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崖下メリーゴーランド  作者: 厚井志野
1/1

待ち合わせ

初めて書きました。至らぬ点が多々あると思いますが、どうか温かい目で見守ってください。

「あと五分待って」



その文字を見て少しほっとする。


もしかしたら、彼が予定をドタキャンして、このまま来ないのではないかと思っていたからだ。


田んぼに目を移し、田舎だなあと心の中でつぶやく。

と言っても実際は、それほど不便には感じていない。


自宅から五分ほど歩けばコンビニがあるし、自転車を十分走らせれば、カラオケボックスやファミレスなどもある。

けれども所々にある広大な田んぼや、電車が一時間に二本しか通らないという事実が、僕にここは田舎だよと認識させてくるのだ。


そんな中途半端な住みやすい町で、僕は今、友達の伊藤盛也(いとうせいや)を待っていた。


今日は、ここから自転車で二十分ほどのショッピングモール内にある映画館で、彼と映画を見る予定である。


スマホを取り出し、時間を確認する。

「9:41 8月10日 土曜日」という表示を見てから、スマホをポケットに入れた。


本来、僕たちが通っているここ南中学校の東門で、午前九時三十分に集合の約束である。


現時点で彼は十分以上遅刻している。


僕が初めにドタキャンされるのではないかと心配したのは、以前に一度そういうことがあったからだ。


カラオケに行く予定だったその日、彼は三十分以上僕を待たせた後、「ごめん今日は無理だ」と予定を投げ出したのである。


そのメッセージを読んだときは何かの冗談かと思ったが、やり取りを進めていくと彼が本当に来ないことが分かり、僕はとぼとぼと家に帰ったのだった。


僕は彼の、そういう時間にルーズなところや、約束に不誠実なところを知っている。

それでも彼と関わり続けるのは、僕にとって彼といる時間が、純粋に楽しいからだろう。


なんというか、僕と彼は会話の反りが合うのだ。




ふと遠くを見ると、自転車を漕いでいる人影が見えた。


一瞬手を振ろうと考えたが、仮にあの人影が全く知らない人だった場合、とてつもない羞恥心を覚えることになるので控えることにした。


人影は僕の方向にやってくる。するとあるところで突然片手をあげてピースサインを示した。

それが何とも彼らしいと感じたから、僕はピースサインを返した。



「おそいよ」


と僕が言うと、


「すまん、クレープ奢るから許して」


と返ってくる。


思わず「女子か」と言葉を放つ。

素直に謝らないところが、何だか彼っぽい。


彼が遅れたことに関して特段責めたりはしなかった。


無駄話を叩きながら、ペダルに足をかける。

二人揃って足を踏み込み、目的地へと漕ぎだした。




|||||||||||||||||||||||||||||||||||||




「まだ?」



その文字を見て少し焦る。


けれどその焦りはすぐに治まった。

あいつなら多少の遅刻は許してくれると思ったからだ。


あと五分ほど掛かることを伝えて、再び自転車を漕ぎだす。


それにしても参ったな。

今日は遅刻しないようにとアラームを早めにかけてきたのに、諸事情で家を出るのが遅れてしまった。


少々気分が悪いが、あいつと遊んでいれば多少のネガティブな感情はどうでも良くなるだろう。


あいつというのは片桐優太(かたぎりゆうた)、俺の中学からの友達である。


言葉では言い表し辛いが、俺と片桐は会話の相性が良い、そんな感じがする。


中一の時に同じクラスになり、同じ部活を選んだこともあって、すぐに打ち解けて仲良くなった。

二年生では別々のクラスになったが、それで仲が遠のくということもなく、三年生になった今でも関係は続いている。


今日はその片桐と一緒に映画を見に行く。


細い路地を抜けて、そのまままっすぐ進むと、南中学が見えてきた。


遠目から見ても小汚い校舎で、やっぱり田舎だなと感じる。

もう少し便利になってくれてもいいものだ。


都会に住んでいる奴らが羨ましい。




校舎に近づいていくと、門の前に人影が見えた。


なんとなくピースサインを出した。

はっきりと誰だか分かった訳ではないが、この時間にあの場所で突っ立っているのは片桐しかいないだろう。


向こうからもピースサインが返ってきた。

その人影が片桐だと確信するのと並行して、姿がだんだんと鮮明になっていく。


到着するなり「おそいよ」と言われる。


申し訳ないのは山々だが、素直に謝るのは少し気恥ずかしかったので、


「すまん、クレープ奢るから許して」


と茶化して返事をすると


「女子か」


と、望んだツッコミが返って来た。

俺はこいつのこういうところが好きだ。


片桐がサドルを跨ぐのを待つ。

準備ができ次第、ペダルを踏んだ。


下らない会話をしながら、俺達は映画館へと向かって行く。




