表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSローグライクダンジョンへようこそ  作者: ななぽよん
【一章】人工壁のシンプルなダンジョン
12/74

12話:俺のかわいさが悪い

 さて。今日も俺がかわいすぎる。

 目覚めるとスマホを構える妹と目が合った。

 俺は妹に色々と盗撮され始めた。とりあえず寝顔と、歯磨きと、朝食と、着替えを黙って撮影している。


「辛いのじゃが」

「大丈夫。センシティブ部分は隠しておくから」

「そういう問題じゃないのじゃが」


 おぱんつはおニューになった。俺は昨日の黒パンツで良いと言ったのだが、「女の子なんだから同じ下着履くな」と言ってきた。なので今日は妹のお古の白パンツである。


「ティルミリシアちゃんは目標とかある?」

「元の姿に戻ることじゃ」

「いやそうじゃなくて。いやそういう設定もありだな……」


 妹が勝手に俺のキャラに設定を追加してくる。幾千もの時を生きた吸血鬼の願いは人に戻って普通の生活を過ごすこと……。今の俺の状況と間違ってはいない。間違ってはいないのじゃが。


「本当にTOUYUBEを続けるのかのう……」

「なに言ってんの! みんなもう次の動画期待してるんだから!」


 TMITTERにもアカウント作成済みだ。書き込みは妹だが。


「なんだかVTOUYUBERみたいじゃのう」

「そうだね。そっちの方向の方が良さそうね。吸血鬼とか非現実的だし」


 生身の人間で動画を作るのがTOUYUBERなのに対し、イラストや3Dアバターを用いて架空(ヴァーチャル)なキャラクターを演じるのがVTOUYUBERである。俺の今の身体はある意味架空なので、現実世界に生きるVTOUYUBERと言ったところか。なんだそれ。


「とにかく、やりすぎないようにするんじゃぞ?」

「へーい。スキャンダルや炎上には気をつけなきゃね」

「わちの存在がスキャンダルの塊なのじゃが」


 美少女に性転換するダンジョンとか聞いたことないし。もし話題が広まったらまずいな。北神くんに迷惑がかかる。


「北神くんにも伝えておくんじゃぞ」

「おっけー。もう動画の事伝えてあるから知ってるー」

「おおう……」


 わちの恥ずかしい自己紹介動画がクラスメイトに拡散されていくのじゃ……。

 教室に入るとさっそく女子から「動画観たよ!」と囲まれた。

 妹よ。助けてくれ妹よ。

 ダンジョン持ちになると急に人気者になって囲まれる。そんな光景を俺は何度か見た。だが俺のダンジョンは4人しか知らないし、もちろんこれはそういったものじゃあない。

 俺のかわいさが悪い。


「ねーねーあれやって! 『人間どもよ!』ってやつ」

「ぬぅ……、人間どもよっ!」

「きゃー! かわいー!」


 羞恥プレイが酷い。

 そんな女子に囲まれる光景を(こころよ)く思わない者も当然いる。

 突如(とつじょ)話題を()(さら)われたダンジョンカースト上位と、その取り巻きの中位と、女(ひでり)の下位だ。ぶっちゃけ男子の9割だ。

 そしてその怒りは、女子に囲まれた幼女の俺へは向かわず、TSの原因ということになっている北神くんへ向けられた。

 しかし北神くんも巨大ダンジョン持ちのダンジョンカースト最上位である。このままではクラスでスクールカースト抗争が始まってしまう!


 撫でられてお人形になってる俺は、女子の手をぺちぺちと払った。


「きさまら、わちに構うでない!」


 ビシッと俺は言ってやった。

 俺がチヤホヤされなければ問題は起こらないはずである。そして俺も平和な日常が過ごせる。万事解決だ。


「わぁ! かわいい!」


 かわいいBOTと化した女子たちに再びもみくちゃにされた。

 おかしい。どうしてこうなった。

 こんな(なり)でも中身は男子だぞ。いいのか女子高生どもよ!


「ぬああ……」

「おい! いい加減にしろよな!」


 ついに俺に救いの手が!

 クラス一空気の読めない男、ニッシーがついに動いた!

 そんな勇気ある男子に、女子たちは一斉にブーイングを始めた。

 いつもは女子の反撃に怯みそうなニッシーも、今回は譲らなかった。


「おいアズマ! ちょっとこっち来いやぁ!」

「お、おう!」


 俺はニッシーの手に掴まり、女子群から引っ張り出された。そして教室の外まで連れ出される。

 へへっ。持つべきものは親友だ。お礼にかわいいわちの頭をなでなでしてもよいぞ。


「調子に乗んなよお前はよぉ……」

「ニッシーよ。助かったのじゃ。感謝するのじゃ」

「なんなんだよ、そのふざけた口調はよぉ!」


 ドン! ニッシーが壁を叩いた。壁ドンだ!


