24:父は娘を救いたい!
「つまんねーな…街に繰り出してねーちゃん引っかけてこようぜ」
食い散らかされた食料が、テーブルに並んでいる
そのテーブルに足を放り出し、フレーダは気軽に部下へ話しかけている
「…いや、フレーダ様には、奥様がおられるでしょう?
上の階におられるカグヤ様とかいう」
話を振られた部下の一人は、肉にかじりつきながらそう返す
ここは東の塔一階のダイニングルーム
大きなテーブルがあり、すぐ横には食糧庫
火を起こす場所もあるが、大がかりな料理ができる程ではない
そんな場所で、フレーダとその部下八人が、食事をしている
「親父の命令で、十歳の方が人質として扱いやすい
こっちと結婚しろって言われたんだぜ?
あんなロリ、女の魅力なんか、なんも感じねーよ」
やれやれと肩をすくめる
(…好き放題言いおって…!)
(領主殿、我慢ですぞ、我慢…)
食糧庫からダイニングルームに、二つの視線
(しかし、こんな隙間に人間が入れるとは、思わなかったぞ…
元『風』の優秀な諜報員というのは、本当のようだな)
(恐縮でございます
本来、もう引退の身ですが…救出作戦、お手伝いいたします)
『花』の領主と、王子の執事は、フレーダたちが食料を運ぶ荷台を改造し
その隙間に入り込むことによって
彼らが根城にしている東の塔への侵入を果たしていた
(…思ったより、効きがよろしくないですな…二人しか眠っておりません)
彼らが倉庫から持っていく酒に、睡眠薬を仕込んでおいたのだが
あまり眠ってくれてはいないようだ
一発で全員眠ってくれれば、楽だったのだが
(仕方ないわ、次の作戦に移りましょう)
ミソラの合図と共に、『花』の兵士が、水路の仕掛けを動かす
ごぽぽぽ……
それから、十分ほど後
「フレーダ様!地下室に…!」
「どうした?」
「水が染みこんできています!」
「おいおい、便所でも壊れたか?お前らで直しとけよ」
(四人が確認に向かいましたぞ)
(…まだ動けんか……)
「申し訳ありません!どなたかおられますか?!」
入口の方から、若い女性の声が響く
なんだなんだと、眠っている二人以外が全員、入口に向かう
(離れました!)
(よし!二人とも、最上階に向かって!)
(背中に例のモノ、忘れずにね!)
「すみません!馬車が横転して用水路が壊れてしまったんです!
水がそちらの方に流れているようでして…!」
入口に立っていたのは若い黒髪の女性
気弱そうな雰囲気で、胸は大きく、どうしたものかとオロオロしている
「なんだぁ?お前んトコの仕業かよ!」
「困るなぁ…しっかり賠償してもらわねぇとなぁ…」
「とりあえず、酌してもらおうかなぁ、酌」
チンピラのようなことを言うフレーダと部下二人
「え、あの、そんな…困ります」
「ひゃはははは!いいじゃねえか、楽しもうぜぇ!」
赤くなって俯く彼女の肩を、掴んで引き寄せる
上機嫌になったフレーダは、そのまま飲み会を再開しようと…
「……いや、違うな……『できすぎてる』な」
思ったところで、違和感に気づいた
「おい!周囲を警戒しろ!」
「ど、どうしたんですフレーダ様?!」
「罠の匂いがする!そいつは用心しつつ捕まえろ!俺は人質を確保しに行く!」
「わ、わかりました!」
フレーダは塔の中に戻っていく
「…ちっ」
女性は舌打ちをすると、胸元から白い球のようなものを取り出し
フレーダの部下に投げつけた
「なっ?!」
部下にぶつかると球は破裂し、白い粉が舞い散る
一瞬、彼らの視界が遮られる
女性はその隙に、背を向けて全力で逃げ出す
(申し訳ありません!気づかれました!
フレーダがそちらに向かってます!)
(あなたはそのまま逃げて!もし逃げれなかったら時間を稼いで!)
(ものすごいスピードで登ってきますぞ!)
(『テンカウント』…!やはり凶悪なユニークスキルだ…!)
だが、彼ら二人の方が一歩早く、最上階に到着する
「カグヤ!」
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