26:領民たちは復讐したい!
「くそ…許さねぇ!全員ぶち殺してやる!」
光と音波の攻撃で、くらくらになりながらも、フレーダは怒りで立ち上がる
「みんな出てきて!」
東の塔に近いいくつもの民家から、次々と、弓を持った兵士が出てくる
「あ、ああ?!どこにそんな隠れてやがった…?!」
「一斉射撃!」
統率された動きで、東の塔の…
主に、先ほど女性の声に釣られて外に出た部下たちに対して
何本もの矢が放たれる
「馬鹿が…!そんなちゃちな弓が通じるかよ!
十倍のパワーは細い矢なんて簡単にはじくぜ!」
彼の言う通り、矢は少し痛い程度で、身体には一本も刺さらず、部下たちは悠々としていた
「さすがフレーダ様のスキ…ル……?!」
ほめたたえる言葉を途中まで言いかけた部下は
けれど最後まで話すことはできず、顔を真っ青にして倒れた
「は…?」
塔の中に入っていて、矢を受けなかった部下は
壁に刺さった矢を見て、叫び声をあげる
「ど、毒です!矢じりに毒が塗られてます!フレーダ様!」
「おい!毒の武器は法で禁止されてるだろう?!」
予想外の凶悪武器の使用に、思わずドン引きする
「今まで散々、法を破られてきたのはこっちだ!」
「お前ら相手に法なんぞ守ってられるか!」
「法を破ろうが何だろうが、しらを切りとおせばいい
そう教えてくれたのはお前らだよなぁ!」
「よくも今まで好き放題してくれたな!」
毒を扱う弓兵たちは、今まで国境付近を散々荒らしまわられた住民たちがほとんどだ
法を破ってでも勝つ覚悟が決まっている
「撃ち方用意!」
「あ?今度は何を…?」
「撃て!」
ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…ドゴォォォォォ!!!
南の塔のあたりから、黒い砲弾が飛んできて、東の塔にぶつかる
「うおうっ?!」
塔が揺れ、壁の一部がはがれ、塔全体がギシギシと悲鳴を上げる
「た、大砲じゃねえか?!東の塔がぶっ壊れるぞ!」
「あんたたちの墓標にしては贅沢よね!」
「ちくしょう!いかれてやがる!」
塔が崩れようがなんだろうが、もはや構わないのだ
憎き『雪』のやつらを討ち取れるのなら
「なぜだ?!なぜこんなにこいつらは、殺意に満ち溢れている…?!
先週まで、あんなに覇気の無い、死にそうな領主たちだったのに…!」
「い、今はその疑問は置いておきましょう!」
「そ、そうだな…」
ドゴン!ドゴン!!
砲弾が次から次へと、塔にぶちこまれていく
東の塔は今にも崩れそうだ
「おい!このままだと生き埋めになる!一旦分散して街の外で合流だ!」
「わかりました!」
囲まれた東の塔から、力押しで外に抜け出そうとする
「邪魔だ!どけぇぇ!!」
なんとか抜け出せたのは、部下一名と、フレーダのみ
フレーダは東北側から、部下は南東側から街の外向かうへ
最後の生き残りの部下は、路地裏を高速で駆け抜けていく
木箱を運んでいる人間を押しのけ、犬に餌をやっている子供を蹴飛ばし、ひたすら駆ける
そして、白いシーツを干そうとしている女を、どかそうとしたところで…
ばさっ!
「?!」
彼はその白いシーツを、全身にかぶせられた
「な、なんだ?!何のつもりだ?!」
「みなさん!今です!」
女に呼び寄せられ、隠れていた兵士が一斉に集まり…
ズシュズシュズシュッ!!
「ぐ、ぐあああああああああ?!」
最後の一人は、毒の槍で串刺しにされた
叩きのめされたフレーダは、仕方なく撤退を始める
街道を戻り、『雪』まで逃げる
…きっとそうすると思い、私はすぐ近くの街道で待ち構えていた
「お、王子…?!」
思った通りに、彼は表れた
ミソラさんたちに攻められて、ボロボロになった彼に
私は心底見下すような目線を向ける
「そうか、全部てめーの差し金か…!」
『…それは違うな、君たちが恨みを買いすぎたんだ、自業自得だよ』
腰の剣を抜き、彼に突きつけ、冷ややかに笑ってみせる
『威圧することでしか自分を示せない、哀れな人間だね』
「ごちゃごちゃうるせぇ!
俺は強い!俺はすげぇ!お前なんかよりも、何倍も!!」
頭に血が上り、襲い掛かってくるフレーダ
…予想通り…っ!
『…トンネル』
「あ?」
私は、彼が仕掛けに足をかけたのを見て
『無詠唱魔法を唱えたフリ』をする
ボコッ!
「ああああああああああああああああ?!」
イノシシの時よりも、何倍も深く掘った落とし穴に、彼は落ちていく
『地に足がついてなければ、何倍しようと、0は0だ』
これが私の!無詠唱魔法!
お読みいただき、ありがとうございます!
よろしければ、広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして
評価してもらえると、たいへん嬉しいです!
さらに面白いと思ってくださった方
同じく広告の下にある『ブックマークに追加』も押して頂けると
とてもとても嬉しいです!