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TSローグライクダンジョンへようこそ  作者: ななぽよん
【一章】人工壁のシンプルなダンジョン
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4話:学校一のクラスの美少女とショッピングに行き恋愛フラグを立てたいよね

「ちーっす」

「うぃーっす」

「ちょわーっす!」


 俺の机にダイヴする勢いで、西川ことニッシーが飛び付いてきた。


「俺は童貞を捨てたぞぉー!」

「はいはいおっぱいおっぱい」


 朝からやってきた馬鹿を無視して、俺は昨日一日考察していたことを思い出していた。

 あの時、他に持ち込んだアイテム、メモ帳とペンは床に落ちていたのだ。

 それとスマホも壊れていたながらも手元に残ったことを不思議に思った。

 仮説だが、マッピングは残るんじゃないかと考えた。傘は武器で、ポーションは消耗アイテムだ。メモ帳やスマホはそれ以外のアイテム、つまりロストしない分類なのではないかと。

 そうなると服もロスト対象外ということになる。

 これが防具になるとどうだろうか。ヘルメットとかダメそうな気がする。


「おい、聞いてるのか?」

「あん? 聞いてなかった」

「ダンジョン行ったんだよ! 俺もよぉ!」

「はぁ?」


 ニッシーはこの週末に、従兄弟の家に出現したというダンジョンへ出かけたそうな。

 特に戦利品は無かったようだが、金属バットを手に奮闘したという。


「犬をバットでぶっ殺した時はきゅーんって鳴き声にぞくぞくしたぜぇ」

「おいやめろ」


 トンデモ発言でクラス内がドン引きしている。

 ニッシーの言っているのは犬型モンスターの事なのだろうが、それでも印象が悪すぎる言い方だ。


「ったくせっかくLIMEで写真送ったのによぉ。全部未読スルーしやがって」

「ああそうそう。スマホ壊れたんだ」

「またそうやって誤魔化しやがる。俺とお前の友情はそんなもんだったのかよ」

「いやまじで」

「まじか」

「踏んづけて画面バキバキになって電源も入らん」


 本当はダンジョンで棍棒野郎に破壊されたのだが。


「あほすぎて言葉もでねえわ」

「気をつけろよ。スマホは簡単に死ぬ」

「どんな踏み方したんだよ……。ちょっとその状態の写真見せろよ」

「だからそのスマホがねえって」

「あっ」


 ニッシーはてへぺろー☆ といった感じで自分の席に戻っていった。あの野郎。俺のダンジョンの事は絶対に教えねえ。

 実は少し迷っていたのだ。

 ダンジョンの話題なんかもう聞きたくねえよというほど諦めていた俺とは違い、ニッシーはいまだにダンジョンに憧れを持っていた。

 そんな奴だから、俺の所はとんでもダンジョンとは言え、誘ってやった方がいいんじゃないかと思っていた。

 だがそんな気持ちは吹き飛んだ。

 謝ってきたとしてももう遅い。俺は幼女になって一人でダンジョンを攻略してやる。

 うーん……。やっぱネックなのはそこなんだよなぁ……。


「鬼畜すぎんだよなぁ」


 ローグライク仕様なのはひとまず許す。だけど幼女化。ここだよ。これが辛いんだよ。

 これが一人(ソロ)攻略の難易度をおかしくしているし、かといって他人も誘い辛い。

 やはり妹を買収するしかねえか……。


「なにが鬼畜なの?」

「うぉっと! 口に出してた?」

「おはよー。うん、出していたよ」


 黒髪ロングの学校一の美少女が俺に話しかけ、敵意の視線がクラスのあちこちから刺してくる。

 知ってるぜ。アニメだとここで俺がかっこよくダンジョンに誘って、ラブロマンスが始まるんだ。ボーイ・ミーツ・ガール。


「星野さーん! スマホ踏んで壊したんすよーそいつー! あほっしょー!」


 そんなフラグをぶち壊すかのように会話に混ざってこようとしてきたのは、席に戻ったはずのニッシーだった。

 そしてニッシーは週末の初ダンジョン体験をぺらぺらと喋りだす。

 いつもならウッザと思うところだが、俺の「鬼畜」発言がスルーされる流れとなったので褒めてやろう。

 ニッシーの語りに、星野さんも「さしすせそ」が出始める。

 「さしすせそ」とは「さすがー」「しらなかったー」「すごーい」「センスあるー」「クソみてえなトーク力だな」で相槌を返し相手を気持ちよくさせるテクニックだ。おっと「そ」で本音が出てしまった。