|||||||||||||||||||||||||||||||||||||





僕達は映画館に着いた。厳密にいうと、映画館のあるショッピングモールに着いた。


駐輪場に自転車を止めて、自動ドアを潜り中へと進む。


映画館は二階にあるから、エスカレーターで上に上がった。


館内で上映予定を見て、僕達が見る映画の欄を探す。

次の上映は十一時からだった。


上映予定の書いてあるモニターの時計で時間を確認すると、「10:06」となっていた。

上映まで一時間の空きがある。


事前に上映する時間を調べていれば、着いてからすぐにでも映画を見ることが出来たのだろうが、僕達はあえてそうしなかった。


というのも、この映画館は席が満席になることはめったになく、適当な時間に来ても全く問題がないからである。


だから今日の集合時間も何となくで決めた。

おかげで遅刻した彼を責めることも、彼にイラついたりもしなかった。


時には時間に縛られず、適当に行動するのも大切だと思うようになったのは、きっと彼の影響だろう。


それからもう一つ、この空いた一時間で彼と無駄話をするのが僕にとって一番楽しいからだ。

集合時間を伝えた時に、彼から時間を変える提案が来なかったので、概ね彼も僕と同じように考えているのだろう。


席を選び、チケットだけ買って、僕達は一旦映画館を出た。


この一時間をどこで潰そうかと考えている内に、あることを思いついた。


アイデアが浮かぶなり僕は、彼を三階のゲームセンターまで連れていき、


「一回奢って」


とUFOキャッチャーを指さしながら言った。


勿論、本当に奢ってもらうつもりは無く、冗談半分で言ったことだった。


が、思いの外真に受けてしまったのか、彼は財布を取り出し僕に百円を渡してきた。


「え、本当にくれるの?」


と僕が聞くと


「冗談だったのかよ」


と笑っていた。


僕は渡された百円を「せっかくだから」とコイン投入口に入れる素振りをする。

彼の方を見ると、「別にいいよ」と言われたので、そのまま百円を入れた。


三十秒以内ならいくらでもアームを動かせるタイプのもので、僕達は一緒にアームの動きを見守る。


「もうちょい奥」

と台の横から見ていた彼に言われたので、アームを奥へと操作する。


概ねここだろうという位置にアームを定め、掴むボタンを押す。


ゆっくりと下がったアームは、位置こそ良いものの、掴む力が何とも弱々しく、あっさりと景品のぬいぐるみを落としてしまった。


「全然だめじゃねえか」


と彼は笑う。

百円損をしたのにも関わらず、全く気に留めていない様子だった。


それから僕達はゲームセンター内を次々に周った。

彼と過ごす時間はあっという間で、いつの間にか、上映の五分前になっていた。


慌てて映画館に戻り、それぞれ好きなドリンクを買った。

チケットに書いてある通りの会場に入り、席に着いた。


スクリーンには、他の映画の予告が流れていた。

そういえば最初の五分は予告だったことを思い出す。慌てる必要が無かったことも、彼と一緒に笑っていた。



それから僕達は二時間ほどの映画を楽しみ、フードコートでご飯を食べた後、モール内を次々に周った。


とにかく楽しい時間だった。

それ故に、彼と別れた後の帰路は、何だか喪失感があった。

けれども充実していたことに変わりは無く、とてもいい気分で家へと帰ったのだった。




|||||||||||||||||||||||||||||||||||||




俺達は駐輪場に自転車を止め、鍵をかける。

それ程遠くないとはいえ、途中には結構な傾斜の坂道もあり、運動部ではない俺には少しきつかった。


厳密にいうと、テニス部に所属していたのだが、三年生になる少し前に辞めてしまったのだ。


うちの学校は受験勉強に本腰を入れる為と、一学期が終わる頃に三年生は部活を総引退する。

その総引退まで数か月残して、俺はテニス部を脱退した。


最後までテニス部を続けていたこいつは、同じ道を走ったのにも関わらず、平気な顔をしていた。

さすがに体力の差が出るな、と感じた。



ショッピングモールに入り、二階の映画館へと向かった。


俺達の目当ての映画の上映予定欄を見ると、次の上映まで結構な空きがあった。


「あと一時間もあるね、どうしよっか」


と片桐が言う。


実は俺はこうなることを知っていた。


昨日の夜、ここの映画の上映予定を調べたのだ。


片桐から集合時間の連絡が来た時、明らかに一時間は余裕があることに気づいた。

がしかし、概ねこの空いた時間で二人で買い物でもするのだろうと思い、あえて集合時間を変える提案はしなかった。


今、思いの外ノープランのこいつを見て、少し驚いている。


成績も俺とは比べ物にならないくらい優秀で、時間もきっちり守る質のこいつが、最近は少し適当な行動が増えた気がする。


親の教育方針でも変わったのだろうか?


