44・王子少女は目にもの見せたい!
コガラシは執事の目の前に立ち
腕を組み、見下ろすような感じで語りかける
「噂は聞いているぞ
偽物の王子を担ぎ上げてまで、俺たちの邪魔をするか」
「愚の骨頂です!」
おおよその予想通りに、彼は王子を偽物だと断言する
「ふっ、そうか…お前は偽物だと思っているのか……」
実際偽物なのだが、もしかしたら…という
疑念を生ませるためにハッタリをかます
「な、何がおかしい!奴は俺が始末した!それは間違いない!」
「天誅です!」
少し焦ったような表情をするコガラシ
(……?)
多少の違和感はあったが…しかし、すぐに居直って、執事を威圧してくる
「オレはフレーダのように、無駄に反抗心を煽ることはしないぞ
ピンポイントで首を絞め、追い詰め、領主の座に収まる」
「…何が目的だ」
「オレは団長になり領主になり、存分に力を発揮したいだけだ
力のない奴が上に立つなど、オレには我慢がならない」
「凡愚の所業です!」
力が正義であり、力なき者に正義は語れない
コガラシはそういう思想の人物のようだった
(もっと早く見抜けておけば…)
後悔をする執事
しかし、元々そういう気質があったのか、『雪』と仲良くするうちに
そういう思想にかぶれていったのかはわからない
「…そのためには、戦を仕掛けてもよいと?」
「戦になれば、実力のあるもののみが選別される
力のない者がのさばってる今の現状は、一度リセットしなければならない」
「感涙です!新しい世を切り開くコガラシ殿!」
「ふふふ、そうだろうそうだろう」
持ち上げられ、語りに熱が入るコガラシ
明らかに悪い傾向だった
「諜報団を掌握しきったら、その偽物の王子も抹殺してやる」
いやらしい顔で執事を睨む
「今度は誤魔化しも効かないように、演説の最中とかにするかなぁ!」
「そのような事、させ…っ」
そう言いかけたところで、彼は執事の裏に回り込み、メイドたちを跳ねのける
「きゃっ?!」
「わあっ?!」
そして、執事の痛めている腰に、拳を一発入れる
「な……ぐあああああああっ!」
「ははは、今のオレにじいさんが勝てる訳無いだろう?」
信じられないほどの激痛に、悶絶する執事
「じいさんはオレを選ばなかったことを、後悔しながら生き続ける役目がある」
「流石です!コガラシ殿の足運び、参考になります!」
「せいぜい長生きしろ!絶望しながらだがな!」
「ぐ、は…はあっ……」
執事が悶えているのを見て満足したのか、コガラシは部屋を出ていく
それについていくナギ
「ははははははっ!」
勝利の高笑いが、宿に響き渡る
…後で何があったと、執事たちは宿の主人に問われることになった
それから二日後、『風』の街の郊外で再び六人は合流する
「そんな事があったんですか…」
馬車の中で、私がいない間の事件を聞いて、なんとも言えない気持ちになった
執事さんは何も悪くないのに…
「悔しいです…何も言い返せないなんて……!」
「パパがかわいそうよ」
「ごめん、うちのいない間に…」
「気にする必要は無い」
執事さんは再会した娘…ホシヅキちゃんの頭を撫でて、優しく話しかける
やっぱり親子は、これぐらい仲がいい方がいいと、私は思う
「それより、そちらは上手くいきましたか?」
「おおむね大丈夫よ、後は『風』の領主さんに許可を取るだけ」
領主さんには、ある土地を秘密裏に使うための許可をいただきたかった
秘密裏に…というのは、情報が漏れてしまうと効果が無くなるからだ
大規模な計画になるし、失敗は許されない
ただ、計画が上手くいけば、状況は大きく有利に傾く…はず
「調子ぶっこいてる若造に、目にもの見せてやろうじゃない…!」
「おお、それはそれは、頼もしいですな」
「ミソラさんも若いですけどね…!」
「それは言いっこ無しよ…!」
ミソラさんがハッパをかけ、ようやく笑顔を見せてくれる執事さん
決戦は…もうすぐそこ……!
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