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TSローグライクダンジョンへようこそ  作者: ななぽよん
【一章】人工壁のシンプルなダンジョン
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9話:元に戻った俺

 暇だ。暇すぎる。

 小学校の時、なんとなく学校に行きたくなくて、サボった事がある。万能感でエキサイトした俺だが、その高揚はすぐに消沈したことを覚えている。

 今の俺は幼女化したせいか、ちょっとメンタルがアンニュイになっている。

 妹の部屋の中で親バレしないように静かにしていないといけないということにストレスを感じている。


 暇だから妹の部屋を物色した。

 あれ、これ見たことある漫画だなと思ったら、漫研の先輩から借りたちょっとエッチな漫画だった。おい妹よ、何勝手に俺の部屋から持ち出してるんだこの野郎。あ、でもそのおかげで消失免れたんかこれ。サンキュー妹よこの野郎。


 あまりにも暇になったので、俺は部屋から抜け出した。

 あまり物音がしなさすぎても、おかしいだろう?

 俺はこそこそと部屋を出て、廊下をぺたぺた歩き、隣の自分の部屋に入った。

 よくよく考えると何も工作してないなと気づき、ベッドの布団にクッションを入れて膨らみを持たし、万が一カーチャンが部屋に侵入してきても寝込んでいるように見せかけておく。

 携帯ゲームでも持っていこうかなと思ったが、思い直して勉強道具をトートバックに入れて、幼女の身体でよいちょと抱えて妹の部屋に戻った。

 別に俺はそこまで真面目ではないが、幼女化したせいで勉強が遅れるのは不本意であった。


「うんしょっと」


 妹も背が高いわけではないが、妹の椅子に座るのに背伸びする必要があった。

 幼女姿で勉強するのも新鮮である。問題は卓上鏡にちらちらとかわいいわちの姿に見とれてしまい、あまり集中できないことだ。

 昼飯は妹が用意してくれておいた、ブロック状のプロテイン入り大満足バーだ。タンパク質は筋肉作るだけじゃないんだよ。肌と髪にもいいんだよ。と、妹が言っていた。まあ今の俺はパーフェクト美少女なのだが。もしゃもしゃ。


 16時。やっとこの時間がきた。

 昨日ダンジョンへ入ったのが20時ごろだったので、そろそろゲートが復活しているはずだ。

 俺は自分の部屋へこそこそと戻るとする。その前に、妹の部屋の姿見鏡でわちのかわいい姿を眺めておく。見納めじゃ。

 よし、行くぞ!


 ぐわりと視界が揺れる。

 しゅた。俺は華麗に着地した。

 いつものダンジョン。いつもの光景。安全確認よーし。

 そして俺も無事に元の姿に戻った。良かった。戻らなかったらどうしようかと思った。


「うん? 戻ってるぅう!?」


 待て待て待て待てちょっと待て!

 どうしてダンジョンに入って男の姿に戻っている!?

 この時点で戻っちゃ駄目だろ! 駄目じゃね!?

 うぉぉおおい!? この展開は予想していなかったぁ!


「つまりこれって、そういうことだよな……?」


 そういうことである。

 ダンジョンから元の男の姿で帰るには、生還しろと言うことだろう。


「んなあああ……」


 やるっきゃねえ!

 幼女の姿ならともかく、仮にも今は男の姿だ。いや仮じゃねえ、この身体が本物だ。

 女児ワンピースを着た俺はムキッとダブルバイセップスをした。くそ、妹の肉体とは似ても似つかない。

 だが、やれる。やれるはずだ!

