10話
ニコニコと破顔一笑のマリィ。このポジティブシンキングは尊敬に値する。素晴らしいガッツだ。社畜根性と同じで、生き残るには長けていないが。
俺は溜息をつきながら、地面に屹立した問題の特大剣の刃に手を添えて、スキルを発動させた。
「なになに? 何してるの?」
「錬金術師の初期スキルには『物質調査』がある。それを使って、クイーンデッドの武器性能を検めている」
錬金術師の真骨頂は道具の作成と強化だ。言わば道具の専門家である。そんな錬金術師が未知の道具を無理解のまま使うなんてプライドが許さない。特にこいつは出自不明の特大剣だ。どういう特性を秘めているのか調査すべきだろう。
クイーンデッドに秘められた力を紐解いてゆく──。
「……マリィ。君は武器の希少価値については知っているか?」
興味津々といった様子で眼を輝かせているマリィに訊ねる。
「レアチーズケーキなら知ってる! お母さんが焼いてくれるの!」
「そうか。俺も好きだぞ。だがレアしかあっていない」
この世界の人間ならば冒険者ではなくとも知っている常識なのだが──と思ったが、適性武器の概念を無視してでもこの特大剣を振るう事を志すマリィにとって、武器のレアリティなんて興味の埒外なのかもしれない。
俺は苦笑しながら続けた。
「武器には希少価値が定められている。低い順にN、R、SR、SSR、URで、全部で五種類ある」
「知らなかったわ! 教えてくれてありがとう! その希少価値ってどんな基準で決められてるの?」
「R以上の武器には『宝玉』と呼ばれる核がある。魔素の凝縮体で、武器がそれぞれ備えている『武器スキル』の源だ。希少価値はその宝玉の色によって決定される」
ちなみに魔素とは俗に言う魔力だ。大気中に存在している物質で、冒険者はこの魔素を消費する事でスキルを発動させている。
「へー……なんだか冒険者の等級みたいね」
「冒険者の等級は宝玉の色を参考にして定められたという話だからな」
俺は腰のポーチを漁って、一つの宝石を摘まみ上げると、マリィに手渡した。
親指の爪ほどの大きさの薄紅色の珠。美しくも血を連想させるその色味は、どこか不吉さを漂わせている。
「赤がR。青がSR。金がSSR。そして虹色がURとなる。宝玉は迷宮や古代遺跡から出土する他、魔物がドロップする場合も多い。というか、宝玉は魔物の核そのものと言っていい」
宝玉の色は凝縮されている魔素の質と量で変わるという。赤色は最弱の証として、半人前の冒険者でも倒せる魔物が落とす。青の宝玉を核としている魔物も熟練の冒険者の手にかかれば強敵という存在でもない。
問題は金色の宝玉からだ。冒険者の藍鉄級と天金級の間には底の知れない深い谷があるが、青と金の宝玉に秘められた魔素にも雲泥の差がある。
金色の宝玉を持つ魔獣は、それこそ天金等級の冒険者でもなければ打倒できないとさえ言われている。
「俺達冒険者が強くなるには、冒険者レベルとジョブランクを上げるか、SR以上の武器を手に入れて使いこなすか、そのどちらかになる」
「レベルもジョブランクも頑張って上げるわ! もちろんクイーンデッドを使えるようになったらだけどね!」
「…………」
「ちなみに、クイーンデッドの希少価値って何なの? 少なくともSR以上だとは思うんだけど」
「URだ」
「は?」
お読みいただきありがとうございます。
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