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45/108

45・王子少女は雇いたい!

時間を少しさかのぼり、私たちが合流する一日前、『花』の領地での事


「大変、申し訳ありませんでした!」

人のいない午前中、いつもの貸本屋で

私は店長さんに向かって全力で謝っていた


「え、な…ど、どうしたんだい?」

頭を下げる私に、何が何だかわからないという感じの店長さん


「えっとね…店主さん、ややこしい話なんだけど聞いてくれるかしら?」

一緒に来たミソラさんが、なぜ謝ってるかを説明してくれる

…お願いします、ミソラさん

自分で説明すると、かえってややこしくなりそうで…


「いいよ、今の時間はお客さん誰もいないし」

店長さんもにこやかに話を聞いてくれる


「まず、王子が行方不明になってたのはご存じ?」

「ああ、数か月いなくなってたんだよね、風の噂で聞いたよ」

「国王は病気で伏せっているし、大変だったの」

「そりゃあまあ、困るよね」

「で、このままでは国の政治がおぼつかないから、影武者を立てることにしたのよ」

「……うん?」

店長さんの顔が、なんだか話が違うぞ、という感じになってきた


「それで…偶然、王子に顔がそっくりだった、このセッカちゃんが影武者になったの」

「え」

「店長さんの言う『お忍びの王女様』シチュが魅力的で

 つい余計な嘘をついてしまいました、ごめんなさい!」

だってみんな『実は王女様だったんだね』って言うし!

そんなフリしてみたくなっちゃったんですよぉ…


「そ、そうだったんだね…

 確かに、王女様の気品とか、全く感じないもんなぁ…」

ぶふっ…い、いやまあ、そうでしょうそうでしょう

私は普通の村娘Aですもん


「セッカちゃんもそういうのに憧れる、普通の女の子だった訳だ

 かわいいところあるじゃない」

「は、はぅ…」

おでこをつん、と人差し指で軽く触られて、思わず赤くなってしまう


「わわ…店主さんダメよ、セッカちゃん誘惑しちゃ」

私は、ミソラさんにまた腕をぎゅーと掴まれる


「そ、そんなつもりじゃないよ」

店長さんは手をぶんぶんと振って、ナンパじゃないと否定した

…ミソラさんは独占欲が強い気がする


「まあ、それはわかったよ

 セッカちゃんが大変な立場なのは変わらないし、気にしないよ」

「あ、ありがとうございます!」

店長さんからのお許しが出て、ほっとする私



「…で、それだけじゃないんだよね?」

「話が早くて助かるわ」

にっ、と笑う店長さんに、笑顔で返すミソラさん

おおお、今の雰囲気いいですね!大人って感じで!


…いや、いけないいけない、つい一般村娘の目線に戻りそうになった

大切な頼みごとがあるんだった


「今、ある任務のために、『飛行』(フライト)の魔法を使える人間を探してるの」

「そうなんです」

作戦に必要なキーパーソン、できれば『花』にいるうちに見つけておきたい


「なるほど…『飛行』ね」

「意外と『飛行』を使える人物が見当たらなくて

 魔法学校卒業生の店主さんなら、心当たりがあるんじゃないかと…」

「心当たりというか…僕が使えるよ」

「ほ、ホントですか?!」

「ああ」

もし、店長さんが来てくれるならありがたい…

カグヤちゃんの事も知ってるし


「『飛行』っていうのはね、体内魔力が『風』の人間じゃないと、習得が難しいんだ

 魔法学校に通って、魔法の使い方を学んでいて

 しかも『風』の魔力持ちは、なかなかいないよ」

「…そうだったのね」

魔法は、ユニークスキルに近いけれど

ユニークと違い、お金さえ何とかなれば、学校で勉強して習得できるものである

ただ、そんな細かい習得難易度の違いがあるとは知らなかった


「この前、片付け手伝ってもらった恩もあるしね、協力するよ」

店長さんはあっさりと、手伝ってくれると約束してくれた


「本当に、ありがとうございます!」

「お礼は何がいいかしら」

こういう頼み事した時のお礼って、相場とかあるんだろうか?

ぜひ、店長さんには高めの報酬を、お支払いしてあげて欲しいけども…


「…お返しだから何もいらない……ってカッコつけたいとこではあったけど

 こんなチャンスはもう無いかもだから聞いてみるよ」

「どうぞ」

店長さん、何か普通とは違う物が欲しい…?


「……国立図書館に入ってみたいんだ…どうかな?」

国立図書館……?

あ、確か、ミソラさんが補佐官のお仕事する時

資料探しに使ってる場所だ…!

お城の隣に建ってた、あの平べったい建物…!


「国家機密の収められた部分は無理だけど…それ以外なら」

ミソラさんは少し考えて…まあいいか、って感じで答える


「ありがとう!上流貴族か、役職のある人物しか入れないって聞いて

 ずっと気になってたんだ!」

「ふふっ、店主さんかなりの本の虫ね」

「いやあ、ははは」

なごやかに笑う店長さんとミソラさん

意外と本質は似てるのかもしれない


ともかくも、店長さんに本当のことを言えたし、作戦にもつきあってもらえそうでよかった

私はほっ、と胸をなでおろすのだった

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