 さて、そんなこんなで憂鬱(ゆううつ)な朝から始まり、退屈ないつもの学校生活を過ごし、放課後となった。

 俺はかばんにノートを片付けていると、隣のクラスのピンク髪の女子がもじもじしながら俺のそばに近づいてきた。そして恥ずかしそうに(しな)を作る。

 こんな頭をピンク髪をした女は頭もさぞ悪く見えるだろうが、こいつはこんな見た目でもそれなりに成績は良い。


「あの……今からちょっといいかな?」

「いいぜ。一緒に帰るか」

「うんっ」


 ふっ。俺に好き好きアピールしてきやがって。モテる男は辛いな。まあ、こいつは妹なのだが。

 そんな妹は星野さんを見つけると大きく手を振った。


「しのっちー! あたし今日は帰るからー!」

「ええー!? ちょっとぉ、また私一人ぃ?」

「しのっちも美術部サボって一緒に帰ろうぜー!」


 おいこらやめろ。再びクラスメイトの視線が俺に集中する。


「うーん。そうしよっかなぁー」


 しのっちもサボるな。

 女子二人(うち一名実妹)に囲まれた俺にハレムを感じたニッシーが突撃してくる。


「はいはーい! 俺も俺もー! アズマ一緒に帰ろうぜ! なっ!?」


 なっじゃねえ。ウインクするな気持ち悪い。

 そして再びニッシーのダンジョン話が始まり、それに相槌を打つ女子二人にその後ろを歩く俺という地獄のような下校が始まった。


「ところで妹よ。話ってなんだ?」

「えー。ここじゃちょっと。恥ずかしいしぃ」


 なんやなんやと好奇心で目を輝かせる星野さんに対し、「恥ずかしいと言えばさぁ!」と自分のダンジョン話を続けようとするニッシー。

 誰かこの地獄から助けてくれぇ!


「いやまじでちょっと。しのっちに聞かせられる話じゃないし」

「えー? 私は気にしないよー?」

「そう? じゃあお兄ちゃんのちんこブラブラ事件についてなんだけど」

「おいこらふざけんな」


 何を言い出すんだこら。

 星野さんが「え?」と顔をしたあとに俺の股間に視線を落とした。


「でも問題じゃない?」

「確かに問題だが」


 星野さんは「なに!? なにがあったの!?」と困惑している。

 なお、ニッシーは自分語りに浸っているので無いものとする。


「兄よ。ショッピング行こうぜぇ」

「んんん! なるほどな!」


 妹なりに俺のことをそれなりに考えていてくれたらしい。

 ダンジョンでトランクスがずれ落ちるのは確かに問題だ。それを防ぐなら、そう例えば紐パンツ。違うぞ布面積が少ないやつじゃないぞ。男性用海水パンツのようなものなら、紐できゅっとウェストで縛れば幼女姿でも使えるかもしれない。一考の余地はある。

 妹が向かった先は、女性用下着売り場であった。


「お、おう。アズマまたな」


 ニッシーは見知らぬお姉さん方の鋭い視線を浴びる店の前で、すごすごと退散していった。


「じゃあ俺も……」

「待てお兄。あたしがお兄ちゃんに似合う下着を見繕(みつくろ)ってしんぜよう」

「気色悪いわ!」


 妹の悪ふざけに星野さんもドン引き……。してないな。楽しんでる顔してやがる。くそっ!

 俺だってなぁ、妹の繋がりで星野さんと仲良くなりたいと(よこしま)な考えを抱いたことはあるさ。だって男の子だもん。

 妹を出汁にして仲良くショッピングデートとかさあ。恋愛フラグ立っちゃいそうじゃん?

 立たねえよ! 下着売り場じゃ立たねえよ!


「ほれ。お兄はどんな下着が好みなんだ? ん?」

「それを聞いてどうする」

「あたしが穿いてやろう」

「くそ! なんて拷問だ!」


 そして妹は星野さんとキャッキャウフフし始めるし、どっちがいいかと俺に選択肢を迫ってくるし。どうでもいいというと蹴ってくるし。

 ニッシーでもいいから助けてくれ! 俺をここから出してくれ! この下着売り場(ダンジョン)はきつすぎる!


 帰宅して、焦燥しつくした俺に妹が「ん」と渡してきたのはショートタイツだった。スポーツ用の、陸上とかで見るやつ。

 なんだよ妹よ。ちゃんと買ってくれてたんか。ありがてえ。

 その上で頼みがあるんだが、ちょっとええか?


「なんや?」

「今度パフェ奢るから俺と一緒に、行かないか?」


 どこへ? もちろんダンジョンだ!

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