53話:【のじゃロリダンユーバー】服だけ溶かすタイプのスライムと戦った結果……!
「テストおわらぁー!」
ばんじゃーい! ばんじゃーい!
12月11日金曜日。ついにわちはやり遂げた! ちゃんと解答欄を全部埋めたのじゃ!
星野さんがやってきて、わちをワッショイワッショイと担ぎ上げた。
クラスの女子たちも集まり、わちを胴上げした。
視界の端で南さんが混じろうとして「あわわわ」していた。
「はん! おめえは引っ込んでな!」
椅子が突き出され、南さんはそこへ座らされた。
南さんが虐められてるのじゃ! 虐めダメ! 虐め? なんか違うな。南さんは避難させられただけだった。
むしろ虐められてるのはわちじゃないか?
「むむむむっ! 悪い子たいさーん!」
わちは精霊の力を開放した。わちはぴかあんと輝き、教室内を光で包む。
「目がぁ! 目がぁあ!」
苦しんだのはニッシーだけじゃった。わちは女子の手から解放されない!
ショタになってからセクハラが減るかと思ったが、そんなことはなかった。
女子たちはむしろ積極的にわちのスカートをめくり、おぱんつチェックをしてくる。
やはり人類が滅ぶ時が来たかもしれぬ。
「ぬあああ……」
わちは完全にスカートがひん剥かれた。
そしてその毒牙はおぱんつにまで手が伸びる。
それ以上はいけないのじゃ!
「待て待ておめえらぁ! なにしてんだ!」
プリン頭で目付きが怖い女子が叫んだ。さっき南さんを椅子に座らせてた子、轟さんだ。名字もなんかこわい。
その一喝で女子の手が止まった。助かったのじゃ。
「女装ショタを脱がしたらただのショタじゃねえか!」
くそう駄目だ! 変態星野さんの民だったか!
だがそのおかげでわちのセーラースカートが返ってきた。くすん。
そして女子たちは謝ってきた。「やりすぎたごめんね。女装にスカートは大事だよね」と。
それに頷く星野さん。うんうんじゃねえのじゃ。
「ティルオくんを守ろうの会発足!」
いや、汚そうとしてたのはおぬしらなのじゃが?
だが、闇の民はまだ残っていたのであった。
「はい! わたしはティル様のおちんちんが見たいです!」
「見たい!」
「見たい! 見たい!」
危険だ! ぴかぁ! ぴかぁ! わちは目潰しをして命からがら逃げ出した。
なんて危ないクラスなんじゃ。わちのかわいさがみんなを狂わせてしまった。狂気の沙汰も玉次第。
どこへ逃げる? 漫研は危険じゃ。もっとストレートに貞操の危機じゃ。
美術部なら匿ってくれるか!?
美術部の扉を開いたら、腕を掴まれ引きずりこまれた。もわっとした暖気が身を包む。
「うぇるかむとぅ美術部。待っていたよティルオくん」
「ぷるぷる……」
ほ、放課後のじゃロリ倶楽部……! なぜこの時期に三年生まで集結してるのじゃ……!
「アートだから。アートだからねティルオくん。部屋は暖めておいたからね」
やたら良いアルト声の美術部員が腕を組んで扉の前に立ち、わちの逃げ道を塞いだ。
そうか……。星野さんがああなった元凶は……。諸悪の根源は美術部じゃったのか……!
卑劣な罠により悪の総本部に追い詰められ、絶体絶命のわち。抵抗止む無く捕らえられ、再び服を剥かれ始める。
しかし扉は開け放たれ、救いの者が現れた!
「待ちな! 先輩方!」
「おっ、おまえは!」
「い、妹ぉ!」
妹は先輩の胸ぐらに手のひらを差し出した。
「参加費100円だぜ、先輩」
わちは100円で売られた。
こんな横暴が許されるわけがない。一男子高校生をひん剥いて校内で裸にするなんて! 虐めじゃ虐め! 虐めダメ!
再びガラリと扉が開けられた。誰だ!? 星野さんだ!
