるのよ」

「確かに、『風』の兵士から諜報団へ、計画が漏れ出てしまうかもですな…了解しました」

中央の兵が来る事は、あらかじめ言っておかないと、揉め事が発生した時大変である

これは、ミソラさんが指摘してくれた事だった


「準備が済み次第、作戦に移る

 いざという時に、信頼できる者は動かせるように、そちらも準備をしておいてくれ」

「ははっ」

領主さんとの相談も、これで終わり

後は本当に、作戦の出来次第

運命はどう転ぶか…



………

……



長い準備の末に、ようやく作戦が開始される

ほ…本当に長かった

王子は、こんなに人の手を借りまくって、ようやく実現できそうな事を、あっさりこなせる

やはりすごいと言わざるを得ない


中央から集めた兵たちには、カミギワ山で待機してもらっている

今日の天気は曇り、空の様子が確認しにくい状況

…今、この時が作戦実行のチャンス


私とミソラさん、そしてカグヤちゃんは今、カミギワ山からそこそこ離れた森の中

見るからに巨大な大岩の傍で待機している


半時間ほど経った頃、森の入り口に近い方から、人影が二つ、近づいてきた


「お待たせしました!」

メイドのアカツキさんと、彼女に連れられてきたのは…貸本屋の店長さん


「てんちゃん!おひさしぶりだね!」

「て…てんちゃん?!」

変わったあだ名をつけられて、驚く店長さん


「ま、まあ、呼ばれ方は何でもいいか」

「久しぶりだね…まさか、また一緒に作業することになるとは、思わなかったよ」

「わたしも!おそろい!」

カグヤちゃんはおそろいが好きなようだ

…私も好きだけどね

腕に巻いていた包帯は、残念ながら不要になったので

王子の部屋の引き出しにしまってある


「ここはいっぱつ、おそろいサイドチェストで、きあいいれよう!」

「急にポージングを要求しないでくれるかな?!」

「だめ…?」

上目遣いで見つめるカグヤちゃん

そうすると年上の人が動いてくれやすくなる

…わかってるのか天然なのか……

わかってたらかなりのやり手だ


「わ、わかったよ、やるから…」

「ありがとー」

カグヤちゃんは輝く笑顔でお礼を言う

こう、この表情に大人は弱いんだよね


「せーの…ふぬんっ!」

「ふ、ふぬんっ!」

筋肉を強調するポーズをとるカグヤちゃん

それを見てマネする店長さん

…残念ながら、カグヤちゃんは体質なのか、筋肉がついてるように見えないし

店長さんは筋肉なんてつける気すらない

二人とも、ただただかわいいだけである

…あ、店長さんがちょっとだけ赤くなってる


「じゃあまあ、作戦に移りましょうか」

ミソラさんが、なんとも言えない雰囲気を察して、次へ促してくれた


「おーっ」

「そ、そうだね」

子供に振り回されるのに慣れてない店長さんは、ちょっとほっとした雰囲気


「手順の確認をするわよ」

こほん、と一つ咳をして

ミソラさんは、ここに集まるまでにしてきた説明を、もう一度する


「まず…カグヤが、この大岩に触れて、重さを軽くする」

「まかせて!」

森にギリギリ隠してはいるが、この大岩は三十トンはある巨大なものだ

これをどうにかできるユニークスキル…やはりすごいと言わざるを得ない


「で、店主さんが『飛行』の魔法をかけて

 大岩と店主さん、カグヤ、セッカちゃんは一緒に空へ」

「言われるまで絶対、手を放しちゃだめだからね

『飛行』の重量限界は合計五百kgだからね」

「だいじょーぶだよ!」

店長さんの心配もわかるけど、ここはまあ、信じるしかない


「僕達は、発電所の上空まで行き

 セッカちゃんの指示で、大岩を発電所の、人のいない防壁に落とす」


「命中を見届けたら、セッカちゃんは落下傘で地上へ、二人は雲にまぎれながら帰る」


「……ごくりっ」

カグヤちゃん、口でごくりって言った


「王子が偽物だと思っていても…隕石が降って来たら、考え直さざるを得ません」

現在に蘇った古の魔法『隕石落とし』

彼にしか使える者はいない、隕石王子の代名詞を、私たちで偽装する



「作戦名、『偽・メテオストライク』発動です…!」



卑劣な暗殺者たちに、隕石王子の亡霊を見せてやります!

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