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23:王子少女は立ち上がらせたい!

「こんな夜中に、何の用ですかな?」

『あなた方に、聞いて欲しいものがありまして』


夜中、屋敷の応接間に、領主と奥さんを呼び出す

部屋の中に、私とミソラさん、領主と奥さんの四人が揃う

執事さんは部屋の外で見張りをしてもらっている


(父さん、母さん…聞こえる?)

(これは…ミソラの『グループチャット』ではないですか)

(懐かしいわね…糸電話のように遊んでいたわよね、これで)

(『今ここにいる四人から、もう一人、会話する人物を増やします』)

(『お二人は、黙って聞いていてください』)


…今からやる事は賭けだ

こんなことをされれば、領主は怒り狂うかもしれない

それでも……


(『やあ、カグヤちゃん、今日も話に来たよ』)

(あ、いんせきおうじさま!)

(?!)

(カグヤ、周りに人はいない?)

(うん、怪しまれることは無いと思うよ)

突然、脳内に響く娘の声

驚きのあまり、両親は硬直している


(…大丈夫?辛くない?)

(つらい…)

(『…帰りたいかい?』)

(帰りたい…)

私たちは、カグヤちゃんの言葉を引き出していく


(お父さんに、お母さんに、会いたい…)

(お姉ちゃんに、会いたい)

(お父さんの肩に乗って、お母さんとご飯を食べて、お姉ちゃんと日向ぼっこしたい)

(昔みたいに、もう一度…)

彼女は懐かしい思い出、幸せだった時を語りだす


(ねえ、カグヤ何か悪いことしたのかな?)

(どうしたら許してもらえるのかな?)

(どうしたら…お父さんとお母さんとお姉ちゃんと

 もう一度、一緒に暮らせるのかな…?)

彼女は、両親が聞いていることに気づいていない

だからこそ、遠慮なしに…辛さ、苦しさ、彼女の本音を語ってくれている


(『君が気に病むことは何もないよ』)

(『もうすぐ君の下に、迎えが行くから』)

(『それまで、もう少しだけ…待ってて』)

(……)

(…うん、カグヤ待ってる)

カグヤちゃんの消え入りそうな声


(また後で連絡するわ、今は一度切るわね)

(うん…)


…ぷつっ……


『グループチャット』は閉じられ、会話はできなくなる

そして……


「あ…あっ……ああああああああああああああああああああああああ!!!」

「いやああああああああああああああああっ…」

娘の悲痛な想いを聞かされ、領主と妻は慟哭する

そうだ、これがあなたたちが、目をそらし続けてきたことだ…!


「貴様ぁ!何のつもりだ!」

領主は怒りをあらわに、私の襟首をつかむ


『何のつもりだはこっちの台詞だ!』

私は、大声を張り上げ、逆に彼の襟首をつかみ返す


『娘の心を殺し、自らを誤魔化し、偽りの安寧に身を置く』

「そうだ…他に手段が無かった

 なのになぜ、妻の傷口を抉るような真似を…!」

『どうしようもない状況で、誰かが犠牲を強いられることは、もちろんある

 それでも、いつか取り返そう、現状を打破しようという気合があるなら、救いもあっただろう』

襟首をつかんでいない方の手を、胸に当てる

その手で握りこぶしを作り、彼をさらに睨みつけた


『ただただ諦めて従うのみの男に、何の救いがあろうか!』

「ぐっ…こ、この…っ!」

『ボクが彼女をフェーダから救い出したとしても、失った信頼は取り戻せない

 心のヒビは広がり続け、必ず家族は崩壊する』

私が本物の王子で、一人でカグヤちゃんを救い出す力があったとしても…

それはやってはいけないこと…!


『お前が救うんだ!娘を!

 お前がやらなければ、家族は救われない!』

私は、ものすごく残酷なことをしている

打ちのめされてうずくまっている人間に、立ち上がれと、さらに鞭を打つ

けど…けれど、ここが最後のチャンスだ

ここで立ち上がれなければ、彼ら家族はおしまいだ

立って…お願い……!


「…わかった、お前の挑発に乗ってやる」

…!


「あの外道共から娘を救う!家族を守り、領民を守り、『雪』を殲滅する!

『花』を怒らせたことを、心の底から恐怖するまでな…!」

よかった…よかった……っ

家族への、娘への想いが、恐怖と諦観を凌駕した瞬間だった


「今まで、済まなかった…ミソラ」

彼は、今まで距離を置いていた娘を引き寄せ、抱きしめる


「俺は覚悟を決めた

 最後まで戦い、『花』の平穏を、家族を取り戻す…!

 …たとえ、それで俺の全てが朽ち果てようとも」

「父さん…っ」

ミソラさんは、父の決意に涙を流して喜ぶ


「わ、わたしも戦うことには同意します

 この人が、ここまで覚悟しているのですから…」

奥さんも、同意はしてくれるようだが…?


「けれど、どうやって戦うのです?

 百人相当の敵が、あの塔に立てこもってる

 実際に戦うのなら、百人は連れてこなければならない

 けれど、そんな百人単位の招集をしたら

 必ず感づかれて、人質の娘は殺されてしまう…!」

現状の問題を冷静に指摘される

確かに、あいつらだけなら、大量の兵士で押し切れるかもしれないが

人質まで考えると、かなり行動が制限される


「大丈夫よ母さん」

「ミソラ…?」

「あいつらは、百人相当であって…百人じゃない」

当たり前のように聞こえるが、そこは重大な点


「父さんが立ち上がってくれたなら、いくらでもやりようはある」

「ああ、こうなったら何でもやってやるぞ」

ミソラさんは、本領発揮と言わんばかりの、不敵な笑みを浮かべ…


「勝ちに行くわ…闇の軍師の全力をもってして…!」 

そう、決意の宣言をした

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