68話:真相が明かされクライマックスへ!
※従妹が不快と言われたので少し加筆修正……してもほとんど変わらない改稿したのじゃ。
おせちもぐもぐしていたら、リビングに現れたおじさんに頭をぐりんぐりんと撫でられた。
「ちっちゃくなったなぁタカシ!」
た、タカシじゃないのじゃ! ティルミリシア=フィレンツォーネなのじゃ!
「だ、だれー!?」
同じくらいの背丈の従妹がわちを指差した。いや、わちより背が高いな。大きくなったの。
「ティルちーだよ。みょんみょん」
妹は急に電波を受信した。というわけではない。従妹のあだ名だ。
「わたし、みょうかだよ。ティルちー!」
「うむ。ティルちーじゃ」
えへん。
「服かわいー! わたしも着たーい!」
「こりゃ! にゅがすな!」
妙果ちゃんがわちに襲いかかってきた。む、剥かれるー!
へ、へるぷみー!
帯を掴まれ引っ張られ、ぐるぐると回った。
「おじさん、今年も来たの?」
「ほれ。お年玉だぞー」
「ありがとうおじさま!」
妹がげへへへと笑いながらポチ袋を2つ受け取った。隠しきれてないぞ妹よ。
それよりも助けて欲しいのじゃが!
「みょんみょん何歳になったんだっけ?」
「8歳だよ! 小学3年生!」
「そっかー。大きくなったねぇ」
妹が8歳女児に負けるのじゃロリ吸血鬼……という顔でわちを見た。
だ、だってこやつわちより背が高いし! 最近の子供は大きいのじゃ! ぬああ!
「ティルちー変な髪ー。何年生?」
「1年生じゃ」
「じゃあわたしお姉ちゃんだね! お姉ちゃんって呼んで!」
「ち、ちがっ」
小学1年生じゃないのじゃ! 高校1年生なのじゃ!
引っ張るな引っ張るな。わかったから! 服貸すから! ぬぎぬぎ。
そしてわちは完全に剥かれた。
「しくしく」
「ねーねー! ヒメねーね! 着せてー」
「はいはーい」
そして従妹がハイカラさんになっていく。
「どう? どう?」
「かわいー! かわいー!」
従妹が鏡の前でくるくると回った。うむ。わちほどではないがかわいい。へぷちっ。しゃむい。
そんな全裸のわちに、おじさんはコートを肩にかけてきた。すまんのう。
いや、そもそもおたくの娘の教育の問題じゃぞこれ。
「ふむ。全裸幼女コート……」
危険すぎる発言をしたのは妹だ。おじさんだったら叩き出しているところだった。危ない危ない。
おじさんは信頼していいよな? いいじゃろ? あやしい。パパンの弟じゃしな……。
ああ、そうだ。
「わちの部屋には入らぬように厳命しておくんじゃぞ。ダンジョンがあるからのう」
「いいねえダンジョン。ちょっとおじさんにも入らせてくれよ」
「ダメじゃぞ? こうなるからの?」
わちはわちの身体を胸を張って見せた。ちまんっ。
「だからじゃないか」
「お、おじさん……」
「いやちがっ。若返るってことだよ」
ああなるほど。ぴちぴちぷにぷにの姿じゃと想像が付かないが、若返りは古来から全人類の夢じゃしのう。パパンもよく目が腰が膝がお腹のぷにぷにがと言っておる。
お腹のぷにぷにはわちもあるのじゃが。
「なんのはなしー?」
「むっ?」
妙果ちゃんがててててとやってきた。
「おじさんはまだまだ若いって話じゃ」
「えー? パパはもうおっさんだよ?」
おじさんは大ダメージを受けて倒れた。
こ、この幼女……。切れ味が尖すぎる……。危険幼女すぎる……!
まあ得てして子供は、特に女児は攻撃力が高いものである。
「ちょっとわちは着替えてくるのじゃ」
いつまでも裸コートではいられぬ。
ふりふりのゴスロリ着物に着替えるのじゃ。そして見せびらかすのじゃ! ふふん。
そしたら今度はこれを着たいと妙果ちゃんが脱がそうとしてきた。ぬああ!
幼女なんかに絶対負けない!
負けた。脱がされた。剥かれた。
「しくしく……」
「ティルちー弱すぎる……」
ちなみに妹がこの様子を撮影していたが、動画は発禁である。
もう脱がされてはたまらぬと、地味なもこもこセーターを着た。
ふぅ。やっと落ち着いてわちはリビングでお茶を啜る。じゅるる。
妙果ちゃんは妹が部屋に連れて行ったから静かじゃ。
さてはて。スマホを開いてみたら、いろんな人からLIMEで『あけおめ』とメッセージが届いていた。ぽちぽちと返信していく。
その中にニッシーが混じっていた。ニッシーは後でいいか。
いや、とわちは思い返す。先程の夢のことじゃ。
夢の中にあった、吸血鬼(仮)がどうしても気になる。なんじゃその(仮)て。
そしてわちは思い出した。ニッシーにはティルミリシアの設定イラストを過去に見せていたはずじゃ。LIMEでちょっと尋ねてみるか。
ティルちー『のうのう。いつだったか、ティルミリシアの設定見せたことあったじゃろ?』
ニッシー『おう。どした?』
ティルちー『種族なんだったでしょうか!?』
ニッシー『なに? クイズ?』
ティルちー『うむ。当たったら北神くんのおぱんつをプレゼントじゃ』
ニッシー『なんだと!? いらねえ!』
ティルちー『なんじゃと!? 価値ある一品じゃぞ!』
おかしいな。北神くんのおぱんつならレジェンドユニークアイテムのはずじゃが。
お茶を入れ直してみかんを手に戻ってくると、ニッシーから返信が来ていた。
ニッシー『答えはサキュバスだろ?』
ぶー! 残念!