「みんな待って! 先生に許可を貰ってきたわ!」
喝采する美術部の女子ども。わちは邪悪なる者たちに向けて裁きの光を発した。ぴかっぴかっ。
「安心しろ。パンツまでは脱がさねえさ」
ふぅ。美術部にもまだ良心が残っていた。
うん? そこまで脱がされたらほとんど変わらないのじゃが?
「んあああ……」
「動かないで!」
しくしく。
「みんなテストお疲れい!」
「かんぱぁい!」
そのまま流れで俺はカラオケルームに連行された。いや、正確にはカラオケ化された美術部先輩のダンジョンであった。なにこれ!?
広めの8畳くらいの一室。その中に車載用のスピーカーがでんと置かれている。
床にはもふもふなカーペットが敷かれ、つるっとした岩壁にはポスターや小物で彩られている。
みんなにマイクが渡され、スマホから音楽が再生され、スピーカーのコーンがぶぼんぶぼんと音を立てる。
「俺たちは凍えゆく世界で出会いー♪」
わぁぁぁとみんなで鳴り物を鳴らす。
何というか凄いな。ダンジョン魔改造で私用しておる。確かにダンジョンは音漏れしないけども。こんな使い方ある?
でも電波届かないんだよなぁ。
「ああそれな。だからこそ勉強部屋にもちょうどいいんだよ。惑わされなくてね」
こ、これが女子高生のダンジョン活用方法……。冒険の夢も希望もなかった!
「ダンジョンの先の方はどうなってるんじゃ?」
「さあ? 興味ないし」
「ないの!?」
お、お宝とかありそうなのに?
ううむ。気になるなぁ。そわそわ。
すると妹が腕を取ってきた。
「動画撮る?」
「ぬぬ」
わちの思考が読まれてしまったようじゃ。
ちょっと覗くだけ。覗くだけなら大丈夫じゃろ。
妹と星野さんがスマホを構え、二人でわちを撮影し始めた。
残りの美術部員三人もなんぞなんぞと後を付いてくる。
「あ、扉じゃ」
洞窟タイプなのに扉がある。扉というと嫌なイメージがあるな。お肉屋さんいないよな……。
おそるおそる扉に手をかけると、先輩が後ろから声をかけてきた。ぴゃっ!
「そんな警戒しなくても大丈夫よ。なんかぶよぶよしたのがいるだけだから」
ぶよぶよ? スライムかな?
スライムだとしたらかなり危ないモンスターだ。顔に貼り付いて窒息させてきたり、酸性なら皮膚を溶かしてきたりする。
おそるおそる覗いてみると、丸いピンクのボールみたいなのがぽよんぽよんと跳ねていた。
なんだろう。普通のスライムじゃなさそう。
「あ、かわいい」
覗き込んだ妹はお気に召したようだ。
しかしいかにも雑魚モンスターの雰囲気を出していてもモンスターはモンスター。しかもこちらは武具なし無防備だ。見つからないようにそっと入らねば。
「んー? どうしたんだい?」
扉の前で重なり合っていたわちたちの、さらに後ろから先輩が覗き込もうとしたのでわちたちは部屋の中に押し込まれてしまった!
「わわわわっ」
そしてわちは部屋の中へすってんころりんしてしまい、ぶよぶよモンスターに見つかってしまった!
ぶよぶよがぼよんぼよよんと跳ねてきて、わちのスカートの中に入り込んだ。
「のわああっ!」
スカートの中から白い煙と焦げた臭いがする。やばい! こいつ酸を吐くタイプのスライムもどきか!
慌ててそいつを鷲掴みにして引き剥がし、わちは地面に叩きつけた。
べちょんと地面につきたてお餅みたいになったそれを、わちはジャンプして踏みつける。
ぐにゅん。
なんとかそれでやっつけることができた。ふぅ。
怪我する前に斃せて良かった。
「おー、ティルちーがモンスターを斃した……」
「ぶいっ」
わちは跳ねて喜びを表現した。
「まずい! まずいってティルちー!」
「?」
油断した!? 敵か!?
星野さんが地面に伏せている!
「ぱんつ! はいて! ない!」
「うむ? 穿いとるが」
わちはスカートをめくりあげた。
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