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17:遠征する王子少女

街を守る四本の石造りの塔

遠くを見まわし、敵襲を知らせる防人

その塔のうちひとつ、東の塔の最上階に、少女は閉じ込められていた


夜中、少女はそっと窓を開ける

眼下には色とりどりの屋根、道を歩く人々、活気あふれる街の明かり

外の世界の全てがうらやましく見える

その中の、ひときわ大きな屋根のお屋敷には、彼女の両親が住んでいる


「お父さん…お母さん……」

今すぐに会いに行きたい…

けれど、それは叶わない


いっそ、ここから飛び降りてしまおうか

少女はたまに、そんなことも考えたりする

ただ、この高さなら、間違いなく助からないだろう


夜に吹く風は冷たく、少女の孤独をより一層深くしていた





『はーっはっはっはっ!』

この時のために用意した、王子用の赤いマントをばっ、と翻し

見送る子供達に背を向ける


『また遊びに来るからね!それまでこの美しいボクの事を忘れないように!』

「はーいっ!」

元気よく答える子供達

赤い夕焼けをバックに、王子様はかっこよく学校を去るのだった



…何をやってるのかというと、王家による学校訪問である

この国は特に教育に力を入れており

王家の人間には、学校を訪問し、未来の子供たちと交流を深めるという公務がある

今日は複数の学校を回って、マントをバサバサしてきた


そうして、今、馬車に乗りこんだところだ


「今のソライロ学校で最後ね」

馬車の中では、ミソラさんがスケジュール帳にチェックを付けてる

有名人は時間配分が大変だ


「王子、子供たちに人気なんですね…」

最後、角を曲がって姿が見えなくなるまで、子供たちは手を振ってくれた


「おもし…かっこいいからね」

「面白いって言いかけましたよね?!」

まあ、私もこんな王子様が学校に来てたら、テンション上がっただろうなぁ

やってる方は超恥ずかしいんだけども


「これで貯まってた公務も一通り終わったし…そろそろ行くわよ」

「どこにです?」

「……『雪』の同盟を切り崩しに行くわ」

いつもより真面目な顔で、そう告げる


「い、いよいよですか…」

この王子としての二か月間は、当初の目的を果たすための準備期間

果たして、他領主を上手く引きこめるかどうか…


「まず訪問するのは『花』の領地ね

 領主はあたしの父親だし、事情は掴んでいるわ」

…逆に言うと、事情を掴んでいても、彼女単独ではどうしようもないのだろう

かなりの訳ありな気がする


「…どうしてご実家では、『雪』に賛同なんて…」

「そうね…」

父親のことを思い出し、深くため息をつくミソラさん

その後に、ぽつりと呟く


「一言で言うなら…

 長いものには巻かれろ、ってタイプだから、かしらね」




『花』の領地

私の出身であるヒルガオ村も『花』にある

前にも説明した通り、農業が一番盛んに行われている地方である

その中で一番大きな街は、領主の住んでいるデュランタ街

領主の屋敷を中心に広がる、円形の街である

その円周には、街を守る四本の石造りの塔が建っていて

さらに外側には農地が広がっている


『花』の人間にとって、ちょっと都会に出て贅沢したいなーって時は、大体ここに来る

私が『ひかやみ』を借りた貸本屋さんもここ


ミソラさんと執事さん、そして私は、王家の馬車に乗り

そのデュランタが遠くに見えるところまでやってきた

ここに来るのも久しぶりだなー…とのんきに思っていたのだが……


「むっ…あれは…」

馬車を操る執事さんが、怪訝な顔をする


「どうしたの?」

「街の東の塔ですが…ちょっと様子がおかしい気がしますな」

「ほんとだ…他の三つの塔の見張りの人と、見張ってる人の格好が違う」

「え、うそ、あたし全然見えないわ」

この街の兵士さんたちは、緑色の服装をしている事が多いんだけど

東の塔の兵士?さんは青の服装だ


「あと、てっぺんに別の誰かがいる…?」

見張りのいる場所とは違う、東の塔の最上階

そこからなぜか、女の子の顔が見える


「あ、隠れちゃった」

こちらに気づいたのかどうかわからないが

女の子はさっ、と塔の中に消えてしまった


「…念のため、目立たぬように入りましょうか」

「そうね…用心しすぎかもしれないけど

 王家の印は外して、普通の馬車として移動しましょう」

元諜報員の執事さんが怪しんでいるなら、きっと何かある

印を外し、一般馬車のフリをして

私たちは、領主の館までこそこそと移動する


…あ、貸本屋に新作入ってる

ぐぬぬ…行きたいけど我慢、我慢…っ

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