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100/108

100・王子少女は逃げ出さない!11

~フレーダside~


また振動が響く

隕石が三回落ちてくるなどという、ありえない異常事態

これ以上隕石が落ちたら、大空洞が崩壊するのではないだろうか

恐怖のあまり気絶する兵士まで出始めている


(「いいかげん、降参する気にならないかな?」)

(「…お、お前にできて俺にできねえはずがねえ!

 フルパワー魔力充電で、お前が出てこざるを得なくなるよう

 城下町の奴らを皆殺しにしてやる…!」)

(『!そこまでなりふり構わないか?!』)

そうだ、俺を追い詰めた事、後悔させてやる…!


「おい!魔力を最大で充電しろ!動ける全兵士にスキルをかける!」

「しょ、正気ですか?!」

「この連続隕石は、王子が俺と同じ充電器を使ってるせいだ!

 あいつにできて、俺にできないはずがない!」

「…わ、わかりました!」

ウインドフォールに命令を飛ばし、魔力を充電させる

見てろ…俺は負けねえ!


ずっ…ずっ……


最大と言ったのに、徐々にしか注入量を増やしていかないウインドフォール

遠慮しやがって…次の隕石がいつ落ちてくるかわから……


「う、ぐ…ぐああああああ!い、いてえ!

 うおああああああああああああ?!!!!」

あまりの痛みに、すべてを忘れてのたうち回る

なんだ、なんだこれ…こんな、こんな痛みが……?!


「や、やはり無理だ…!フレーダ様!」

ストップをかけられ、魔力注入量を上げるのは中止に

く、くそっ…何で、何でお前は耐えられるんだ…王子……!


(『四発目だ!』)


俺の挑発に焦りを感じたのか、すぐさま隕石を降らせてきた

そんなに早くできるのかよ?!

俺は少し注入量を上げてだけで、ギブアップだったのに…?!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお?!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!


大きな轟音、四度目の地響き

壁や天井の一部が崩れ、地面に落ちてくる


「こ、こんな…ひいいいいいいいっ!」

親父は椅子の下に隠れ、落ちてくる石から身を守っている

半数の兵士が気絶し、もはや使い物にならない


(「お、俺は…能力のないやつらが上でのさばる

  クソったれな世を変えるんだ…!邪魔をするな……!」)

(「コガラシくんもそんな事言ってたけど…」)

(「……一時期は共感もしていた、だが…」)

だがって何だ?!

お前は俺の理想を解ってると思っていたのに…!


(「能力があるか無いかが、上に立つ条件じゃないわ」)

(「なんだと?!」)



(「仲間を、国民を…皆を幸せにする気が、あるかどうかよ」)



………

俺は、あまりに理想的すぎるその台詞を聞いて

思考が一瞬停止してしまった


(「力が無いやつに、そんな意思など持てるはずが…!」)

(「あんたも、コガラシくんと同じく、何かがあったんだろうけど…」)



(「お前の体験だけで、全てわかった気になって

  周りを巻き込むのやめろクソヤロー!!!」)



(「???!」)

耳鳴りがしそうなほどの、特大の声量をぶつけてくる、王子の補佐官


(『…み、ミソラくん…?』)

王子が唖然としている

普段からは考えられないくらい、怒っているようだ


(「『上』があんたに優しくしてくれたなら

  たとえ力なんて無くても、ついていってたんじゃないの?!」)

(「そ、それは……!」)

(「結局、屁理屈並べて、あんたが上に立ちたいだけでしょうが!!」)

(「ぐっ……!」)

俺が上に立てばすべてを変えられる

そう思ったのは事実だ

そのために、自分の有能さを見せつけ、暴れ、逆らえないようにしていった

いいやつも紛れてるのかもしれないが、どうせそいつらは他の奴の食い物にされる

だったら俺が食ってやった方がマシだと、そう思ってた



『…五発目だ!』

「なっ…?!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!


再びの揺れ、再びの恐怖

もはや動ける人間など、ほぼ残っていない

あちこちから、崩壊の音が聞こえる


こいつ…大空洞ごと潰す気か…?!

あと数発も打てば、ここも崩れるだろう…

それを狙ってる…?!


「た、大変です!外に出ていた物見から連絡が…!」

まだ動ける兵が残っていたのか…?!

揺れと落ちてくる岩を避けながら、一人の兵が外部からの連絡を伝えに来た


「どうした?!」

「川が…川の水が、大空洞を通らずに、直接海へ流れ始めました…!」

「な、なあっ……?!」

複数の隕石により、水の入ってくる入口と、そこに至る川がズタズタにされ

流れが変わってしまったと、物見が言っているらしい


(『偵察から連絡をもらった

  …ようやく効果が出たようだね』)

(「ま、まさか…お前……!」)

(『隕石をぶち込みまくって、大空洞に水が流れなくする

  流れ込む水が無くなれば、もう発電は行えない

  人のいない秘境に発電所を構えてくれて、本当によかったよ』)


「あ、ああ…ああああああああああああっ……」

地底に流れる川の、水量を見る

いつの間にか、いつもの高さの半分にまで落ち込んでいた

流れがもうすぐ止まる、発電ができなくなっていく

俺に流れ込んでくる魔力が、無くなっていく…!


(『大空洞を壊すのは、もっと隕石が必要だろうし

  短い方のプランが発動して助かった』)

なんて…なんてやつだ…!

地形を変えて、発電所を機能不全にするなんて、そんな馬鹿げた発想を……!


「そ、そんな、そんなばかな…ありえないいいいいいいいい!!」

椅子の下で縮こまっていた親父が、もはや勝ち目は無いと半狂乱になった


「逃げるぞ!隕石の降って来た場所以外にも、通路はあっただろう?!」

「ま、待て親父!気絶したやつらが…!」

「そんなもの知るか!我が生き延びる事が最も大事だ!」

「…残念です、潜伏して再起を図りましょう」

親父とウインドフォールは、逃げる算段を始めた


「ま、待てって言ってるだろう…!」

全身に痛みが走る

発電所の供給が無くなり、魔力は尽きてしまった

能力を使えない俺一人じゃ、こいつらを助けられない…!


「うるさい!」

「うごあっ?!」

俺はウインドフォールに、兵士の兜をぶつけられて、もんどりを打って倒れる

その間に、やつらは空洞の先、無事な方の出口に向かっていってしまった


「…ぐっ……」

仕方ねえ……


(「……降参だ」)

俺は、やつらの手を借りるために、降参を宣言した


(「ここに隕石の恐怖で気絶したやつらがいる、こいつらを助けてやってくれ」)

(「…どういう風の吹き回しだ、フレーダ」)

(「コガラシ…お前と馬鹿やってた頃、他に一緒に暴れた仲間がいただろう

  今、気絶してる中にそいつらがいる…」)

…あん時は楽しかった……

他の奴らにとっては、ろくでもない連中だったんだろうが、それでも…


(「それでも、見捨てられねえ…

  俺は、お前だって助けるつもりだったんだ

  仲間だけはよぉ…」)

自分の事を理解し、共にいてくれた数少ない仲間


(『…了解した、あとは任せたまえ』)

…憎たらしいが、約束は守るやつだ

大空洞が崩壊しなければ、こいつらも助かるだろう


「『皆を幸せにする気が、あるかどうか』か…」

空洞の向こう側、海へつながる道を見つめて、一人呟く



「そんな事…当たり前すぎて、忘れてたぜ……」

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