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42・王子少女は見せたくない!

私たちは馬を飛ばして、一路『花』の領主の元へ

あの時壊れた建物や塔は、徐々に復旧していってるようだった

また貸本屋に行きたいな…と思うが、今回はあまり時間をかける訳にもいかない

ホシヅキちゃんの操る馬車に乗って、領主の館に到着


「はいよー!やでー」

…メイドさんって、結構何でもできるのかな?

ホシヅキちゃんが頑張ってるだけ?


「おお、帰って来たのか」

「顔を見せに来てくれて嬉しいわ」

「ただいま、父さん、母さん」

馬車から降りるところで、『花』の領主さんと奥さんが出迎えてくれる


「…本当はゆっくりしたいのだけど…」

「おお、王子様もご一緒でしたか」

『お久しぶりです、お二人とも』

両者でお辞儀をし合う

初めて会った時とは違い、二人とも憑き物が落ちたような、すっきりとした顔をしていて

この平和は守らなければ…と改めて思わせてくれた


「急用でしょうか?王子様の頼みならば、できる限り答えますが」 

「えっとね…詳しくはまだ言えないんだけど」

ミソラさんは、ちょっとバツの悪そうな顔をして話す


「カグヤの力を借りたいの」



………

……



『花』の領主さんは何も聞かず、カグヤちゃんと話す機会を与えてくれた

とてもありがたい事である


今いるのは、前も来た応接室

中には私とミソラさんとカグヤちゃん

外でホシヅキさんに、見張りをお願いしている

これから話す内容は、特に聞かれてはまずいからだ


「いんせきおーじさま、おひさしぶりです」

フリフリのかわいいスカートの端を、手で持ち上げてお辞儀をする

お嬢様っぽい挨拶に、少し感心する

ミソラさんは、いつも黒水着でスカート履いてないから

こういうの見る機会無いんだよね…


『…今日は大事なことを話しに来たんだ』

「なーに?」

誤魔化し続けても、お願いは聞いてくれるかもしれない

でも、それは流石に、誠実じゃない気がする


『実はボクは…いや、私は、王子じゃないんです」

「…ほえ?」

正体を明かし、許しをもらってからお願いをする

周りを騙し続けている私の、譲れない誠実さのラインだった


「私は、王子に顔が似てるだけの、ヒルガオ村の少女です

 行方不明になった王子様の、代理を務めてます」

たとえ小さな子であっても、正体をばらすのは怖い…

どう反応が返ってくるか、わからないから


「騙すことになって申し訳ありません」

深々と頭を下げる

カグヤちゃんはそんな私を、不思議そうな顔をして見つめていた


「にせもの……?でも、かっこいいよ?」

「ほ、ほら、胸だってありますし……」

仕方なしに、いつかのミソラさんの時と同じように、上着を脱いで胸を見せる


「ふとってる人もそんなかんじだよ?」

「そ、それはそうなんですが」

…太ってる人と見分けがつかないくらいの、慎ましやかな胸ですみません

ホシヅキちゃんくらい大きかったらねー!私もねー!

男装が大変になるだけか…


「ねえねえ…おとこのひとって、あれがはえてるんだよね?」

「…え?」

純粋な瞳で、あれの話をしだすカグヤちゃん


「あれがはえてなかったら、おんなのひとでまちがいないよね!」

「ちょ、ちょっと…?!」

よ…要するに、見せろと…?!

王子様じゃない証として、ズボンの下を見たいとおっしゃる訳ですか…?!

ものすごく恥ずかしい事をさらりと……!


私がとまどってる様子を、ミソラさんは、顔を赤くしながらも

興味津々な様子でこちらを見ている

『花』の領主さん!あなたの娘さんたちの羞恥心、どうなってるんですか?!


で、でも、それで納得してもらえるなら……!


「わかりました…見せます」

恥を忍んで、ズボンを脱ぎます……!


「……」

「あ、ミソラさんはダメですよ!ダメダメです!

