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TSローグライクダンジョンへようこそ  作者: ななぽよん
【一章】人工壁のシンプルなダンジョン
13/74

13話:俺、このダンジョンをクリアしたら北神くんと結婚するんだ……

 放課後。俺は昨日に引き続き美術部のモデルとなり、北神くんはテニス部へ向かった。イケメンはイケメンなイメージのスポーツをしてやがる。

 そして北神くんと星野さんは一度家に帰り、俺の家に再度集合。

 ダンジョンの説明をざっとして、俺たちは突入した。


「TSローグライクダンジョンへようこそ」


 俺は男に戻り、妹はハリウッドマッチョになり、星野さんは猫獣人となる。

 そして北神くんはやはりTSし女性になった。耳が長い金髪碧眼スレンダーエルフだ。


「かー! つまんねー! イケメンが美少女エルフになっても面白みがないだろ! やり直しだやり直し!」

「ええ!?」


 妹の無茶振りに北神くんが狼狽(うろた)える。


「俺は北神くんのイメージに合ってるし可愛くて良いと思うけどな」

「あ、ありがとう……」


 美少女エルフ北神ちゃんは頬を桃色に染めた。ラブロマンスを感じる!

 落ち着け。北神エルフは男だ。


「話したくなかったらいいんだけど……。なんでエルフに?」

「わからないけどなんだろう……。あっ。妹が観てたアニメに出てくる子に似てるかも?」


 北神くんは100均のコンパクトミラーで自分の顔を確認した。

 ちなみにこの鏡はロストしないので、妹と入ったときから使っている、妹が持ち込んだ物だ。


「それってもしかして異世界転生するやつ?」

「そうそう!」


 妹から「ちょっと待て、それ幅広すぎだろう」とツッコまれた。

 そして今度は北神くんがみんなに尋ねた。


「みんなはどうしてその姿に?」


 俺は自作キャラクター。

 妹は最近観た映画のハリウッド俳優っぽい感じ。

 北神くんは妹が観てたアニメキャラクター。

 結構法則性がありそうだな?


「星野さんの猫キャラはなんなの?」


 俺は軽い気持ちで聞いたのだが、星野さんは押し黙ってしまった。


「いや、答えたくないなら別にいいんだけど……」

「推し絵師のキャラなんだよねー」

「わー! わぁああー!!」


 妹情報によると、どうやらスマホアプリのキャラのようだ。

 やっぱ一応そういう方向性なんだなぁと思った。映画、アニメ、ゲーム。エンタメの中の異性キャラ。だからどうしたという話だけど。


「それじゃあいつもの感じで行きますか」


 マッチョ妹、俺、北神エルフ、獣人星野。

 もう一階は楽勝すぎなんだけどね。唯一ゾンビだけは女性陣がわーきゃーなるので大変になる。もちろん俺も逃げる。臭いし。

 そして拾ったアイテムは、「ポーション」、「魔法の杖」、「弓矢」


「おっ弓じゃん! これは北神ね!」

「エルフっていうだけで僕に押し付けたでしょ? 弓道の経験なんてないよ?」


 妹が北神エルフに弓を一方的に押し付けた。

 妹は脳筋だし、星野さんは爪攻撃あるからいらないし、俺はマッピング担当。他に適任がいないしな。


「お、この弓は強化値2って見えるね」

「なにそれ!?」


 ローグライクの武器は、それぞれ固有で強さが異なる事が多い。普通より強い弓ってことだ。


「何も見えないが?」

「装備したら見えるとか?」


 今までそんなことはなかったが。うん。やっぱわからん。


「あれだよあれ。きっとよくある鑑定チートってやつじゃない?」

「よくあるのかそれ?」

「創作でな」


 創作の話かよ。

 半信半疑で今度は魔法の杖を北神くんに渡してみた。


「うん。これはショックウェイヴと見えるね。吹き飛ばしの効果かな?」

「んあ!? まじかよ!? 最高じゃん! 北神くんシステムの一部じゃん! ローグライクの破壊者! 俺、このダンジョンをクリアしたら北神くんと結婚するんだ……」

「おおい! フラグを立てるなお兄!」

「……」


 じーっと無言で俺を見つめる星野さん。

 真面目に考えるな星野さん!


「その能力って普段から持ってるの?」

「いや、もちろん初めてだよ。なんだろう。この身体の能力なんじゃないかな?」


 え? そんなキャラ別に能力あるようなシステムだったん!?

 それじゃあエルフ=博識みたいなイメージで鑑定能力なのか?


「それって俺たちのことはわからないのか?」

「どうだろう。手を貸して」


 美少女エルフと手を繋いじゃった。えへへ。


「何も見えないね。わかるのはアイテムだけなのかも」

「いいなー! いいなぁー! あたしの能力はー!?」

「そりゃ怪力だろ。そのマッチョなんだから」

「地味だぁー!」

「でも強化系は極めれば最強だぞ?」

「なるほど。さすがはお兄だ」


 力こそパワーなのである。そしてそれが通用しない相手にはアイテムを活用するのがローグライクRPGだ。


「星野さんはなんだろう? 猫といったら?」

「うんこが臭い」

「最低だな妹よ!」

「最低だよヒメちゃ!」


 俺と星野さんは妹を叩いた。だが分厚い筋肉の前にノーダメージだ。

 かわいい北神エルフが腕を組んで小首を傾げた。


「うーん。真面目に考えるとやはり猫っぽい力なんじゃないかなぁ? ゲームで言うとシーフやアサシン的な」

「警戒、隠密、暗殺?」

「そうそう」


 いまいちピンと来ていないようだが、言われてみれば俺たちで一番最初に敵に気づくのはいつも星野さんであった。


「じゃあお兄は?」

「無能力だ。だって人間だもの」

「いばるな役立たず!」

「マッピングはしてるもーん!」


 そんなことはさておき、二階へ突入。

 やはりここでの作戦は、さっさと三階へ行く、だ。


「この先にクワガタいますよー」


 星野さんの耳がピクピクと動いた。やっぱなにやら敵感知してるっぽい。


「クワガタならいけるんじゃね? やってみるか?」

「よっしゃ!」

「いや、妹は前に出るな。北神くんの弓で攻撃しよう。それで近づいてきたら一度吹き飛ばしの杖でノックバックさせて、倒しきれなかったら妹と星野さんがとどめを刺す。どちらかが犠牲になるかもしれないけど」