 やれなかった。棍棒野郎に殺されて俺は死んだ。


「ふえぇ……」


 俺は頭を抱えて、自分の部屋の床にのたうち回った。

 やっぱり死んだら幼女に戻ってるのじゃあ……。

 俺はしくしくと泣きながらベッドへ潜った。




「お兄いるー?」

「おじゃましまぁーす」

「……」


 妹が部屋に入ってきた。星野さんっぽい声もする。

 俺はひょっこり布団から顔を覗かせた。


「やったぁ! 戻ってない!」

「ほんとだ! ヒメちゃのお兄さんかわいい!」


 よくねえのじゃ……。

 妹は布団を剥がして俺に抱きついてきた。

 こんなみっともない姿を見ないでほしいのじゃ……。


「なぜ星野さんもいるのじゃ……」

「かわいいお兄見せたかったし」

「アズマくんがかわいかったので」


 妹に抱えられたかわいい俺のぷにぷにほっぺを星野さんがつんつんしてきた。

 うへへへへ。


「それでお兄ちゃん、ダンジョン入ったんでしょ? もしかしてまた生還したの?」

「違うのじゃ。入ったら男になって、死んだら幼女に戻ったのじゃ……」

「うはっ! そうか、そうなったかぁ」


 星野さんは話しがわからずきょとんとしている。

 ざっと幼女化した経緯と、死んで元に戻ろうとした事と、その結果を説明した。


「なるほど……。つまりアズマくんはしばらくその姿ということね」

「やったぜ」

「よくねえのじゃ」


 妹は俺をベッドから引き釣り出した。


「とりあえず風呂だな風呂」

「ふぇ?」


 つるつるの俺は脱がされて、お風呂に担ぎ込まれた。

 妹はともかく星野さんも一緒だ。


「うにゃあ! 言っておくが、わちは中身は男じゃぞぉ!」

「今のアズマくんはかわいいから良いと思う」

「問題ないよね?」


 わちの目の前にはぽゆんぽゆんしたスライムが……。いやこれ以上は言及するべきではない。わちはぎゅっと目を閉じた。


「一日経ったポーションは効力弱まるから駄目なんだけどぉ、でもまだ光ってるから大丈夫かな? 次からは一回で使い切ったほうがいいよ」

「うんうん」

「それでぇ、浴槽の中で使うと無駄がないよ。まずは原液をね、こうやって顔に塗って」

「ほむほむ」

「髪は濡らしてからの方がいいかな。身体にも塗り込んでいってぇ。肘とか膝と、あとかかとも念入りに」

「ふにゅふにゅ」


 星野さんはポーションの使い方講座をしにきたようだ。そのついでに俺も風呂に連れ込まれたと、そういう流れだ。

 そして俺は恥ずかしがっていたらおもちゃにされた。


「ぬああ! くすぐったいのじゃあ!」

「すっごいすべすべ! アズマくんつるつるだよ!」

「しのっち。この子はティルちゃんだから。いいね?」

「りょーかいヒメちゃ。ティルちゃんかわいい! んふふふふっ」


 妹と星野さんが前と後ろから、ぬるぬるを手と身体でわちの身体に塗り込んでくるぅ!

 ありがとうございます!



 ぶぉぉぉぉ。

 俺の長いつやつやの銀髪はタオルを巻かれてドライヤーを当てられていた。

 三人でドライヤーを使いまわし、髪を乾かすために扇風機も一緒に回っている。


「あたしにいい考えがある」


 そう言って妹がスマホで連絡をしたのは北神くんだった。


『アズマくんの妹ちゃん? どうしたの急にビデオ通話って』

「うん。ちょっとお願いがあるの」

『……なに?』


 北神くんの声から少し警戒の色が見える。当然だろう。湯上がりの親しくない女の子からいきなりビデオ通話がかかってきてお願いなんてされたら、誰だって罠を感じる。いや、ニッシーは飛びつきそうだな。


「とりあえずまずはこの子を見て」


 妹はスマホを俺に向けた。湯上がりと羞恥プレイで顔を赤く染めた美少女の俺が画面に映し出される。


「北神くん、どう思う?」

『うん。かわいい子だね』

「これ、あたしのお兄ちゃん」

『うん。……うん?』


 聡明な北神くんもさすがに思考停止したようだ。

 事情をかくかくしかじかのじゃのじゃ話した。


『それで僕にどうしろって?』

「お兄ちゃんのこの状況を、北神くんのダンジョンから出たアイテムでこうなったってことにできないかなって」


 なるほど。いいアイデアだ。

 北神くんのダンジョンは超巨大ダンジョンで、探索もまだまだ終わっていないらしい。そんなダンジョンだから、美少女化するような未知なるアイテムが出てきてもおかしくない。


『それは……難しいかもしれないね』

「頼むのじゃ。助けてほしいのじゃ……」

『こんなかわいい子に頼まれたら断れないね……』


 北神くんはちょろかった。俺がかわいすぎるのが悪いのかもしれない。


『それじゃあこうしよう。学校を仮病でサボったアズマくんは、僕と一緒にダンジョン体験に入った。そこでうっかりトラップに引っかかってしまったアズマくんは、身体が銀髪の少女になってしまった。ちょっと無理があるかもしれないけど……』

「うんうんいいねそれ。そういうことで。お兄のダンジョンの事は秘密だよ北神くん。しのっちも」

「わかったー」

「よろしくなのじゃ」

『それで、こんな話しを僕とするってことは、アズマくんはその姿で学校に来るってこと?』


 ぐぬぬ。いつまでも仮病でごまかせるわけもないし、学校を休み続けるわけにもいかない。だっていつかは元に戻るつもりなんだから。それが明日か、一週間後か、一ヶ月後か、一年……はいかないと信じたいが、とにかくダンジョンに入って生還しないと元に戻れないわけだから、そういうことになるかもしれない。


「大丈夫ティルちゃん安心して。あたしのセーラー服貸してあげるから」

「ぬああ、そんなことは心配してないのじゃ……」

「大丈夫だよ。私も協力するから!」

「ほ、星野さん……!」


 星野さんはゆっくり首を横に振った。


「しのお姉ちゃんって呼んで」

「……しのお姉ちゃん」


 俺はしのお姉ちゃんにぎゅっと抱きしめられた。しまった! 星野さんも妹と同じ、やばい方向の人だ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王道から外れて斬新で面白いと思います。 是非頑張ってください [一言] ゲイやレズ陣営が発狂して喜びそうなダンジョンですな。
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