突然、片桐が「行きたい場所がある」と歩き出した。


やはり元からプランがあったのか、はたまた今決めたのかは分からないが、俺は片桐に付いて行った。


着いたのは三階のゲームセンターだった。


片桐はそそくさと足を進め、ある程度物色してから、一台のUFOキャッチャーを指さしてこう言った。


「一回奢って」


成る程な、と思った。

これはきっと今朝の遅刻のお詫びとして払えと言っているのだ。


そういうことなら仕方がない。

俺はバッグから財布を取り出し、百円を片桐に渡した。


「え、本当にくれるの?」


そのあまりにも突拍子のない発言に


「冗談だったのかよ」


と声に出して笑った。


片桐が、そのまま百円を投入する素振りを見せたので、「別にいいよ」と許可を出し、俺は台の横に周った。


最初にこいつが定めた位置は、景品から大分手前だったので、もう少し奥に出すよう指示を出す。


片桐がボタンを押して、アームが徐々に下がる。


弱々しい力で景品を掴んだアームは、ぽとりとそれを落としてしまった。


「全然ダメじゃん」


と片桐は笑った。


こういう、一見損をしたような瞬間も、こいつと居ると不思議と嫌な気分にならなかった。


それからの時間は光のように早かった。


俺達が見たのは流行りのアニメ映画で、元々アニメに興味のない俺が楽しめるのかと不安だったが、思いの外いい映画だった。


片桐は食い入るように映画を見ていた為、上映が終わるまで買ったドリンクを飲み干さなかった。

氷で薄まってしまったコーラを飲んで、あいつは「まずい」と笑った。


充実していた。純粋にその言葉が似あう一日だった。

それだけに、あいつと別れた後の帰り道は、空の薄暗さもあってか、大分切なかった。


家に近づくにつれ、俺は段々と憂鬱になっていった。




|||||||||||||||||||||||||||||||||||||




「ただいまー」


僕が玄関のドアを開けながらそう言うと、奥から「おかえりー」と返ってくる。


見ると、台所でお母さんが晩御飯を作ってくれている最中だった。


荷物をおろし、洗面台で手を洗ってから今日の晩御飯は何かと聞いた。

お母さんは豚の生姜焼きだと答えた。僕の一番の大好物だ。


今日はなんていい日なんだろうと心の底から思った。


家族全員分の食器類を出して、机に並べた。


お父さんが二階から降りてきて「お腹が空いた」と声を出す。

時計を確認すると午後六時だったので、お父さんもついさっき仕事から帰って来たのだろう。


お父さんに「おかえり優太」と言われたので

僕も「おかえりお父さん」と返す。


その後、お父さんに弟を呼んでくるように頼まれたので、二階に上がって弟の部屋へと行った。


「ご飯だぞー」


そう呼びかけると、弟は目をこすりながらゆっくりと部屋のドアを開けて出てくる。

きっと今日の部活で疲れて寝てしまっていたのだろう。


課題はもう終わったのかと聞くと、弟は寝ぼけた声で「終わったー」と答えた。

弟と一緒に一階に戻ると、既に食事の準備が完了しているようだった。


全員席について、「いただきます」と手を合わせた。


それから僕は今日のことを家族に話した。

見た映画の話とか、UFOキャッチャーの話とか。


彼との一日が充実していただけに、話は尽きなかった。


生姜焼きとご飯を一緒に口に運ぶ。

