106・王子少女はパーティしたい!
すぐやる問題が一通り終わった後に、立食パーティを開くことになった
今回の騒動を乗り切った記念、という感じだ
店長さん、『風』の親子、『花』の夫婦、『星』の領主
アワユキさん、アジサイちゃん、カグヤちゃん…あと、もちろんミソラさんもいる
他にも功労者はいるけれど、今回はこのメンツだけで集まることになった
………
……
…
パーティの会場は、明るい雰囲気が漂っていた
広い空間に、装飾されたテーブル
天井からはガラスの装飾品が吊り下げられ、カラフルな花と緑の植物が飾られている
会場の一角には、美味しそうなフィンガーフードや小さな料理の盛り合わせが並べられている
サンドイッチやフルーツ、ジュースやお茶もあるようだ
未成年も結構いるので、お酒は置いてないが、執事さんに言えば持ってきてもらえる
軽快な音楽が流れているが、これは『風』の発掘品の一つ『レコード』というもの
人がいなくても記録した音楽を流してくれる優れモノらしい
華やかなドレスに身を包んでいる人もいれば、なぜか鎧を着たままの人とか
いつもの黒水着の人とか、格好は様々だ
さて…そんな中、まず初めに会ったのは店長さん
タキシードを着ているが、着慣れていないようで、ちょっとよれている
「はあ~っ、ホントもう…無事でよかったよ」
店長さんは私の肩を掴んで、ため息を吐く
『ごめんね、心配かけて』
「聖女ちゃんのすごい回復魔法があったから
五体満足で、このご飯も食べられてるんだからね」
『そうだね…ありがとう、アジサイちゃん』
「えへへ…いや、魔力いっぱいぶっこんだ回復魔法なだけなのですよ」
幸せそうに食事をほおばりながら、アジサイちゃんはそう話す
アジサイちゃんは白いフリル付きのドレスを着て…着させられている
ヒルヅキさんがなんか聖女っぽいドレスを選んだ結果だそうだ
「普通の魔法でも、魔力を普通より突っ込めば威力が上がったりする
けど、それを大量に突っ込める人間は、そうそういないんだよね…」
なるほど…色々応用が効きそうな話だなぁ
「てんちゃん!あとでおべんきょうみて!
これわかんないとこだらけで!」
丈の短い、動きやすそうなドレスを着たカグヤちゃんは、店長さんに駆け寄り
『初めての魔法 火花編』と表紙に書かれた本を見せる
「あー、これ『初めての~』って書いてある割に難しいんだよね」
「そうなの?!」
「火花は火属性だから、それ以外の属性の人が初めてやるのは向いてないんだ」
さすが魔法学校卒業の貸本屋さん…魔法と本の知識は豊富だ
「…学校、本気なんだね」
「うん!」
満面の笑顔で答えるカグヤちゃん
小さい子が勉強を頑張ろうとしてるのはいいことだ
「あ、そうそう…これ」
本を出されて思い出したらしく、店長さんは自分のカバンから別の綺麗な本を出した
「それは…『ひかやみ外伝』の新刊…?!」
ミソラさんが、ちょっと怖いくらいに目を見開いて本を見つめている
表紙は、カバーを飾るとよく売れるという『みーさん』
改めて…やっぱりえっちな格好だよねぇ……
感覚がマヒしてたけど、改めてそう思う
そう思いませんか?同じ格好で、隣で座ってる人っ
今回は彼女の過去話のようだ
「この新刊、キミに渡してほしいって」
「い、いいの?!まだ発売まで数日あるのに……!」
ぱらぱらとめくり、その内容を確認する
「最後のページに、カチョウフウゲツ先生のサインまで…?!」
興奮しているミソラさんの脇から、最後のページのサインを見てみる
そこには、カチョウフウゲツのサインと、『よくがんばったね』と一言添えられていた
「ああああああああ!先生、ありがとうございます!ありがとうございます!」
本を抱きしめ、涙を流すミソラさん
『よかったねぇ』
その喜びっぷりがあまりにかわいかったので、思わず頭を撫でてしまう
「王子とカグヤちゃんと、あとアワユキさんの分も預かってるよ」
「わたくしも…?」
「ほほおー」
「ミソラくんから、同じファンだって聞いたから、ちょっとお願いしたんだ」
「おおおおお、こ、これは想定外ですわ…大切にさせていただきますわ」
ミソラさんほどは興奮しないものの、震える手で新刊を受けとる
アワユキさんはパーティも少しは慣れているようで、きちんとした黄色いドレスを着ている
「わたくしのほうは『頑張ってね』って書かれてますわ?!」
「わたしのは『きんにく!』だったよー」
『ボクはミソラくんと同じ『がんばったね』だったよ』
貰ったもの同士で、最後のコメントを見せ合う
さすが作家、ちょっとした一言でファン心をくすぐってくる
『ひかやみ』に影響されたミソラさんが頑張って、最後には平和を取り戻した
先生は、彼女の心の師匠でもあり、先生に彼女の努力を知ってもらえるのは、とても喜ばしい事だった
「お、王子…その、くすぐったいわ」
『…ああ、ごめんごめん』
ミソラさんを撫で続けていた手を離す
『ありがとう、店長くん』
「いやいや、彼に持ってけって頼まれただけだよ」
彼女の笑顔をもたらしてくれた先生と店長さんに、格別の感謝を
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