66話:ティルちーえせ吸血鬼疑惑
※ちょっと調子が悪いので閑話のような短い話じゃ。
※1000ブクマ達成ありがとうごじゃ!
種族人間と吸血鬼は何が違うか。
特徴を挙げるならば無数に挙げられるが、端的に言えばプライドの高さである。
「おといれ漏れりゅう!」
ドンドンドンとトイレの戸を叩くも中々開かない。パパンが今さっき入ったばかりである。
ロリと言っても吸血鬼は誇り高き種族であり、人間とは違う。
そう、だから焦らずに、先にパンツを脱いで全裸になってスタンバイしている。
「んにゅううう!!」
股間を抑えて内股になっても、決して漏らしたりはしない。なぜなら誇りは漏れる。
おしっこはもう少しでプライドなのである。
だからプライドは流れる。
「ぬあああ!!」
その時、一陣の風が走る。妹がわちの身体をぷらんと持ち上げて運び、風呂場に放り込みシャワーを回した。
「んんんんっ!」
「流しちまえよ。安っぽいプライドごとさ」
流れた。
ふぅ。
「吸血鬼って流れる水が弱点だったよね」
「急にどうしたのじゃ?」
「シャワー平気なん?」
うむ。ちょうど良い温度じゃが。
「シャワーで死ぬ生物ってクソザコ過ぎないかのう」
「ええい! 十字架を食らえ!」
妹が急に十字架を差し向けてきた。
「冷静に考えてそんなものが効果あるわけないじゃろ」
「じゃあにんにくは?」
「お腹痛くなるから嫌いじゃ」
「弱点発見」
人間でも生にんにくで死にかける事はあるが。
「あとは心臓に杭を打ち付けるとか」
「誰でも死ぬじゃろ」
「銀に弱い……ああ! 銀がない!」
「なんなんじゃさっきから」
わちを殺そうとしてる?
「うむ。ティルちー吸血鬼じゃない疑惑が出てる」
「なん……じゃと……?」
妹が言うには、ティルミリシアのファンネーム「眷属」の間で、わちは吸血鬼キャラということになっとるらしい。
わちは本物じゃぞ! ぷんすこ!
「太陽の光を浴びても灰にならないじゃん」
「本物の吸血鬼は陽の光は平気なのじゃ」
「ああ、真祖ってやつ?」
「それは同人ゲームの創作じゃ」
昔出たえちちな同人ゲームのオリジナルじゃ。吸血鬼と違う。
「陽の光が弱点が追加されたのは近年じゃからな。わちは幾千の刻を生きる吸血鬼の設定じゃぞ?」
「設定?」
「最近の映画やゲームなどと一緒にしないでほしいのじゃ」
「設定って言った?」
こほん。
とりあえず服を着させてほしいのじゃが。
ふきふき。
珪素マットの上に小さな足跡が付く。最近安物にアスベストが混じってるとかニュースやってたな。吸血鬼もアスベスト吸ったらダメージ受けるのかな……。
ぶぉーん。
頭からシャワーを浴びたので、朝から長い銀髪を乾かすことになった。
「で、ティルちーえせ吸血鬼疑惑だけど」
「まだ続けるのかの?」
妹がドライヤーを動かしながら、スマホで吸血鬼の特徴を調べ始めた。
「瞳が赤い」
「赤いのう」
姿見鏡に映ったわちの瞳はルビーのように爛々と輝いておる。見るものが見れば不気味じゃな。
白い髪に白い肌で赤い瞳なので「アルビノ」と思われるが、人のアルビノは赤い瞳に限らないらしい。本物見たことないけど。
「鏡に映らない」
「映ってるのう」
ばっちり映ってる。というか、鏡に映らないって光学的におかしいじゃろ。
「生肉が好き」
「焼き肉は好きじゃ」
あと生肉言うな。2つ目のダンジョンの緑髪の男を思い出すじゃろ!
「血を吸った相手を吸血鬼にする」
「吸った事がないのう」
首筋をかぷってしたことはあるけど、吸ったわけじゃないのじゃ。
モンスターとかニッシーとかニッシーとかニッシーとかの血なんか吸いたくないのじゃ。
「コウモリに化ける」
「ぬ?」
試した事ないな。
能力発動! コウモリ化! ぬぬぬぬぬっ!
んぬぬぬぬっ!
「どうやってなるのじゃ?」
「しらん」
ええと、闇魔法の時はこうやって。ネガティブ思考になって。ネガティブ……。死にたい。
ずもももも……。
「あ! 黒もやが吸血鬼っぽいよティルちー!」
「しにたい……」
はっ! 危ない! 思考が闇に呑まれるところじゃった。
「眷属設定は?」
「それも近年の創作じゃ」
わちちょっと調べたのじゃ。
「えっ? ってことはティルちーの能力は?」
「うむ。うむ? はて……?」
使役能力って吸血鬼のオリジナル能力じゃない……?
「やっぱり吸血鬼じゃないんじゃ……」
「ぐぬぬぬっ!」
わ、わちのあいでんててーが!
「ティルちーえせ吸血鬼疑惑について」
「えせ言うな」
「まとめてツイートしてみた」
「ツイートするな」
疑惑を広めるでない!
「まず、瞳が赤い」
「うむ」
「にんにくを食べるとお腹を壊す」
「うむ」
「吸血鬼要素は以上となります」
「うむ。高確率で吸血鬼じゃな」
「どこがだよ!」
妹は乾かしたわちの銀髪を三編みにしながら引っ張った。ぐえっ。
「今の発言を含めて、TMITTERでアンケートを開始しました」
「うむ」
「『1.ティルちーは吸血鬼だ』『2.ティルちーは吸血鬼でない』『3.高確率で吸血鬼じゃな(自称)』」
「結果が楽しみじゃな」
「目に見えてるよ! 結果なんかわかりきってるよ!」
むぅ。そんなことないと思うのじゃが……。
3だと思うのじゃが……。




