30:王子少女は片付けたい!
「…という訳で、救世主を連れてきたわよ店主さん!」
「わたしにおまかせだよ!」
「え、ちっちゃいおじょうちゃん?」
お手伝いをお願いしてたのに、いきなり幼女を連れてこられて
意味が分からないといった顔をする店主さん
『はーっはっはっは!慌てることは無いよ店主くん!』
「お、王子様って、普段そういうキャラなの?!」
残念ながらそうなんです…
演説の時はそこそこまともに見えたでしょうけど
周りにセッカモードを見られて、王子と比較されたら困るので
店主さんに会う時も、ここから先は当分王子様モード
『彼女のユニークスキルは「百有引力」(パーセントグラビティ)
触れたものの重さを、百分の一にできるスキルなのさ!』
「それはすごい…けど、幼女の体力だとそれでもきついんじゃない?」
私もそう思ってましたけど…
『いやまあ、だからこう…彼女ごと持ち上げるのさ』
「あ、なるほど」
彼女と彼女の触れている瓦礫を、同時に持ち上げる私
これもなかなかに応用力のあるスキル
姉妹揃って、つよつよスキル持ちだなー
「む-…大丈夫だよ!わたしひとりでも!」
『え?』
カグヤちゃんは私の手を離れ、再度一人で瓦礫に手を触れ…
「お、お…えええ?!」
『すごい!この大きさを?!』
百分の一でも重そうな瓦礫を、なんと一人で持ち上げてしまった
「えへへー」
笑顔でにっこりのカグヤちゃん
「この子、フレーダに嫁に出されてたじゃない」
『そうだね』
「ほぼ放置状態だったんで、暇つぶしで筋トレ始めちゃったのよ
それが、思った以上にハマっちゃったらしくて…」
「きんりょくは、大体のものをかいけつできるんだよ!」
うわぁ…このようじょ、筋肉信仰に目覚めちゃってるぞ…
『確かに、筋力があればあるほど、嬉しいユニークスキルだもんね…』
「どこに運べばいいかな?」
「あ、そ、それじゃああっちに!」
「ほっ!ほっ!」
カグヤちゃんが小さいせいで、遠くから見てると、急に瓦礫の山が動いた感じに見える
『…十倍兵士、一人ぐらいカグヤちゃんでなんとかなったかもね』
「えーと…どうかしらね……」
否定しきれないのが怖いところだ
「…そういや君、この前セッカちゃんと一緒に、屋根の上に上ってたよね」
「あの時はきちんと自己紹介しなくてごめんなさい」
そういえば、なぜかあの時ミソラさんは、黙ったままだったなぁ
「あたしは王子の補佐官で、『花』の領主の長女、ミソラよ」
「領主さまの?!」
「この子は次女のカグヤよ」
「だよー」
「ちょっと訳ありで家出してたから、正体を話したくなかったの…」
「ほへぇー…もう何が何やら」
一度に色々ありすぎて脳が混乱している店主さん
「それで、あの…あたしも手伝うから…
『ひかやみ』のサイン会、参加させてもらえないかしら?!」
「………あー…!それ『みーさん』の格好かぁ!」
「そうそう、そうなのよ!」
ミソラさんの黒水着が、『ひかやみ』のコスプレだと気づく
「まさか現実でその格好を真似る人間がいるとは…」
『ボクもはじめはびっくりしたよ』
「い、いいじゃないのー!」
「まあ、これだけしてもらって断る理由なんてないよ
三人とも、サイン会の枠は確保しとくね」
あ、私も入れてもらえるんだ
ミソラさんと比べて、そんな熱烈ファンじゃないけど、嬉しい
「『恩を受けたら恩で返す、それが光の流儀だ』」
「きゃー!ルミネル様ー!」
『楽しそうだね、君たち』
店主さんは『ひかやみ』の人気キャラ、ルミネル様の物まねで会話をする
そして、それを喜ぶミソラさん
…ホント、ファンの世界だなぁ
「…ホントはあたしが撃てと命じた砲弾が
こっちにそれちゃってこうなった訳なんだから…恩ではないかもしれない…」
ミソラさんが、ちょっと申し訳なさそうにもじもじする
「……細かいことは気にしないでおこう!」
「ありがとうございます!」
心の広い店主さんにより、一発解決
そうして瓦礫を片付け、本を整理し、私たちは『ひかやみ』の作者を待ち受ける
滅多に無いお祭りって考えると…ちょっと興奮してくるかも!
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