甘辛いタレと生姜の香りでご飯が進む。


それから僕は、家族との食事を楽しんだ。



晩御飯を食べ終えた頃には、弟もすっかり元気になっていた。

食器を流し台まで運び、リビングに行って腰を降ろす。


食事を終えたら家族で楽しみにしていたドラマを見た。


ユーモアのあるシーンでは家族全員が笑っていた。

やっぱり家族とだけあって、笑いのツボも同じなのだろう。



本当に良い一日だった。

彼と遊んだ日はいつもそう思う。


まあまあな時間になったので、自分の部屋へと上がった。

ベッドに寝っ転がり、今日のことを振り返った。

ふと、今朝の彼の遅刻について思い出す。


そういえば理由を聞いていなかった。元より聞くつもりもなかったけれど。

寝坊でもしたのだろうかと考えた。



「受験に集中したいから」

と、部活を辞める時の彼は笑っていた。


その笑顔に、少しだけ違和感を覚えたような気がした。


一緒の高校に行けたらいいな、なんて考えている内に、意識が遠のいていく。

目をつむり、僕は安らかに眠りに落ちた。




|||||||||||||||||||||||||||||||||||||




玄関を開けた。


物で散乱している廊下を、俺は足の踏み場を探しながら抜けていく。

台所に着くと、すぐさま荷物をおろし、椅子に座った。


カバンからスマホを取り出し、wifiが繋がった事を確認して、何の目的もなくいじっていた。



部屋から父親が出てきた。俺は少しびくっとした。

父親は座っている俺に冷たい視線を向けると「チッ」と舌打ちをする。

その後台所を抜けてリビングまでズカズカと進んだ。


リビングでは母親と妹が寝ている。


父親は、「おい」と呼び掛けて母親を起こした。


「今月の家賃どうすんだ?」

と父親が言う。


母親の機嫌が悪そうな声が、ドア一枚向こうから聞こえてきた。


「何?今月もう無いの?」


何度も聞いた言葉だ。

うちの親はただでさえ喧嘩が多いのに、月末になるにつれ更に回数が増える。


父親が手を勢いよく振り下ろし、机に叩きつけた。


「ねえっつってんだろ!」

と怒号が飛んだ。


すると母親が「大きい声出さないでよ!」と叫ぶ。

あんたも十分声が大きい。


そこからはヒートアップするばかりだった。

お互い感情をぶつけて文句を言うばかりで問題解決には一向に向かわない。


途中で寝ていた妹が起きて、大きな声で泣きじゃくった。

「泣くことばっかしないの!」

と母親が妹を怒鳴りつけると、さらに大きな声で泣いた。

小さな子供のようだが、これでも小学六年生である。



感情をコントロールできない母親と父親。


小さなことで機嫌を悪くし、俺達子供に気を遣わせる母親。


人に話す時は常に命令口調で暴言を吐くが、外面だけは良い父親。


はっきり言って、俺はこいつらが大嫌いだ。


「大体あいつがああなったのもお前のせいだろ!」


「私のせいにしないでよ!」


怒号が飛び交う。


あいつというのは、間違いなく俺のことだ。

この人達は喧嘩をすると大体俺の話が出てくる。


俺は確かに優秀じゃないし、勉強もできない。というかしてない。

でも俺自身、それを自分のせいだとは思っていない。



中学二年の十一月ごろ、所属していたテニス部を辞めた。

この両親に辞めろと言われたからだ。


本当は続けたかった。

