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仏説仏名經卷第二十五 大乗蓮華寶達問答報応沙門経

「寶達様、ここは火米地獄と申します。」

 鬼王の言葉に寶達は地獄を見下ろす。眼下の地獄には、炎の川が縦横に流れていた。

 燃え盛る炎の川のほとりに大勢の沙門達が集まり、流れの中に自らの手を伸べている。炎に炙られた手はたちまち焼け爛れ、あちこちで叫び声が上がった。寶達は思わず目を覆う。

しかし、沙門達は一度は炎の川から離れるものの、再び川のほとりへと戻ってくる。幾度も幾度も炎に炙られ、焼け爛れる手の痛みに泣き叫ぶ様子は、あまりに無残だった。

「なぜ――彼らは、何をしているのです?」

 馬頭羅刹が答える。

「その名の通り、この地獄に堕ちた沙門どもは、炎の中の米を取ろうとして手を伸ばしているのです。無論、炎に妨げられ、米を手にすることはできません。もしわずかに手に入れたとしても、口にすれば米は炎に変じてしまいます。そのために、彼らは御覧のように痩せ細り、空腹に耐えかねて炎の川に手を差し入れているのでございます。」

 見れば、沙門達は皆みる影もなく痩せ衰えている。その哀れな様を悲しみ、寶達は再び馬頭羅刹に問う。

「彼らは一体何の罪で、このような罰を受けなければならないのでしょう。」

 馬頭羅刹は答える。

「寶達様。この沙門どもは不浄の手で僧の浄食に触れた者どもでございます。そのためにこの地獄に堕ち、空腹に苛まれ、不浄の手を炎に焼かれて苦しんでおります。」

 それを聞いて、寶達はやせ衰えた沙門達に深い悲しみの目を向けた。やがて、その悲しい繰り返しから目を離すと、寶達は深い憂いを残しその地を去った。


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