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TSローグライクダンジョンへようこそ  作者: ななぽよん
【一章】人工壁のシンプルなダンジョン
16/74

16話:コボルトにまたがって激しく腰を上下に振る銀髪幼女の健全動画です

 翌日の午前10時。家の前に黒塗りの車が停まった。

 白い手袋をはめたガタイの良いおっさんが運転席から降りて、後部座席のドアを開いた。


「おはようございます。直樹様のご親友の方々。お迎えに参りました」

「おう! ご苦労!」

「妹の胆力がすごいのじゃ……」


 がっつり初対面にこの態度。大物である。


「おはよーヒメちゃ。ティルちゃー」


 中には先に星野さんが座っていた。

 そして車は豪邸へ向かう。あれだよ。古くからの大地主ってやつだよこりゃあ。

 庭で待っていたのは、ジャージ姿に肘、膝、胸当てをした金髪碧眼エルフだ。


「おはようございます皆様方。本日はお日柄もよく、ダンジョン探索日和でございますね」

「家でもやっておるのかそのノース設定」


 北神エルフがなりきりすぎて怖い。

 そしてエルフ姿にジャージが全く合って無くて笑ってしまう。


「さて。ご友人方のお姿ではお召し物が汚れてしまいますでしょう。着替えを用意いたしております」


 北神エルフの隣にいたセバスな執事が案内をしようとするが、妹はそれを止めた。


「いえ。かわいい姿でのダンジョン探索を撮影したいんで、このままで行くぞセバスチャン」


 はははと戸惑ったように笑うセバスチャン。

 妹よ。いかにもセバスチャンな見た目をしているが口に出してはいかんぞ。ちなみにセバスチャンは近藤と名乗った。


「ヒメ様。それでしたらわたくしもジャージを着替えた方がよろしいでしょうか?」

「いや、ジャージエルフは面白いからそのままで行こうぜ!」


 確かに面白いけどいいのかそれで。

 だったら俺もジャージ吸血鬼でもいいのでは……。


 さて。案内されたのは家の離れであった。

 なんと北神家にはダンジョンが二つあるらしい。


 一つは未だに探索が終わっていない巨大開放型ダンジョン。その中身は一言で言うなら「山」であるらしい。開放型ダンジョンとは小部屋や通路のない巨大なエリアで構成されている。なので本当にまるごと大自然の山の環境ようなダンジョンなのだろう。そこは人を雇って探索させているらしい。


 そしてもう一つがこの中型閉鎖型ダンジョン。いわゆる普通の洞窟型のダンジョンだ。最深部に到達するまで約20分。全長約1km。中は洞窟が枝分かれしているので隅々まで探索するとなるとかなり大きい。ここは週末にプライベートで楽しむためのダンジョンだという。


 俺たちは服はそのままだが、一応安全のために、北神エルフの装備しているプロテクターを装着した。

 そして俺たちの他に二人の護衛が付いた。

 一人はボウガンを手にし、刀を腰に差している。おいおい。ここは治外法権かよ。

 そしてもう一人の眼鏡のお姉さんはタブレットを持っているからサポートであろう。


「みなさん。怪我にはお気をつけて、楽しくダンジョン探索に参りましょう」

「いえっすまむ!」

「はーい!」

「うむ!」


 妹、星野さん、俺が拳を掲げる。そして北神エルフの拳に重ねた。ダンジョン探索前のおまじないらしい。

 全員で6人パーティー。それがこのダンジョンに入れる最大人数らしい。6人……なんで6人なんだろう……伝統的にな……。俺はダンジョンRPGを頭に思い浮かべていた。


 さて。みんなそれぞれ用意された武器を選んで持ち込んだわけだが。


「妹よ。なんじゃそれは」

「知らんのか。自撮り棒だ」


 自撮り棒は武器じゃないぞ。知らんのか。

 妹は戦う気が全くないらしい。撮影するとか言ってたもんな。


 北神エルフは俺のダンジョンから持ち帰った弓矢と本を装備している。現実世界で魔法を駆使するつもりだ。パねえ。ダンジョンを現実世界と言っていいのか迷うが。

 星野さんは木刀だ。だけどあまり戦うつもりはなく、撮影係の妹を守るために選んだといった感じだ。

 そして俺は警棒である。


「ロリ吸血鬼が警棒て」

「現実的に考えたら、わちの身体で近接武器を選ぶならこれが最適じゃろうて」


 見栄えより大事なモノがここにある。


「面白いからおっけぃ!」

「うむ!」


 今回の目的はエンジョイだからこれでいいのだ。他の目的もあるけど。


 まず第一に。俺と北神くんの美少女化の嘘のためだ。美少女化は北神くんのダンジョンのトラップのせいということになっているが、そのダンジョンに一度も入ったことがないというのは、嘘とバレる可能性が高い。