「すまぬ……。これはそう……呪いなのじゃ。ニッシーはわちの描いたオリキャラを覚えておらんか?」

「何の話だよ」

「のじゃロリキャラを見せたことがあったじゃあろう」


 俺の中では若干黒歴史になりつつあるんだが、ニッシーには俺のオリキャラ設定資料集を見せたことがあった。少し引かれた。


「それがなんなんだよ」

「わちは女子にちやほやされたくてこうなったわけじゃないのじゃ。この見た目も口調も、それが原因の呪いなのじゃ」

「呪い……」

「わかってくれぬか?」

「いや、わかったよ。俺が悪かった。アズマもそんな姿になって大変だな」


 うむ。和解できたようじゃ。

 しかし、ニッシーは俺の腕を掴み、離してくれない。


「だが、北神のダンジョンに俺を誘わなかったのは、ハブったってことかよぉ」

「ぬぅ」


 今度はそっちの言い訳か!

 まずい。それは作り話だから、話せば話すほどボロが出るだろう。

 ヘルプ! へールプ北神くん!


「きたぎゃみぃ!」


 噛んだ。

 俺はニッシーを振りほどき、北神くんに走りより、その背後に隠れた。カースト上位のイケメンバリアだ。


「まあまあ西川くん。西川くんは従兄弟のダンジョンに入れるんだろう? アズマくんはたまたま外で出会ってうちに誘ったんだよ。それにアズマくんはスマホが壊れていて君を誘うこともできないじゃないか。冷静になりたまえよ」


 さすが北神くん! 完璧なフォローでニッシーを撃退した。

 しかし今度は北神くんに俺は掴まってしまった!


「ねえアズマくん。僕は君のダンジョンに興味あるんだ。今度誘ってくれないかな」

「ぬ……ぬぅ……。じゃが、わちのダンジョンはかなり特殊じゃよ? 詳しくは妹からLIMEで聞いてくれぬかのう。ほらチャイムもなったことじゃし」

「わかったよそうする。じゃあ戻ろうか」


 俺は北神くんと手を繋ぎ、教室へ戻った。

 なんて自然なエスコートなんだ。俺が女子だったら惚れちまうね。

 だが今の俺の姿はマジで幼女なのであった。イケメン北神くんと仲良くする姿に一部の女子はぐぎぎと奥歯を噛み締め、一部の女子は興奮のあまり限界化した。

 やめろ。変な妄想するでない!


 さてはて。

 ダンジョンカースト最上位の北神くんの「アズマくんがこうなったのも僕の責任でもあるので、あまり構いすぎないようにして欲しい」という鶴の一声で、女子の俺に対するお人形扱いは若干平和的になった。とりあえず写真撮影は許可制になった。事後承諾でも可だ。あまり変わりないように見えるが、少しは控えるようになってくれた。

 それにしても北神くんには頭が上がらない。なんたって彼はただの協力者であり、彼に非はまったくないのだ。負い目を感じてしまう。

 まさかそれが作戦か? そうやって弱みを握って、俺の身体をあれやこれやしようと企む変態なのか!?

 いやいや、彼がそんな人なわけがない。ばかばか俺のばか!


「僕、小さい子が好きなんだよね」


 美術室での昼食に、付いてきてもらった北神くんは突然のロリコンカミングアウトを始めた。

 俺はあやうく飲んでいたアロエ白ぶどうジュースを口から吹き出しそうになる。

 だが、慌てていたのは俺だけだった。

 星野さんは自然に会話を続けた。


「妹さんがいるんだっけ?」

「そうだよ。写真見る? ちょうどアズマくんと同じくらいだよ。ほらちょっと生意気な感じがかわいいでしょ?」


 ロリコンの上にシスコンだった。なぜか俺の周りにはヤバイ奴しかいない。

 しかし、この会話で引いてるのは俺だけだった。

 この世にはイケメン無罪という言葉がある。

 俺みたいな顔面平均値中の上(自称)が「小さい子が好き」と言ったら変態ロリコン野郎になるが、北神くんみたいな顔性格が特上A5ランクで「小さい子が好き」と言っても、「きゃー子供好きなのね! すてきー! 私と何人つくる!?」となるのだ。

 なお、美少女が同じ発言してももちろん問題はない。


「わぁ! かわいい子だねぇ!」


 星野さんが言っても何も違和感を感じないはずなのだ。だが、ロリとなった俺からすると、星野さんからはじっとりした視線を感じざる得ない。

 よくよく考えて欲しい。

 いくら見た目が幼女だからといって、いきなりクラスの男子と一緒に風呂に入るだろうか? 入らないだろう?

 真のロリコンは精神性部分のロリさに重点を置くから、そういう意味では逆にまだ浅いと言えるかもしれんが……。わちのロリさは見た目だけじゃからのう。


 俺は逆の立場で考えてみた。

 もし北神くんが女子になったら、今の俺は一緒にお風呂に入れるだろうか。入れるな。余裕で入れる。むしろ女子にならなくても入れる。

 何も問題はなかった。


 俺が変な妄想をしている間に、いつの間にか本日さっそく北神くんを含めた四人で俺のダンジョンに入る流れになっていた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