表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/108

103・王子少女は言い負かしたい!

『雪』の領主はあっさりと捕まえることができた

もはや戦力は残ってないし、居場所がわかればすぐだった


「なんやこれがボスかぁ、って思うくらいには簡単やったで!」

とはホシヅキちゃんの弁


今、王の間では、その『雪』の領主と、ウインドフォールが

後ろ手を縛られたまま地べたに座らされている

その前に立つのは、私とミソラさんと、執事さんの三人


『さて…よくもまあ、ここまで国を混乱させたものだ』

私は腰に手を当て、呆れた風に言う


「…ちがうんです、王子」

『何が違うと言うんだ?』

「全ては息子に脅されてやった事…我々は仕方なく従ったのです!」

動機はどうあれ、痛みを我慢して戦った自分の子供に責任転嫁とは…

…こんな情けない奴らは、徹底的に言い負かすことに決めた


『ほう、それは本当かい?』

「え、ええ、王子にたてつくなどありえぬのに、あいつときたら…!」

「そ…そうですそうです!まったく、許せません!」

ちょっと呼び水を与えると、驚くほどに乗ってきた

そこまで人のせいにしたいか…


『ウインドフォールくん』

「は、はいっ!」

『キミがぶち壊してくれたボクの演説、よく覚えてるよ?』

それを言うと、彼は一瞬で血の気が引いた青ざめた顔になった


『「王子はつくづく甘ちゃんだ!あの時殺せなかったのが、残念でならない!」

 …だったよね?』

「ちが…違うんです……命令されて…仕方なく……っ」

『キミの言葉、心に響いたよ

 ああ、彼は間違いなく、本気でボクを殺したかったんだって』

刑務所に閉じ込められたうっぷんが溜まってたのか

ノリノリで言ってたもんなぁ…


「違うんです…違うんですぅ……」

ただただ頭を下げて、違うと言い続ける


「両親が『雪』からの避難民でお金が無くて…というのも、やはり嘘でした」

執事さんが、調査結果と書かれた紙の束を見て、眼下のウインドフォールを睨みつける


「…わたくしが調べた結果

 両親は『雪』の上流貴族で、領主と共に搾取する側でした」

「嘘しか言わないわねこいつ…」

「違うんです…」

嘘どころか、もはや『違う』としか言わなくなったウインドフォールはひとまず置いて

『雪』の領主の方へ


『さて…息子に脅されたにしては、キミの出費が多いね?』

執事さんから渡された、調査結果の紙を見ながら話す


『別荘なんて二桁も持っているし、キミの接待を頼まれた

『花』や『風』の風俗業の店が、何軒もあるそうだよ?』

国をまとめる実力があれば、多少の出費は見逃される場合もあるけれど…

これは明らかに度を越している


『息子はキミが贅沢することまで強要していたのかい?』

当たり前だが、脅迫者が「贅沢しろ!」なんていう事はあり得ない


「そ、そうではありません!それは息子が、私の名前で勝手に…!」

ああ、これは…フレーダがひねくれたのもわかる気がする

徹頭徹尾、自分の事しか頭にない


『…責任逃れも大概にしろ!』

腹が立ったので、思わず大声を上げてしまう


『お前の息子が、見せかけ以外で女性をたらしこむなどありえないし

『息子』と言っている時点で、お前の嘘は明白だ!』

…いや、個人的に女の子好きな可能性もゼロではないけど…

カグヤちゃんにいい反応してなかったし、それは無いはず


「あ、あああ…!まさか…まさかあいつ、喋ったのか……?!」

私の言っている意味を理解して、愕然とする『雪』の領主


「裏切りだ!よ、よくも絶対の秘密を、王子なぞに喋って…!」

『よくもと言うなら、罪をなすりつけようとした相手に

 よくもまあそんな事が言えるものだ』

自分が裏切るのはいいが、相手が裏切るのは許さない

…それはずるい


『そして、もう一つ』

調査結果の書類の、次のページを見る


『隣国に亡命しようとしていたね?

 引き出しに書きかけの手紙が残っていたよ』

見たページには手紙も挟まれていた

それを取り、中を読み上げる


『「正統な支配者である我らは追い出されようとしている、どうかそちらで保護してくれないか」』

「こんな事までしようとは…!」

「あんたが隣国で保護されてしまえば

 元支配者の地位を利用して、隣国が我が国に攻め込むための口実を手に入れてしまうわ」

「次の戦争を引き起こす、最大の悪手ではないですか…!」

「でも、あんたは自分さえよければ、どうでもいいのよね?」

「……」

何もいう事が無くなった『雪』の領主


『…もはや弁解の余地は無い』

ページを閉じて、有罪で決まりだと告げる

すると、もう言い逃れできないと思ったのか、私に向かって叫び始めた


「何が…何がいけないと言うのだ!」

え…そこから?


「統治する側が搾取する!当たり前の事だろう?!

 お前だって搾取する側の癖に、何を偉そうに!」

数か月前まで、王子ではなかった人間に言われても…とは思うが

『搾取は当たり前』を主張する彼に、当たり前のことを教えよう


『…恨みを買いすぎだ』

自分の税が、暮らしに役立つ使われ方をするなら

高くてもまあ、しょうがないか…と思うだろう

けれど、貴族の贅沢に使われるだけならば、そりゃあ恨まれるだろう


「貴族なら恨みぐらい、買うのが当たり前だ!」

それは、あなたの中でだけの当たり前だと思うんだけど…

…立場に守られて、世の人たちを軽く見ているんだろう


『…そうか、なら会わせてやろう

 お前たちに恨みを募らせている者たちに

 知ってもらおう…恨まれるとはどういう事なのかを』

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ、広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして

評価してもらえると、たいへん嬉しいです!

さらに面白いと思ってくださった方

同じく広告の下にある『ブックマークに追加』も押して頂けると

とてもとても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