テニスは純粋に好きだったし、先輩は優しくて強かった。


何よりも、片桐と一緒の部活だったのが、続けたい一番の理由だった。


両親が勉強に集中する為に部活を辞めろと言ってきた時、俺は「辞めたくない」と言った。

父親は怒り狂って、「お前の将来の為に言ってるんだ」とか「家族のルールに従え」と怒鳴りつけてきた。


あいつはそのまま二時間くらい怒鳴り続けた。

だから俺は諦めた。こいつらには何を言っても駄目だと思った。


部活を辞める時、先生は俺を引き留めてくれたが、辞めたいのだと言い続けた。

何を言っても、何をやっても無駄なんだと思って、やけくそだった。


それから俺は勉強に一所懸命になったかというと、そうではなかった。


毎日のように両親から勉強しろと言われ続けたが、やる気にならなかったし、何もかもどうでもよくなっていた。


「どうなっても知らねえぞ」


と父親から言われたが、実際俺もどうなっても良いと思っていた。

この家に生まれた時点で人生積んでいるようなものだと思っていた。


片桐と接していると、環境の差が顕著に出て、余計に親を憎んだ。



今朝、家を出る時に「どこに行くんだ」と父親に引き留められた。

バレないようにこっそり出るつもりだったが、しくじった。遊んでばかりだとまた怒鳴られた。



前にも一度同じことがあった。

確かその日は、片桐とカラオケに行く予定だった筈だ。

家を出ようとしたところで、部屋から出てきた父親に同じようなことを言われた。

言い合いになり、父親の怒りは収まらなかった。


結局その日は、仕方なく予定をキャンセルした。

片桐には本当に申し訳ないことをしたと、後日口頭で謝った。


「気分じゃなかった」という、糞みたいな理由をつけた。

「本当は親に言われて」とは言えなかった。

こいつにはあの両親のことを知られたくなかったからだ。


「体調が悪くて」と嘘をつくことも出来たが、それだと何だか騙したような気がするので止めた。


片桐はそれでも笑って許してくれた。

本来なら縁を切られてもおかしくないのに、あいつは笑って許してくれた。



そんなことがあったから、今朝は無理矢理家を出てきた。

これ以上約束を破ることは出来ないし、これ以上縛られたくもない。

父親に引き留められさえしなければ、集合時間に間に合っていただろう。


何だか最近今まで耐えてきたモノが、よからぬ方向へと発散されてしまいそうな気がする。



怒鳴り合っている母親に、今日の飯のことを聞いた。

母親は気怠そうに、キッチンの方向を指差す。


ポットでお湯を沸かして、インスタントラーメンに湯を注ぐ。

昨日と同じなだけあって、とても美味しいとは言えなかったが、腹は満たされた。


両親の喧嘩は夜まで続いた。


遊んでいた時は軽かった体も、両親の声を聞いていると鉛のように重くなる。


その日は何もかも面倒臭くなって、シャワーも浴びずに寝てしまった。


仲の良い友達と遊んでも、家に帰ると全てが嫌になる。まるで崖から突き落とされるような感覚だ。


今日の事を思い出すと、何故だか涙が出てきた。

どうして泣いているのか、自分でもよく分からなかった。


ただ、泣いてもどうにもならないことだけが分かっていた。






続きは書くか分かりません。

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