34・王子少女は遊びたい!
『はーっはっはっは!見回りご苦労!』
「あ、ありがとうございます、カナタ王子様!」
「王子、『花』の国境で、大型モンスターを見たとの情報が!」
(どうしましょう?!)
(国境に兵士が出ていくとややこしくなるから、冒険者を雇って!)
『兵は動かさず、冒険者を雇って偵察、できるなら退治まで依頼しておきたまえ』
「わかりました!」
「『星』の領主が『花』と『空』で会談を開きたいと!」
(たぶん、本当に『花』が仲間になったのか確認がしたいのね)
(すぐセッティングしてあげて、『星』だけはずっと王子たちの味方だったんだもの)
『了解した、すぐに会談をとり行う、と伝えておいてくれ』
「はっ!」
そんなこんなで…たっぷりと王子様のお仕事をした
そして、二週間後…王子のお部屋
「大分、王子様に慣れてきた気がする」
しょうがないんだけど、セッカとしての自分が薄れてってるような
私って誰だっけ…?
いかんいかん…私を取り戻さなくちゃ
イチゴケーキ(糖分)にかぶりつく
うん、今日も美味しい!
「いつもありがとう、セッカちゃん」
「いえいえ」
ミソラさんとのケーキタイムは、女の子でいられる貴重な時間
…ケーキを食べすぎて、王子が甘党になった?!って誤解されかけたんで
ミソラさんが私の分も食べてることになっている
「ところで、次の目標は決まってるんです?」
そう言いながら、ケーキをもりもり食べる私を見て、苦笑するミソラさん
「そうね…次は順当に、『風』の領主を味方にするわ」
『風』の領地はその名前の通り、風が強い地域
風を有効利用するために、風車がいっぱい建っている
「『風』は、ちょっと独自色が強いのよね」
私たちの生まれるはるか前、古代文明というものがあった
その文明では、マジックアイテム『機械』を使い、豊かな生活を送っていた
『機械』は動かすのに、雷の魔力が必要
なので、古代文明時代は、自然から雷の魔力を抽出する方法に長けていた
『風』の領地には、なんとその時代に作られた風車が、いくつも存在する
いやまあ、風車自体は別に今でも作られるんだけども
その風車につながる装置から、なんと雷の魔力が生み出せるのだ
遺跡から発掘される『機械』を使うためには、体内魔力が雷属性の人間か
体内魔力を雷に変換できるコンバーターを、用意しなければならなかった
そして、人間の魔力は簡単には補充できないので、常時使用は難しい
そんな『機械』を自然の力だけで、常時使用できるという優位性
それが『風』の領地の強みである
国王はそんな強みを生かすために、古代文明の研究所を建て
『機械』の解析、再現に資金を投じている
体内魔力を雷に変換できるコンバーターは、この研究所によって作られたものであり
領民は、『機械』を生活のあちこちで用い、豊かな暮らしを送っている
「ここはそもそも、何で『雪』の味方してるか、理由がわかってないの」
「『花』と同じ…って訳ではないんですね」
「だから、クロカゼ…執事さんに、調査をお願いしてるわ」
そういえば、彼は確か『風』の出身だって…
「元『風』の諜報員だったそうだし、上の人から内情を聞かせてもらえるかも?」
どうだろ…逆に警戒されるかもしれない
「情にほだされて、執事さんが『風』についちゃう可能性も、考えられなくはないけど…」
「私たち、ここまでしてもらってますし…今さら信頼しないは無いですよね」
「そうね」
特に穴を掘るとき、執事さんにはめっちゃ頑張ってもらった
無詠唱魔法(偽)は、彼の頑張り無くしては成立しえなかったのである
「来週、私たちも『風』の領主に会いに行くわ
セッカちゃんの、『花』の時のような巧みな交渉術があれば、なんとかなるかもだし」
ミソラさんはそう言ってにっ、と笑う
「か、からかわないでください~…
あ、あれはなんかついカッとなって…」
正しかったのかは、今でもわからない
でも…彼らの勇気を、私は信じたい
「…と、まあ…お仕事の話はこれぐらいにして……」
「うえ?」
ミソラさんがお仕事以外の話を…?
まさかまた『ひかやみ』関係?!
「セッカちゃん、海水浴に興味はあるかしら?」
…違ったようだ
「…視察とかですか?」
『風』の領地は海に面しており、海風を受けて回る風車も存在している
「そういうの全部抜きで!『風』の領主に会う前に、たまにはぱーっと遊ぼうかと…
ほら、どうせ道中で海岸を通るんだしね」
「…いいですね、それ!」
たまには普通の女の子として、普通を楽しみたい
そう思ってた私にとって、またとない誘いだった
「海なんて初めてですよ~、何着てこうかな?」
ウキウキで浮かれる私
…この後私は、羽目を外しすぎて、色々やらかしてしまう事になる
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