「おぅけい。あたしは問題ないぜ」

「私もそれでいいと思うよ」

「僕も準備いいよ」


 北神エルフの弓攻撃! 第一射! ぴろりん。外してしまった。


「どんどん撃っていこう!」

「んっ!」


 二射。三射と撃ったところで近くまで寄ってきたので、俺が杖を振って向こう壁まで吹き飛ばした。

 さらに続けて弓矢を発射。一応矢は突き刺さってダメージを与えているっぽい。


「チェンジ!」

「おうよ!」

「はい!」


 俺、北神ペアと、妹、星野ペアが前後入れ替わる。肉薄するクワガタ。足の速い猫獣人の星野さんが妹より前に出た。そしてハサミに挟まれて死んだ。

 だがその隙に、ジャンプした妹の拳がクワガタの頭上から振り下ろされる。そしてクワガタは光となって消え去った。


「しのっちがやられちまった……。いいヤツだったのに……! チクショー!」

「俺たちはこの悲しみを乗り越えていかねばならない!」

「二人共静かにね?」


 北神エルフに叱られて、悪ノリした俺たちはしゅんと小さくなる。


「お、ゲート発見」


 クワガタの先に三階へのゲートを発見。ついでに赤い草をゲット。


「火炎草、だって」


 北神エルフが拾い、効果をさらりと言った。やっぱすげえぜ北神。


「まんまだなぁ。それ敵に投げつけると炎上するから気をつけて」

「炎上……怖い……ブルブル……」

「何があった妹! 妹よ! ネットの炎上と違うぞ!」


 様子のおかしくなった妹は放っといて、三階へ行く。


「ここでは目玉モンスターが混乱をさせてくる。他は不明だ」

「おぅけい。じゃあ目玉は北神に任せるぜ」

「うんわかった」


 目玉モンスターはびゅんびゅんと北神エルフが弓矢を放ったら、近づかれる前にあっさりと倒せてしまった。

 このダンジョンの攻略方法がわかった。北神エルフを連れ込む。これね。一番大事ね。


「北神くん。俺の嫁になってくれ」

「え? 嫌だけど」


 俺はフラれてしまった。そのショックで死んだ。

 いや違う。後ろから突然ゴーレムが……。




「ぬあああ!!」

「おかえりー。ティルちゃん」


 死に戻った俺は星野さんに掴まり、膝枕された。

 ふぅ……。やばい。さっきまで男だったからめっちゃムラムラする。

 いや、落ち着け。今も男だ。身体が幼女なだけだ。


「星野さんすまんが――」

「しのお姉ちゃん」

「しのお姉ちゃん、すまんが……、今のわちは戻ったばかりで、その、ちょっと幼女の自覚がなくてのう……。凄く、その、興奮してしまうのじゃが。だから、こういったスキンシップは良くないと思うのじゃ……」

「大丈夫! しのお姉ちゃんも今興奮してるから!」


 良くねえのじゃ! このロリコンめ!

 良いかクラスのみんな。これが星野さんの本性じゃ。黒髪ぱっつんロングの清楚美少女の見た目に騙されるでない。中身は腐っておるぞ。三人になったときに妹にちょっと聞いたのじゃ。星野さんの猫獣人の元になったゲームはちょっとホモホモしいゲームじゃとのう! 腐ってる上にロリコンじゃぞ!


 しばらくぷるぷると怯えながら星野さんのふとももを堪能していると、妹が本棚からぺっと排出された。


「ぐあああ!!」

「おかえりー」

「おつかれなのじゃ」


 妹はもぞもぞと這い寄り、俺のぽんぽこお腹を枕にしやがった。

 腹筋なさすぎ幼女なので、重いのじゃが……。


「やられたー! ゴレームつええ!」

「わちをやったやつか? それにしては時間がかかったのう」

「善戦はしたんだけど、追い詰められたから北神を逃した。もうちょいだったんだけどなぁ……」


 なるほど。ゴレーム……じゃなくてゴーレムとは戦えるのか。そうなるとやはり二階より三階の方が戦いやすそうだ。


「北神くん遅いね」

「頑張ってるのう」


 俺たちは俺の部屋に夕食を運び、それぞれ先に食べ始めた。サンドイッチもぐもぐ。

 そしてその姿を俺は動画撮影される。それは後ほど「【わちかわいい】サンドイッチを食べるティルミリシアちゃん【リアル吸血鬼】」として投稿されて収益化が通ったのだが、それはまた別のお話。


「お、帰ってきた」


 北神くんはしゅたっと部屋に着地した。


「ちょ、その姿……」

「北神……くん……?」

「やっちまったのかのう!?」


 ダンジョンカースト最上位の冒険者、北神くんの腕はさすがだった。

 北神エルフはこの高難易度ダンジョンを、初アタックにして生還してしまったのだ。

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[良い点] 序盤から飛ばしてるところ 発想が斬新 作者は神なのかもしれない [一言] 私も北上君と結婚したい・・・!
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