 今まさに、ダンジョンゲートを通り転移した先の、この淡く水晶があちこちで輝く神秘的なダンジョンを見て経験していなかったら、北神くんのダンジョンがどういうダンジョンだったか答えられないままであったところだ。


 そして二つ目。北神くんは俺に普通のダンジョンを体験させたかったようだ。やはりうちのTSローグライクダンジョンは特殊すぎるようだ。俺は今の今までダンジョンはアイテムがその辺に落ちているものだと思っていたからな。普通のダンジョンは宝箱に入っているそうな。


 そして三つ目。妹の動画制作のためだ。やはりTOUYUBEでも今の人気コンテンツはダンジョン探索なのである。うちのダンジョンだと撮影のためにスマホやデジカメを持ち込むとぶっ壊れる可能性が非常に高いからな。壊れる事を覚悟でSDカードに保存することも考えたが、そんな金があったら俺が自分のスマホを先に買う。

 ちなみにスマホを買うことはまだカーチャンに許されていない。反省しなさいと言われた。反省はしてない。


「それじゃあ、あたしとしのっちはなるべく映ったり声を出したりしないようにするから! 二人共よろしくな!」

「しのお姉ちゃんも映らないのかのう? 木刀黒髪ロング美少女も画面映えすると思うのじゃが」


 俺が星野さんを美少女と言ったせいで、星野さんは興奮して俺に抱きついてきた。ぬああ……。


「いやぁ、割りとよくあるんよそれ。ダンジョン探索してるみんなポーションで綺麗になってるから。女子の探索系だと顔が微妙な子が綺麗になっていくって言う方が今は主流だかんね。まあやらせが多いんだけどさー」


 なんだよ。よくわからないけどダンジョン系TOUYUBERも闇だらけなのかよ。


「それならわちとノースも駄目じゃないかのう」

「いやいや、銀髪ロリ吸血鬼と金髪耳長エルフが他にいるわけないっしょ」

「そういう作り物のキャラだと思われるだけだと思うんじゃが……」


 まあ半分作り物みたいなもんだしな。素の北神くんは敬語キャラじゃないし。


「だからこそやらせ感なしでいくの。ほら! 探索探索!」

「ぬぅ」


 わちとノースが先を歩き、その後ろから妹と星野さんが付いてくる。

 時々正面からの絵を撮るために、後ろから自撮り棒を伸ばしてくる。積極的に映らないだけで、撮影協力者として妹と星野さんがチラ映りするのは問題ないらしい。

 その後ろの護衛の二人が映っているのも、「それはそれでガチっぽいでしょ」と言っていた。


 そしてモンスターが現れた。手に様々な武器を手にした小さい犬獣人のモンスター。コボルトだ。


「コボルトってゲームではわりと強いモンスターではなかったかのう? わちらで戦えるのか?」

「大丈夫ですよ。攻撃を受けても死ぬほどではありませんから」

「痛いのは嫌なんじゃが……」


 わちの初生ダンジョン戦闘じゃ!

 べちん! 警棒での攻撃! 確かな手応えじゃ!

 じゃがコボルトも怯まず、わちに手にした木の棒で攻撃してきた! 痛い!


「ふぎゃ!」

「がんばれー!」

「やー! ティルちゃー!?」


 痛みで涙目になりながらぺちこんぺちこんと警棒で叩いた。

 ぬぅ! 一向に倒せぬ!

 見かねたノースが後ろから弓矢を放ち、コボルトの額に矢が突き刺さってコボルトは仰向けに倒れた。


「ティルちゃん貧弱すぎる……」

「ほら! とどめだよティルちゃー!」


 わちはコボルトにマウントを取る!


「しね! ちね! はようしね! ふぐっ! ひぐっ!」


 股の下で暴れるコボルトに向かって、わちはぺちこんぺちこん警棒で殴り付けた。


「いけ! いってしまえ! もうわちの方がもたん! ふひぃ……はふぅ……。 もうむりじゃあ! いってくれぇ! おねがいじゃあ! 腕がこわれちゃうのじゃ! もう! らめ……。 ひぅ……」


 後に上げられたこの動画には「コボルト騎乗位」とか酷いコメントが付けられていたという。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 書かないっ! [気になる点] ふむ。。。使用にも本が必要なのか。。。 [一言] 今更ながら『傘(武器、他)に地図を書く』とかで保護できぬかのう?
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