40・王子少女は相談したい!
「まず、前提から話させてもらうと…
『風』にはフウマという、諜報員の組織が存在します」
領主さんによって『風』の内情が話される
「古代の遺産はどれもひとつひとつが大変な貴重品であり
それを守るために設立されました」
「まだ元気な頃の王様が、渋い顔をしていたわね…
『この組織、悪用すれば、国をひっくり返せるのではないか?』と」
「……」
痛いところを突かれた、という顔をする領主さん
「けど、その頃は『風』はとても中央と仲が良く、問題にならなかったわ」
「ええ…今でも仲良くしたいと、思っております」
しかし、それは置いておいて話を進める
「で、諜報団の先々代の団長が、あなた様にお仕えしているクロカゼです」
「団長……執事さん、そんなに偉かったのね」
「お、お待ちください…先々代とは…?!」
「順を追って話す」
執事さんは、先々代…というところに引っかかったらしいけど…?
「クロカゼが腰を痛め、引退するとなった時、二人の団長候補がいた
一人はノワキ、諜報員に似合わぬ、心優しき青年であり
一人はコガラシ…ワシの息子です」
執事さん、腰が弱かったんだ
あの時、めっちゃ穴掘り手伝ってもらったんだけど、大丈夫だったんだろうか…
「ワシとクロカゼで相談をし、最終的に、団長はノワキにすることに決めました
残念ながらワシの息子は繊細さに欠ける、という判断でした」
「…ええ、そうでしたな」
執事さんが、昔を懐かしむように相槌を打つ
「それに、息子はいずれ領主となり、『風』を引っ張って行くのだから
危険な団長を頑張らなくてもいい
そういう過保護な面も…正直ありました」
目を伏せ、首を振る
その仕草は、選択を後悔しているようだった
「クロカゼが去るまでは比較的平穏でしたが…
そこから息子はおかしくなっていきます」
…ここからが問題……
「自分が団長に選ばれなかったことを、必要以上に気に病み
酒に溺れ、『雪』やその息子たちとつるみだし、住民に暴力を振るうようになります」
「な?!」
驚きの声を上げる執事さん
そんな事で反抗されるとは、思っていなかったのだろう
「ノワキは、自分が団長になってしまったのが原因だと
団長をやめて消息を絶ってしまいます」
「な、なんと…」
「繰り上がりで副団長から団長になったコガラシは
自分が見くびられたと思い激怒します」
負のループが完成している…
何をやっても腹が立つ、この話の彼は、我慢のできない子供のようだった
「そして…あろうことか、『雪』にそそのかされ、王子を毒殺したと……!」
「?!」
(クロカゼさん…王子毒殺の可能性はあるの?)
(この頭に響く声は…ミソラ殿の『グループチャット』ですな)
(……王子が行方不明になったのは
わたくしが腰を痛め、王子が一人で領地の視察に向かった時…)
(コガラシ一人では不可能でしょうが、団員が何人か関わっていれば……)
(…ありえる話なのね)
「息子は、桶に入った王子の首を見せて、こう言いました…」
『王子を息子が殺したとあれば、またとない大罪だ
もはや国王の配下ではいられない
これで後に引けなくなっただろう?『雪』の味方をするんだ』
「なんという悪辣な…」
「息子はさらに、諜報団を操り、電力施設を占拠
人々の生活を人質に、領主の座から退くことを要求しています」
「……」
「そんな事をせずとも、いずれ後を継がせるつもりだったのに…」
『…親の気持ちはわからないものだね』
親に裏切られたと思っているのだろう、彼は
だから平気で『仕返し』ができる…
「しかし今は、王子が生きている話が流れ
話が違うぞ様子を見よう、と休戦状態に持ち込んでいます」
「……」
『なあクロカゼ、ボクの偽物の首…作れるものだろうか?』
「はっ、死人の顔をいじるのは、生者の顔よりもたやすい…十分可能かと」
『ふむ…』
この『風』の領主さんには、王子のフリが通じているけれど
もし、『風』の息子…コガラシが直接、王子を殺害していたのなら…
王子と思わせることは不可能に近い
『すまない、領主殿…一旦戻って、補佐官たちと相談をする
事態は思った以上に、まずい方向に進んでいるようだね…』
と、ともかくも、引き揚げてじっくり話し合おう
ここでは話せない事が多すぎる…!
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