16:王子少女はいじられたくない!
「えええええ?!」
「は、はったりですよ、そんなの!」
ミソラさんの私を抱いた発言に、動揺する二人
いやあの、私、王子様の影武者なのに『抱かれた』と思われるのどうなんですか
逆じゃないんですかね…?
「う、嘘ですよねそんなの?!」
「嘘じゃないわよ!ね?」
「い、いやまあ、抱かれたのは事実ですが……」
抱き枕代わりとして、だけど
「なんですって?!そんな度胸がミソラさんにあっただなんて…!」
「失礼ね?!あんたたち」
メイドさんってこんなのだったっけ…?
もっと品行方正で礼儀正しいものだと思ってたけど…
「アカツキ!今日のところは引きあげよ!」
「わかったわ、ヒルヅキ!」
悪役のようなセリフを残しつつ、去ろうとする二人
「あ、ちょっと待って…!」
そこを引き止める
「ホシヅキさんは大丈夫なんでしょうか?
最近あまり見かけないんですけど…」
今日も二人しか出てきていない
彼女に何かあったのか、気になっていたのだ
「最近あの子、パパに呼ばれて、何かやってる事が増えたんですよ
出てこれないのはそのせいで」
「あ、そうなんですか」
とりあえず、怪我とかそういうのでないならよかった
「あと、セッカさんに助けられてから、ちょっとぼーっとする事が増えたかな?」
「思うところがあるのかもですね」
「むっ…」
ミソラさんは何かを感づいたのか、再び、私の腕を胸で挟み込む
「ご心配せずとも大丈夫ですよ!」
「心の悩みは、私たち家族が相談に乗りますから」
「じゃあまた夕食時に!」
笑顔で手を振るメイドさん二人
からかってくるところが無ければ、いい子たちなんだけどなぁ
「表情がころころ変わるミソラさんも、かわいかったですよ」
「あんたたちー!」
…どうやらミソラさんもからかわれてたようだ
小悪魔メイド怖いわぁ
そんな彼女たちが出て行ってすぐ
黒い燕尾服の執事さんが入ってくる
「ふぅ…やれやれ、あのかしましさ、誰に似たんだか……」
クロカゼさんは扉の向こう側を見て、ため息をついている
騒がしかったのを聞かれたらしい
「おっと…すみません、お待たせしたようで…」
「い、いえ、私が早く来すぎまして」
「お邪魔してるわ」
全員丁寧にお辞儀をする
ああ、この普通の対応…落ち着く
「えっと、あの…ちょっとお聞きしたいんですが…
ホシヅキさんは、クロカゼさんと何をやってるんでしょう?
ちょっと気になってまして…」
「ああ、確かにメイドが減ると気になりますな」
あごひげを触りながら、私の質問に答えてくれる執事さん
「実はホシヅキは少々、勉強を初めましてな
わたくしが指導しておるのですが、そのせいで
メイドとして出てこれる機会が、少し減ってしまったのです」
お勉強してるのかぁ…
「しばらくの間、どうかご容赦を」
「そうだったんですね…」
新しいスキルを身に着けるのかな?
ユニークスキルは特別だけど、それ以外なら勉強で覚えられるスキルもある
きっと…何か、頑張ろうって思えることがあったんだよね
…何もない私にも…いつか……
「あ、ちょっといいかしら?」
ミソラさんが執事さんに話しかける
「忙しい中、無理に頼んで申し訳ないんだけど…
王子の手掛かりは、何か掴めた?」
「…それがさっぱりでして」
元諜報員のクロカゼさんが探しても、手掛かりが無いとなると
そっちの線はかなり厳しいかな…
「『花』のヨルガオ村で、王子のような顔をした人物が、馬車に乗ったという情報なら…」
「それセッカちゃんじゃない?!」
「でしょうなぁ…」
渋い顔をする執事さん
なんていうかその…紛らわしくてすみません
「…ヒルガオ村は大丈夫でしたか?」
私も、王子様探索のついでに、お父さんへの連絡を
執事さんに頼んでいたのだった
「ええ、セッカ様の御父上と話をして、ご無事を確認しております」
「よかった…」
「どうやら、野盗が王子を探しに来ることはなかったようですな」
すぐにお城に向かって、『雪』の領主にも顔見せしたし
もう王子はヒルガオ村近辺にはいない、って認識されてるんだろうなあ
「年頃の娘の相手は難しい、という話題で話が弾みまして、つい長居してしまいました」
「お、お父さん…」
元気そうで何より…と、思っておこう
「さてまあ、その話は置いておいて…
今日の目的のマナー講座を始めますかな!」
「うっ…やる気はあるけど、これが辛い……」
「がんばれー!あたしも見守っているわよ!」
「ミソラさんも少々荒い部分がおありなので、この際矯正されるのもよいかと」
「えー?!」
こうやって、私は王子様の特訓を続け……
…そして二か月が経過した
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