サボったら、サボった分だけ仕事が溜まる
夕食をとるために再び部屋に戻る。テーブルの上には既に食事が準備してあった。
……一人分だけだけど。
「リヒト様は、こちらにお座り下さい」
メイドの人たちにうながされ、食べ物の置いてある席に座る。
「私の分は?」
「執事のシリウス様より、魔王様には自室で食事をとって頂くようにと言われております」
「そ、そうか……では皆、リヒトを部屋に案内するのは忘れるなよ。ではリヒト、また会おう……」
「はい。今日はありがとうございました」
気にするなというふうにして魔王様は手を振り、そして扉の外へと歩いていった。心なしか足取りが重く、目が死にかけているように見えたが、気のせいだということにする。
夕食も美味しかった。
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「はあ……」
リヒトが食堂で豪勢な夕食をとっている頃、魔王は自室で簡易的なサンドイッチを食べながら机に向かっていた。
「大体そもそも、予定を変更するなら先に言っていただかないと……政務にも予定があるんです。勝手に変えられると、明日に響きます。そしてそれが積み重なれば、山ほど仕事が残ることは当然です。何回言わなければならないのですか、全く…………」
執事…………シリウス…………の小言がBGMのように聞こえる中、魔王は積み重なった書類を読んでいた。今日終わらせる予定の仕事たちだ。
「リヒトは凄かったぞ。一日で魔力制御をかなりできるようになっていたからな。暇があれば、じいも剣を教えてやってくれ」
「わかりました。リヒト殿がそこまでとは……剣を教えることについても考えておきます。しかし、それとこれとは別です。さっさと次の書類に……」
仕事から話を逸らし、あわよくば逃げようと企んでいた魔王だが、見事に目論みを叩き潰され、ガックリと崩れ落ちる。
魔王が仕事を終えたのは、リヒトが眠りにつく頃だった。そのとき魔王の目は、死んだ魚のようになっていた。
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夕食を食べ終わると、メイドさんたちが、僕の部屋を準備してくれていた。比較的わかりやすい部屋で、食事をとった部屋から廊下を歩いて三つ目の扉だった。
昼間僕が留守のときに、掃除などをしてくれるらしい。食事も掃除もしてもらって、本当に至れり尽くせりで、少し申し訳ない。
部屋に置かれたタンスには、ゆったりとしたローブや普段着など、色々な服が入っていた。その中のローブと下着、タオルを取り、風呂に向かう。風呂場は自室のある部屋より3つ下の階にあり、魔王様が入浴する間は使えないが、それ以外の時間帯は自由に使っていいらしい。男湯と女湯はちゃんと分かれていた。
体を流し、湯船に浸かる。一応屋内にも大きな浴槽はあったが、バルコニーのようなところにも小さめの浴槽があったため、バルコニーのほうに入る。一日の疲れが湯に溶け出していくようだ。ちなみに、屋内の浴槽は白っぽい石で、屋外の浴槽は黒っぽい石でできていた。
夜空を見上げると、今まで見たことのなかった星たちがたくさん輝いていた。ここの人たちはとても優しくて、彼らが魔族であることを忘れかけていた。が、知らない星たちが多く見えることで人間の国ではなく、魔族の国にいることを実感させられた。
そんな感傷に浸っていたら、案の定のぼせた。
風呂を出て、ゆったりとしたローブに着替え、部屋に戻って本を読む。部屋に置いてあった本は殆どが魔法の本だったので、夢中で読んだ。
『闇魔法の初歩』という本を半分ほど読み終えたあたりで眠くなってきたため、光を発する魔道具を消して、眠りについた。
課題は早めから始めておくべき……かな?
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