追放
いわゆる『コミュ障でぼっち』だった僕は、会いたい友達もいなく(そもそも友達は、片手で数えられるくらいしかいない。どういうことだと今更ながら疑問に思ってしまう)、出発までの時間を部屋で過ごしていた。気に入っている分厚い図鑑を開き、眺めていた。
「リヒト様。お時間でございます」
「分かった。今行きます」
メイドの一人に声をかけられ、荷物を持って部屋を出る。幸いなことに、寝具は持っていかなくてもいいらしい。庶民らしい服装を選んで背負い鞄に投げ入れ、お気に入りの本を詰め込んだだけなのに、かなり重量を感じてしまう。とはいえ、多少鍛えてはいるので、自力で持って動くことはできた。
表に出ると、みすぼらしい馬車が止まっていた。御者の人も、あまり良い格好はしていない。本当に追放されるのだと実感が湧いてきてしまう。しかし、この屋敷での出来事のほとんどは良いことではなかったので悲しくはならない。
「道中お気をつけて。これが最後になるかもしれませんが、お元気で」
「リリアも元気でね」
唯一見送りに来てくれたメイドの一人と言葉を交わしたのを最後に、馬車は動き出した。
住み慣れた家が遠ざかっていき、やがて見えなくなった。
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