魔力制御の訓練
今更かもしれないですけど、リヒトと魔王様の名前はどちらも『光』を表してます。(間違ってたら、すいません)
魔王様に連れられて、城の外に出る。大きな闘技場のように見える、天井のない建物に連れてこられた。
「ここが訓練場だ。私専用になっていたが、これからはリヒトも使うといい。ここでは軍隊の訓練は行われないから、好きな時に使ってくれればいい」
「はい!」
「では早速始めよう。まずは昼食まで、魔力制御の練習をするぞ」
喋りながら僕らは、闘技場の中央に移動する。
「まず、闇魔法でできることの説明からだが……闇っぽい感じのことは、大体できるとだけ言っておこう。ぶっちゃけ、細かく考えても分からない」
「はあ、闇っぽいことですか……」
「例えばそうだな……『紫色の魔力で作った杭を放つ』とかだな。他には『闇のエネルギーを持ったビームを発射する』『相手の動きを鈍らせる』『辺りを暗くする』などがあるか。まあとにかく、闇っぽいことはなんでもできる!」
「はい……」
初っ端から大雑把すぎる説明だ。今後が不安になってきた……。
「では、基本中の基本、魔力制御から始めよう。まず体の中を意識する。そうすると、体の中で暖かい何かが溜まっているような感覚がするはずだ」
「えーっと、体の中に意識を向けて……」
なかなか難しい。掴めそうな気はするのだけれど、ギリギリで逃げて行く、そんな感じだ。
「もっとこう、腹のほうを意識すると分かりやすいかも」
「はい」
腹のほうに意識を向けて……おっ!?
「掴めたようだな。それが魔力だ。腹の中に魔力が溜まっている、そんな感じがするか?」
「はい! 何かよくわかんないですけど、とにかく溜まっています」
「素晴らしい! 短時間で良くできたな。では次のステップだ。この魔力を、途切れさせることなくかき混ぜ、柔らかくする。今は溜まっている個体を、溶かすようにして」
うーん、なかなかうまくできない。隣を見ると、魔王様が小さなビンを持っていた。中に詰まっているのは……
「水飴?」
「そうだ。次のステップにおいて、おそらくこれが分かりやすいと思う。ほれ、集中集中。今ばかりはどうしようも無い」
「はい!」
悪戦苦闘すること三十分程。
「師匠、とけたような感じがします!」
「おお、素晴らしい! では最後のステップだ。この魔力をかき混ぜ、その流れに合わせて魔力を取り出すのだ」
「魔力を取り出す……」
「これに明確な魔法のイメージを加えれば、魔法が完成するが……今はまだ魔力を取り出すだけにしよう」
「はい」
「そこでこの水飴だ。このように柔らかい水飴を、かき混ぜて……」
魔王様はどこからか出した木の棒で、瓶の中の水飴を混ぜる。
水飴に少しずつ流れができてきた。
「そして、これを流れに沿って取り出す!」
クルクルとかき混ぜていた木の棒を引き出すと、それにくっつくようにして水飴が外に出た。
「この水飴を魔力と捉えて、練習するといい」
「はい!」
また悪戦苦闘すること二時間。魔力を少し取り出すことには成功したのだが……体の中の魔力と切り離せない。魔王様曰く、『ちゃんと切り離さなければ、一発の魔法で全魔力を吸い取られてしまうことになるぞ』とのことだ。
「うーん、切り離せないな……」
「こういうイメージを取るといい」
そう言いながら魔王様は、再び水飴を掬い出す。と同時に、垂れている水飴を素早く別の棒で断ち切った。
「わかりました、やってみます」
「その前に、昼食を取ろう。私がじいにドヤされてしまう」
そう言って魔王様は訓練場の出口へスタスタと向かう。僕も慌ててついて行く。
朝食を頂いた部屋に着くと、老執事が額とこめかみに青筋を浮かべていた。
「魔王様、後で覚悟しておきなさい……」
「まあ落ち着けじい、そんなにカッカとするな……」
老執事と目を合わせないようにしながら魔王様は食卓の席についた。向かいの席を進められたので、僕と魔王様は向かい合った状態になる。
「魔力を扱うときは、特に初心者の場合かなり気力と体力、集中力を使う。しっかりと食べろ」
とのことなので、たくさん食べる。普段よりもかなり空腹になっていた。
一通り食べ終わったあと、再び訓練場に戻って魔力制御の練習をする。三十分程試してみて、すぐに魔力放出のコツが掴めた。それから夕飯までは、ひたすら『より滑らかに、スムーズに魔力を取り出す』ことに専念し続けた。
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