25話:ごちゃまぜパロディとかネタ切れかよ……。
【一章のあらすじ】
ノリと勢いでTSローグライクダンジョンをクリアした俺は、「5階しかないってこれチュートリアルなんじゃね?」とか考えてしまった。翌日いつものようにダンジョンへ入ったら、嫌な予感は的中し、なんだかどこかで見たことあるゲームの展開が始まったのであった。
洞窟の中、生肉を地面に放った緑髪の男は動かない。俺たちが拾うのをじっと待っている。
俺たちは男を警戒して後ずさる。
「どうするのお兄」
「とりあえず、洞窟から出よう」
緑の髪の男は放っておく。彼は一言も喋らず、身動きしない。
目の焦点も合っているのか合っていないのか、人形のように佇んでいる。めちゃくちゃ怖い。
洞窟から光が射し込んでいる。俺たちは洞窟から踏み出た。
明るさに慣れて外の様子が見えるようになった。森である。
よく見ると洞窟からさらさらの砂の道が森の中へと進んでいた。これに沿って行けということだろうか。
北神エルフが空を見上げた。
「驚きました。開放型のダンジョンに変わっていますね」
「北神のもう一つのダンジョンもこんな感じ?」
「そうですね。でも先ほどのような人間のようなものは普通はおりませんよ」
「キモかったなー。あの男」
や、やめろ! 聞かれたら殺されるぞ!
さて、とりあえず俺たちが取れる行動はこの道をまっすぐ進むしかない。
森の中は自然的であった。不自然な自然だ。わかりやすく言えば、作られた森だ。
本物の森林なんてまともに歩けたものじゃあないはずだが、枝や根などの道を阻むものがない。俺たちは裸足で獣道を歩けている。
「星野さん。足大丈夫?」
「うん。裸足なのに不思議だね」
この獣道には小石すら混じっていなかった。洞窟からここまで、裸足でも歩けるように創られている。不自然だろう?
先頭を歩いている北神エルフが、俺たちへ振り返った。
「これは森のダンジョンということなのでしょうか?」
「俺の悪い予感が外れてくれれば、そうかもね」
「悪い予感とは?」
「最初の洞窟と男な、とあるローグライクRPGに似ているんだ」
そしてそのRPGには一つの特徴があった。
「もしこのダンジョンが、完全にそのゲームの世界として創られているならば、俺たちは早々に自殺して、二度と入らないほうがいいかもしれない」
俺の言葉に星野さんはぎょっとする。星野さんは現実が雄猫獣人になっているもんな。
「お兄。そこまで言うってことはガチでやばいってこと?」
「納得できるように説明してよ、アズマくん」
俺は心を落ち着かせるために、深呼吸を一つ二つ三つした。
「エーテルの風だ。町へ急がなければ人の姿ではいられなくなる」
「!?」
今の俺たちは現実世界とダンジョン内で、違う身体が交互に入れ替わっている。
もし元の身体が、元の身体で失くなったとしたら、俺たちは現実世界でどう生きていけばいいのか。
「本当にここがその世界のシステムならの話しだがな」
「つまり、いま人間の姿であるアズマくんと星野さんは、特にそのエーテルの風とやらで危険に陥るということですね?」
「そうだ北神エルフ。杞憂だといいのだが……」
急がなくては。しかし、先頭を歩いていた北神エルフは足を止めた。
「しっ……。気をつけてください。何か、います」
「よっしゃ! 出番か!」
妹マッチョが前へ出る。戦闘要員は妹だけだ。俺たちは後ろでビクビクするしかない。
「きます!」
『ギヒヒィッ!!』
草むらから飛び出してきたのは、肌が緑の小人が3。ボロ布を纏い、棍棒やボロボロの剣などを手にしている。
「ゴブリンってやつだーなぁ! そんなもん食らうかよぉ!」
と言った矢先に妹マッチョは棍棒の一撃を足に受けていたが、妹マッチョはびくともしない。
やだ……妹こそモンスターみたい……。
「終わったぜぇ」
呆気なく戦闘は終了。ゴブリンの死体は消えた。ネズボウの時のように武器も一緒に消滅する。
「余裕だったな」
「おうよ! あたしが守ってやんよ」
ムキッ。ポージングを取る妹の腕に、星野さんはぶら下がった。
「さてこの先は……」
「進んで見ればわかるんだろ?」
「そうだな」
さらに進むと、今度はさらに大量のゴブリンに囲まれた。
「あたしの事はいいから先に行けぇ!」
「ま、任せるぞ!」
妹は親指をぐっと立てた。雄叫びを上げ、ゴブリンの群れに襲いかかる。
俺たちは背を向け森の中を走り続けた。
薄暗い森の中で、正面から光が見えた。森の切れ目だ。
「おー! 森を抜けた!」
「はぁはぁ……一本道……だったね」
用心のために、北神エルフが先を行き、人間の俺たちは頑張ってその後ろ姿を追った。
星野さんは息も絶え絶えだ。俺もかなりきつい。
しばし小休止。その間に北神エルフは先に見える丘の上を調べに出かけた。
「丘の上には町がありました。そこが目的地でしょうか」
「良かった辿り着けたか……。うん……ま……まち……?」
「どうかしましたか?」
嫌な予感がする。
だが引き返してもしょうがない。俺たちは門を抜け町へ入る。
「おーい! 追いついたぜぇ! お兄!」
なんと生き別れたマッチョな妹が現れた!
「どうしてこのタイミングで来やがったぁ!?」
「なんだよお兄。寂しかったのか?」
妹が俺を抱きしめた。筋肉が! 筋肉が俺を締め付けてくる!
「ところでさあ、お兄。あたしもこのゲーム知ってる。見覚えあると思ったんだ」
「え? ああ、俺がプレイしてるのを見てたのか?」
パソコンがあるのは居間だからな。
「お兄の言ってたなんとかの風っていうのは知らんけど。ほら、あれ。あの岩山。あれってコタツマウンテンでしょ?」
「え? コタツ?」
妹が指差した先には、台形の岩がそびえ立ち、滝が流れていた。
「これって風来坊のシランだよね?」
「あ、ああ……そうかも……」
へ……へへ……変なごちゃまぜ方しやがって……。ごちゃまぜパロディとかネタ切れかよ……。
ふぅ。もう何が起きても驚かねえぞ。
「コッペ。相棒のコッペはいないの?」
「にゃーん」
「猫だー! ネコッペだー!」
いや、星野さんである。
オスケモ猫獣人はマスコットキャラの代わりにはならんだろ。
「シランならあたしもちょっとわかるぜ! バナナを貰って出かけるぞ!」
妹よ。バナナはシラン4だろう。コタツマウンテン違う。
ところでこの町。エロイナの最初の町ともシランの村とも微妙に違うんだよなぁ。なんでここまでパロディ雰囲気出して町にオリジナル要素だしてきた? いやもしかしたらここも何か別のネタかも……。
町の中をキョロキョロしていたら、井戸がぽつんと存在するのを見つけた。
「井戸? 井戸か……」
井戸があったら調べたくなるよね。
何か起きないかなー?
俺は足を滑らせて井戸に落ちて死んだ。
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