101・王子少女は聞き出したい!
~セッカside~
『い…やったあああああああああああああああ!!』
フレーダの降参を効いて、私は叫ぶように声を上げた
「やったわね!」
『降参させた…よ!』
ついに…ついに最初の目的を果たしたのだ
王子のフリをして、戦争を止める
そのために、今まで頑張って来たのだ…!
まだ細かい問題はあるけれど、一番の山場は超えた!
あとは…
しかし、そこで気が緩んでしまったのがいけなかった
『くっ…ぐふっ……あああああああああああっ?!』
痛みが一気に襲ってきた
今まで耐えてきた分が、流れ込むように
「王子?!」
『ごめ…ん、後は…たの……』
耐えきれないと思った脳が、意識をシャットアウトする
そして私は…夢を見る余力も無く、眠り続けることになる
………
……
…
次に目を覚ましたのは五日間の後…
事態は解決に向けて動いていた
気絶したり、降参した兵たちは全員捕まった
しかし、中央だけでは刑務所の人数がオーバーするという事で
それぞれの領地に分けて収容することになったらしい
領主たちは、捕まえた兵たちを運ぶために、一旦、中央からは離れている
「もー、何度も心配させないでよね…」
「…ごめんなさい」
「ともかく、無事でよかったのですよ」
…ちょっと眠りすぎたようで、身体がちょっとふらふらする
魔法を詠唱する時に使った杖をついて、歩くことにする
いやまあ、杖としては本来の使い方なんだけど
魔法以外で使って大丈夫なのかな…?なんて気がする
「起きたばかりで悪いんだけど…
食事を済ませたら、フレーダと面会してもらえるかしら」
「どうしたんです?」
「ウインドフォールはホシヅキちゃんが捕まえたんだけど
『雪』の領主には逃げられちゃってね…居場所を知ってるか聞きたいのよ」
「私たちが訊ねても、王子と話したいって言って聞かないのですよ」
「それはしょうがないですね…行きましょうか」
ヒルヅキさんに軽く食べれるものを作ってもらい、それを頂いてから収容所へ
…なんかヒルヅキさんのスキンシップが、前にもまして激しくなった気がするけど
まあ、それはひとまず置いておこう
「うわぁ…」
前に訪れた中央刑務所は、半壊していた
あちこちに、ハンマーによって壊された跡がある
『テンカウント』で強化された兵たちが
コガラシくんを脱出させるために壊したのだろう
無事だった部分で、フレーダが収容されているらしい
「こちらです」
看守さんに案内され、再び面会室へ
前回と同じ看守さんだったのが、ちょっとだけほっとする
「大変だったわね…無事でなによりだわ」
「いえ、私は当日非番だったもので…同僚が入院してます」
「刑務所の皆さんの、全快をお祈りするのです」
そんな会話をしながら中に入る
そこには…
『…やあ、フレーダくん』
ガラス越しに、黒髪美形の少年がじっと座って待っていた
「お前、ずっと寝てたんだってな」
『いやはや、任せろと言っておきながら、申し訳ない』
杖をついて彼のガラスの前まで移動し、椅子に座る
「それだけお前もギリギリだったって事か…」
『あの技術は、安全に使えるようになるまで封印すべきだね…そう思うだろう?』
「ああ、まったくもって、その意見には同意する」
同じやばいアイテムを使った者同士の、奇妙な会話
「俺の予想通り、魔力をほぼ失ってたんだってな」
『…コガラシくんから聞いたのかい?』
「ああ」
ううん、話がどんどんややこしくなる
誰がどこまで真実を知ってるか、一度紙に書いてまとめた方がよさそうだなぁ…
「お前も俺の嫌う、弱いくせに上に立つ人間になった……」
『……』
「だが……その力の無い人間が
誰を搾取するでもなく、意地と協力で俺たちを打ち破った」
自分の思っていた真実を、真っ向から否定され、破られた
けれども…
「…完敗だ」
それでよかったんだと、そう思っているかのような
…そんな笑みを、彼は浮かべた
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