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2 俺の家族を紹介します


幼女になる前の記憶がイマイチはっきりしない事で、自分が死んだのかなんなのかすら分からん俺こと、ルカルイーゼは今日も今日とて朝から貴族のお嬢様をしている。


よく分からん状況下でこれまたよく分からん世界の知識を頭に詰め込み、礼儀作法やらなんやらの上流階級の教育を施され。そして同時進行で魔術の訓練とか言う特別教育も行っていた。

読み書き淑女マナーの英才教育から始まり、擦り込むようにコノクニノレキシとやらも同時進行で頭に叩き込まれたその時点で肉体年齢は3歳。中身は考えない。


この世界の創生の歴史を語る上で欠かせないのが魔族・精霊・人間の三種族、そして今俺がいる魔術大国ウィンドーム。なんか俺が誕生した時に世界規模の激震が走るほどの強大な力がこの国を覆ってどうとか言ってたが、俺はそれどころじゃない。魔族とか精霊とか魔術とかその辺を主に問い質したい。こちとら筋金入りの現実主義者の日本人でいい歳した社会人だ。オマケに言えば社畜のリーマンだ。ファンタジーやフィクションは別次元で夢見て、休日はプラモ作りに勤しんだ由緒正しきオタクだ。


そんな3歳児(?)にあなたにはスゴイ魔力ありますとか、将来トンデモナイ魔術使えるようになるでしょうとか言われても、何を言っているんだコイツ頭大丈夫かと家庭教師の頭を心配した。多分これは日本人なら当然の流れであると俺は思う。


しかし中身がおっさんの幼女に頭の心配されてる家庭教師に言われるがまま、なんとな〜くマホーの呪文を唱えて見たところ出来ちゃったから白目剥いた。

嘘だろって思うじゃん。出たわ。

この時行使した魔術は水属性に分類され、一般的には基本魔術と呼ばれている低レベルのもので、手を器型に組んでそこに水を湧き出させると言う初歩の魔術だったんだが。


「ひぇ…!?」

「こ、これは…!?お、お嬢様ぁ!!」


家庭教師の手本と合わせて白けた顔で無感動にやった俺の器型にした両手から尋常じゃない量の手汗が溢れ、噴水のごとく噴き出したソレに幼女な俺はビビり散らかし、滝のように降ってくる液体を頭から被って初めてソレが自分の手汗過剰分泌ではなく“水の魔術”と言うものであると認識した。

予想外の水量に大慌ての家庭教師を他所に手汗じゃなかったと安心はしたが、お約束のごとく翌日風邪をひいて複雑な気持ちになった。ちなみに寝苦しくて起きた時家族親類使用人から知らない人までがベットの周りを取り囲んでいて俺、死ぬのかなって思った。心配して駆けつける人数が尋常じゃねえ。


まず父・ザクストール、母・エーテライナ、長男・クライスト、次男・レドレイル、三男・フロイデンに加えて各自専属の従者と侍女を連れ、小さな体のルカルの大きなベッドを覆い隠すように覗き込む。その向こうでもザワザワしてる。これなんてホラー?

兄たちの従者や侍女に関してはこの時が初対面の為、ビビリのハートは限界点を越えそうだった。びっくりするほど優しくて親切だしで、どうにか慣れたけども。


そんなことがあって、以降は体裁だけでなく気持ちの面でも真面目に学ぼうと心がけ、改めて自分が異世界で幼女に生まれ変わってしまっている現状をどうにか受け入れた。訳が分からなすぎて一部考える事を放棄した。人はこれを現実逃避とも言うらしい。うるせえ。“無知”とは怖いもんだぜマジで。



そして2年後。5歳の頃に家庭教師が「私がお嬢様にこれ以上お教えできる事はございません。貴女様の教師として今日まで指導させていただけた事、生涯の誉でございます」と泣きながら去って行って以来、魔術も勉学も、教育と名のつくものは終了したらしく呆気にとられた。