 あっち向いててください!」

「…しょうがないわね」

しぶしぶながら後ろを向くミソラさん


よ、よし…じゃあ……私、脱ぎます……!

王子のズボンを脱いで下着になり、カグヤちゃんに見せる


「ど、どうです…?」

「なかまでみせてほしいな」

「な、なかを?!」

「……」

「…わ、わかりましたあ……」

泣きそうである

私は何で幼女に、こんなことをしているのだろうか

この現場を事情の知らない誰かが見たら、間違いなくしょっぴかれるだろう


「…うん、おんなのひとでまちがいないね!」

よ、ようやく許可がいただけた

私は素早く下着とズボンを戻し、王子スタイルに戻る


「ど、どうたったのカグヤ」

「ミソラさん?!」

何聞いてるんですかミソラさん?!


「なにもはえてなかったよ!」

「カグヤちゃん?!」

カグヤちゃんも答えないで下さいよ?!


「おーじさまはほんものじゃなかったんだね」

実は王子様は王女様だったんだね!ってまた言い出されたらどうしようかと思ったけど

カグヤちゃんはそんな事はないっぽい…よかった


「…でもね

 ほんものかにせものかなんて、どうでもいいの、じゅうようなことじゃない」

カグヤちゃんは、人差し指を横に振り、そして…


「わたしのためにがんばってくれたのは…

 わたしをたすけてくれたのは…あなたなんだから」

私の手を取り、真っすぐにこちらを見つめてきた

彼女の瞳は優しく、輝いていて…


「カグヤちゃん……」

偽物か本物かよりも、行動で私を信じる

彼女にそう言ってもらえたのだ

人を騙すことを気にしていた私にとって、それは涙が出る程嬉しい言葉だった



「…ん?じゃあ、別に見せなくてもよくなかったですか?!」

「じゅんすいなこうきしんです、ごめんね」

「ほあーーーーーーー?!」

や、やられたっ…

まんまと恥ずかしいところを見られてしまった……

闇の軍師、この子の方が向いてないですか?!


「あ、そうだ…ホントのお名前は?」

カグヤちゃんにそう聞かれて、自分の名前を伝えてなかったことに気づく


「そうでした…私の本名はセッカと言います」

「カグヤだよ、あらためてよろしくね、セッカさん!」

カグヤちゃんから差し出された手を取り、固い握手を交わす

さっき見られたせいもあって、握手だけなのにドキドキする


「おーじしょうじょさん、ってよぶのもいいかもね?」

「王子少女…?」

「あはは、面白いあだ名ね」

四文字で矛盾してる?!

今の私には相応しいかもですけど


「あ、でも、お父さんたちには、できれば秘密に…」

「わかってるよ!ふたりだけのひみつだね!」

「残念ながらあたしも知ってるわよカグヤ」

「ふたりだけのひみつがふたつに…おそろいだね!」

「そうね」

見習いたいくらいのポジティブ思考を発揮するカグヤちゃん


「それで、その…実は、カグヤちゃんに頼みたいことがあるんです」

かなり辱められたけど、ここからが本番

お願いを聞いてもらわねば……


「なんだかわからないけど、まかせてくれたまえ!なんでもきいてあげよう!」

「え?い、いいんですか?!」

腕組ポーズでえっへんとしているカグヤちゃん

あっさり聞いてもらえるのは、ありがたいけど…


「おだいはさっきいただいたからね!」

「あ、ありがとうございます……」

幼女に下半身を見せたこと、無駄じゃなかった!

うんうん、それなら私が恥ずかしい思いをしたのも、報われるというもので……


…いや、ちょっと待って

あれ見せたの『おだい』になるの?!

もし今度また、お願いする事態になった時、『おだい』払わなきゃいけないの?!


ミソラさん何で『その手が』みたいな顔してるの?!

やだー!誰か私をこの恥ずかしループから救ってー!


そんな訳で、お願いは聞いてもらえる事になったけど…

…別の沼に入り込んだような気がしてならない私だった

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