……え? いや、もしかして、わちサキュバスだったの?
ティルちー『吸血鬼じゃなかったかの?』
ニッシー『なんで出題者が疑問系なんだよ』
え? まじでわちサキュバスなの?
サキュバスってあれじゃろ。えちちなモンスターじゃろ。まあわちは魅力的じゃが? せくしーてぃるちーじゃが?
ニッシー『俺が吸血鬼よりサキュバスの方が好きって言ったんだったか。それでアズマは(仮)を付けて』
待て待て待て。
ニッシーおまえー! おまえのせいかー! (仮)が付いてたのはー!
ニッシー『自身を吸血鬼と思い込んでるサキュバスの設定に』
なんじゃとぉ!?
ティルちー『まじで?』
ニッシー『まじで。年明けダンジョン行ってくるからまたな』
まじで?
ちょっと冷静に考えるのじゃ。素数を数えて落ち着くのじゃ。素数ってなんじゃ?
わちのダンジョンは憧れを形と成す、と今までの被験者からするとほぼ確実であろう。
わちの願いはなんだったじゃろうか。
のじゃロリになる? いやそれは違う。
ダンジョンカーストで人気者になる? それはそう。だけどこれは本質ではない。
俺は俗物的で、もっと単純な男子高校生の願いを持っていた。
それは、「女の子にモテモテになりたい!」という全ての男が持っている原始的な願いである!
「んぐぐぐぐ」
わちは頭を抱えた。つるりとした長い銀髪がテーブルのみかんに垂れ流れる。
わちは否定できなかった。
だって、能力を勘違いしていたとすると、すんなり納得いく部分が多いのじゃもの。
サキュバス的な能力と言ったら、誘惑や魅了といったところじゃろう?
思い当たる節が多いのじゃあ!
「ぬああ!」
「どしたティルちー。またおかしくなった?」
「のぅ妹よ。わちサキュバスなのかもしれぬ……」
「そのちんちくりんで?」
ちんちくりん言うな。
魅力たっぷりなぷにぷにぼでーじゃろがい!
スマホのインカメラで自分を映して自撮りした。ぱしゃ。うむ。わちかわいい。
「吸血鬼を諦めるな! 吸血鬼から逃げるな!」
「わ、わちはこれからはサキュバスとして生きるのじゃ……」
「無理だ! その路線は無茶だって!」
ティルミリシアの種族解釈の違いでユニット解散の危機!
「まあそれはそれで置いといて」
「ちょっとわち真剣に悩んどるのじゃが」
「いやニュース。ほら。ダンジョンの話してる」
んむ? 新年でおめでた! な番組ばかりの中で幻想の生物が街中を闊歩している様子が流れていた。
おかしい……。ダンジョンからはモンスターは出てこないはず……。
放置されたダンジョンからモンスターが溢れ出るという噂が流れ一時期騒がれていた時期はあった。そのせいで去年の東京オリンピックは延期になったり大きな影響が出たのだが、結局ダンジョンゲートはモンスターは通れないという検証結果が出ていたはずだ。
「ああそうか」
モンスターは出入りできなくても、動物は入れる。犬を連れてダンジョン攻略をするダンユーバーもいるのだ。
ならば野良猫が不意にダンジョンに入り、変身して、ダンジョンから出てきたとしたら二本足で立って人の言葉を話してもおかしくはない。
「ここに自称サキュバスの吸血鬼もいるしね」
「ぐぬぬ。なんだか恥ずかしくなってきたのじゃ」
わちは自分を吸血鬼と思い込んでるサキュバスだった! 真相が明かされクライマックスへ!
のはずが、自称サキュバスの吸血鬼と思われたら、それはそれでセクシー自意識過剰なただののじゃロリじゃあないか!
「サキュバスだろうと吸血鬼だろうと、マスコットキャラには違いないよ。ティルちー」
「そうじゃな。そうじゃなじゃない」
危ない。認めるところじゃった。
うっかりわちの尊厳的悩みがマスコットキャラで霧散するところであった。
どっちでも変わらねえじゃねえかという結論はそれはそれで傷つくのじゃ。
「ところで妙果ちゃんどこいった?」
「ぬ? 妹が見てたのじゃろ?」
「いや、トイレ行くって部屋から出ていったんだけど」
「見かけてないが」
上の階から甲高い叫び声が聞こえた。
わちと妹は顔を見合わせる。
やべーぞ! 悪い予感しかしない!
わちは妹に担がれ、わちの部屋へ駆ける。
「妙果ちゃん!」
ネズミーマウスが部屋に居た。
んんんん!? 超弩級の危険物なんじゃがあ!? ハハッ!