受験とか入社した頃のパワハラ新人教育とかに比べて内容と対応がイージー過ぎて不安になるレベル。そんなこんなでこれからどうしようかなって考えていた俺に、王国軍魔導師団総帥である叔父に会いに行かないかと声をかけてくれたのは母上だった。叔父は母の弟で、誕生日にはよく顔を合わせていたがまさかそんなお偉いさんだとは思わなかった。

俺からすれば会う度にあんな恵まれた容姿を(ヒトに言えた事ではないが)デロデロにしてロリコン拗らせた残念なイケメンという印象が強かったんだ、すまん叔父上。


特に断る理由もないのでウンと頷いたところ、翌日には王城入りすることになっていて驚いた。習った事と俺自身の経験から、こういうのはもっと日数がかかるものだと思っていたのだがまさかの翌日。入城フリーパスってか。王城はテーマパークじゃないと思いたい。常識が迷子です!


「ルカル!ルカルイーゼ!ああ、しばらく見ないうちにまた綺麗になって…!」

「ごきげんよう、おじさま」

「なんてことだ…私の姪は精霊も嫉妬するほど完璧な美しさと可憐さを身につけている!!ここに来るまで嫌な事はなかったかい?変な輩に声をかけられたりはしなかったかい!?」

「嫌だわアルベルト。私がずっと手を繋いでここまで来たのにそんな妙な事ある訳ないじゃない」

「それもそうですね姉上。姉上が一緒ならば魔族すら近づかないでしょう」

「その魔族に人類に擬態した未確認生命体だなんて思われてる貴方には及ばないわよ」

「ハハハハハ!」

「フフフフフ!」


何やらハイレベルな舌戦が始まったが俺は相変わらず叔父上の腕の中でゆ〜らゆ〜らあやされている。もうその動作される年齢すぎてますよ叔父上。そも聞く限り、この仲良し姉弟は“師弟”でもあるようで何かと魔術関係ではマウント合戦が尽きない。始まったら長いんだよなぁと、俺は思い切って叔父上の腕から脱出を図った。


「(ぬ〜〜〜〜〜ん)…っひゃ!」


魔術とはイメージ。それに理論やら魔術式やらが付随するのだが…ここはサブカル豊富の我が魂の祖国を参考にテレポート・瞬間移動のイメージで。着地点を目視・距離・速度を順にイメージすることで発動が可能。普通はこうはいかないらしいんだが(家庭教師談)俺はこのプロセスである程度のことが出来てしまうのだ。

それがどうやら特殊すぎると言うことで叔父に会いに来たわけだが…


「あの時エンシェントドラゴンに襲われて泣きべそかいてた坊やが〜」

「アンデッドスライム程度の溶解液程度で癇癪を起こした姉上に言われたくは〜」


俺の脱出にも気付かず身内話が絶賛大盛り上がりである。

不穏な空気に気づいたのか、はたまた別の理由か。部屋の扉が少しだけ開き、そこから見知った顔がのぞいて俺に手招きをした。盛り上がっている母上達の方をニコニコ笑顔で伺いつつ俺を誘導するその紫の髪の青年は、三つ上の三男のフロイデンだ。確か今日は王城で見識を深める為に長兄に着いて赴いていたと記憶している。


「にーさま!」

「しー…静かにね、可愛いルカル。…あの様子じゃあ当分目的は果たせないだろうし僕と一緒に王城探検しよう?」

「…いーの?かーさまとおじさまに、」

「いーの。大丈夫だよ、クライスト兄上には伝えてあるからね」

「イストにーさまもいっしょ?」

「後で来るって言ってたけど、多分もうすぐさ。その隙に僕らは探検だよ」

「たんけん!ルカルもいくよ!」


我が一族の家族仲は、この国の貴族にしては気味が悪いほど良好らしい(家庭教師談)。



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