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35/108

35・王子少女は逆襲したい!

そんなわけで『風』の領主に会うまでの道中にある

砂浜にやって来たのだった


「砂浜!太陽!そして、海!」

輝く海と、照り付ける太陽がとてもまぶしい!

でも、こう外で遊ぶとなると、久しぶりに青春してる気がする!

ラッキーだったのかいつもこんな感じなのか…砂浜には人がまばらにしかおらず

周りをあまり気にせずに、楽しむことができそうだった


そして今回、メイドさん三人が、私とミソラさんについてきてくれている


「メイドさんたちは、お城から出て大丈夫なんです?」

「執事さんに調べものしてもらってるからね

 代わりに彼女たちが来てくれてるの

 事情を知ってる人が多いほうが、何かと助かるし」

「そうなんですよ」

「そうそう」

「よろしゅうな~」

三人はにっこりと微笑む

今は、頭に例の白いアレをつけてないから、パッと見メイドさんだとわからない


「なるほどです…よろしくお願いします!」

お辞儀をする私

現在、全員が海水浴のために水着を着てきている

私が着てるのは、数時間にわたりお店で吟味して選んだ自信の水着だ

リボンとフリルがいっぱいついてる、白いビキニタイプ


「セッカさん水着かわいいですね!」

「でしょでしょ!わかります?!」

お世辞かもしれないけど、かわいいって褒められるのは嬉しい

王子様以外での魅力を褒められたい!


「うち、てっきり男の水着で来るのかと」

「何でそんな罰ゲームみたいなことを?!」

「バレるかバレないかのスリルを楽しむのがよいとか…」

「特殊なプレイの話はちょっと」

王子様のマネをし続ければいけそうな気も…

い、いやいや?!流石に無理ですよ?!

胸だってあるし!何より恥ずかしいし!


ちなみに、それぞれの水着は大雑把に…

ヒルヅキさん…ビキニの青

アカツキさん…ワンピースの赤

ホシヅキさん…ショートパンツの緑

ミソラさんは…いつもどおり!

って感じ


「じゃあ、まずはこれですね!サンオイル!」

塗っておくと日焼けして肌が痛くなるのを防いでくれる、魔法のアイテム!


「へへへー」

私はオイルを持って、メイド長女ヒルヅキさんにひっつく


「…あれ?珍しいですね、セッカさんから触ってくるの」

「今日の私は女の子セッカちゃんですから!

 ベタベタしに行く方!」

今日は、このメイドさんたちの真似をして、失われた女子力を取り戻す!


「ほらほら、たまにはミソラさんも攻めに回りましょう!」

「え、あ、あたしも?!」

ミソラさんは驚きながらも、反対側からヒルヅキさんをサンドイッチしてくれる

これで、いつもとは逆の立場…!


「姉さんが捕まった~、大ピンチやわ~」

「あはは、頑張れ姉さん~」

そう言いつつ、二人は砂浜に腰を掛け、観戦モードに入ってくれた


「ここで、耳に息をふー、とやってゾクゾクさせるんです!」

「わ、わかったわ」

「ふー」

「ふー」

私たちは、メイドさんたちを真似して、一生懸命耳ふーをする


「……」

「………」

あれ?反応薄いな……

ひょっとしてこれ、意外と特殊なテクニックが必要だったりする…?


「…あ、あはああああああんっ、だ、だめぇん」

「やりました!効いてますよ!」

時間差だった!よかった!


「そ、そうかしら…?」

「さあ、今度はふにゃふにゃで前後不覚になったところで

 寝転がらせて、オイルを塗りたくるのです!

 できるだけえっちな手つきで!普段私たちがやられているように!」

メイドさんたちはとてもとても女の子してると思う

だから、メイドさんたちのマネをすれば、私も女子力が取り戻せるはず…!

それに、普段やられてるお返しもしたいし…!


「さあ、まずはミソラさんから!」

「えええええええ?!」

ミソラさんはさっきから顔が赤い

攻めるのに慣れてないのだろう…わかります

でも、ここは攻め時!頑張ってください!


「…じゃ、じゃあいくわよ」

「あっ」

「『心を開放して…身を委ねてください……

 大丈夫、変なことはしないから……』」

「絶対変な事する人の台詞よね?!」

「な、なんや、台詞がえっちぃ本の導入くさいわぁ」

「見たことあるの?」

「え、いや、それは~…いややわ、もう」

ミソラさんの一挙手一投足に注目が集まり、アカツキさんホシヅキさんの解説が入る


さわさわさわ

「あっ…」


ぬりぬり…

「あ…うんっ……」

「……」


ヒルヅキさんが反応するたびに、ミソラさんの顔がどんどん赤くなっていき…


「あー!ダメ限界!こんな恥ずかしいのあたしには無理よーーーー!」

「ギブアップなん?」

「ギブアップよぉ」

湯気を吹いてその場に倒れた


「す、すみません、ちょっといきなり無理させちゃいましたね」

「いいのよ…あたしも、たまには反撃したいって気持ちもわかるし…」

こんなになっても文句を言わない…ミソラさんはいい人だった


「私が敵をとります!」

倒れていったミソラさんい報いるためにも、私は立ち上がる

このオイルバトル…勝利してみせる!


ぬりぬりぬり


「あっ」

ぬりっ」


「あ…そこ……」

「ここがいいんですか?」

「うん…そこ……」

どうやらここが弱点らしい

なら、集中的に…


「そこ…もっと、押さえつける感じで…」

「こうですか?」

「そう、もっとひじを使って」

「ふんっ…ふんっ……!」


ぐりぐりぐりっ!


「あ、ダメ…きもちいい…っ!」

よし、効いてる……効いてるっ……!


………

……


「ふぅ…セッカさんにいっぱい気持ちよくされちゃいました…完敗です」

「やりました!」

「ち、違うわ!そうじゃないわよセッカちゃん?!」

「え?」

あれ?気持ちよくさせたから勝ちじゃ…


「腰がすごいほぐされたの!完璧よ!セッカさんのオイルテクニック!」

「オイル関係ないわよね?!

 途中からマッサージに誘導してたわよ?!」

「…あれ?ひょっとして…騙したんですか?!」

「ふはははは、騙されるほうが悪いのだ!

 おかげで腰の調子が良くなったぞ!ありがとうございます!」

「どういたしまして?!」

感謝されたけど、目的はそうじゃなかったんですけどね?!


「くぅ…やっぱりみなさんに、女子力では勝てないのでしょうか…」

「ええんやで~、そのままのセッカちゃんでいて」

がっくりとうなだれる私を、よしよしと慰めるホシヅキちゃん

…まだ終わらないですよ…私も一回くらい女子力勝利して見せます!


遠くの海を見て、決意を新たにする私だった

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